変と不変の取説 第55回「なぜ日本人は効率を求めなくなったのか」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第55回「なぜ日本人は効率を求めなくなったのか」

前回、第54回は「恥をなくした恥の国」

安田

日本は祝日がすごく多い国だと言われてますよね。

泉

多いですね。

安田

でも欧米のほうが休んでる日数は多いそうです。

泉

日本人は祝日にしないと休まないので。

安田

そうみたいですね。休みを決めてあげないと休めない。

泉

はい。だからどんどん増やしてるんでしょうね。

安田

無理やりつくってますよね。体育の日とか。

泉

昔は体育の日が運動会でしたけど。今はそういうわけでもないし。

安田

ですよね。日本の祝日ってまだまだ増えると思いますか?

泉

祝日があったほうが休みやすいので。そういうニーズはあるんでしょう。

安田

祝日にしないと休まないですもんね。

泉

「休ませてください」って言えないんですよ。

安田

じゃあ「有給があっても取れない人」のために、祝日を増やしてるってことですか?

泉

そういう国民の声があるのは確かです。

安田

祝日って昔からあるんですか?

泉

節分とか、正月とか、そういう季節の祝い事みたいな日は昔からあったみたいです。

安田

でも日本の祝日って特別感がないですよね。たとえばアメリカの独立記念日には「この日は特別」みたいな雰囲気があるじゃないですか。

泉

日本には「建国記念日」がありませんから。

安田

え、ありませんでしたっけ!?

泉

ないんですよ。「建国記念“の”日」があるだけ。

安田

そうなんですか?

泉

2月11日は建国を記念する日。建国した日ではないんですよ。

安田

それはどうして?

泉

「建国記念日」と言ってはいけないらしいです。

安田

明確な記録がないからですか?

泉

初代の「神武天皇がつくりました」って、ちゃんと日本書紀にはあるんですけど。それを元に2月11日を設定してるので。

安田

じゃあなぜ?

泉

アメリカの占領下で「建国記念日」って言わせなかった。

安田

それは歴史を否定させるためですか?

泉

そう思いますね。

安田

ちょっと話がズレちゃいましたけど、国の政策としては祝日をどんどん増やしていくと。

泉

国としては休みを増やしたいというより、生産性を上げたいんですよ。

安田

まあそうですよね。ちなみに休みが増えると消費も増えるんでしょうか?

泉

まず給料が下がるじゃないですか。

安田

下がりますか?やっぱり。

泉

はい。生産しないので。

安田

でもそこは「生産性を上げて」っていう方針ですよね。

泉

上がらないですよ。

安田

今のとこ上がってないですね。

泉

はい(笑)

安田

やっぱ日本人って、生産性上げるより我慢するほうにいっちゃうんですかね。

泉

一生懸命努力するのが美徳みたいなのがあるので。生産性上げて休んでる人は「サボってる」とか「遊んでる」というふうに思われてしまう。

安田

なるほど。生産性を上げにくい文化だと。

泉

昔の職人とかは違いますけどね。めちゃくちゃ効率よく仕事してたので。

安田

武士は効率よくない感じもしますけど。

泉

武士はお役所勤めなので「遊んでたら怒られる」みたいな。

安田

その文化を引き継いでるってことですか?

泉

武士って7パーセントぐらいしかいなかったわけですよ。

安田

え!そんなに少なかったんですか?

泉

はい。でも今は公務員とかサラリーマンがほとんどじゃないですか。

安田

確かに。

泉

職人とか農民の人たちって「生産性を上げるにはどうしたらいいか」って普段から考えてたはずなんですよ。

安田

そりゃあ考えますよね。「もっと楽に、もっと早く」みたいな。

泉

そういう人たちの割合が減っちゃった。

安田

なるほど。たしかに会社員や公務員は「仕事遅くても給料一緒だし」って感じですもんね。「いかに無理せずに1日を過ごすか」みたいな。

泉

ヘタに生産性を上げると仕事を奪う可能性があるので。定型作業をやってる人は嫌がるんですよ。

安田

昔のお役所みたいですね。1人でできる仕事を3人でたらい回しにするみたいな。

泉

はい。

安田

そんなこと、いまだにやってる現場あるんですか?

泉

大企業ではぜんぜんやってますよ(笑)

安田

そんなので世界の大企業と戦っていけるんですか。

泉

いや、無理ですね。

安田

ですよね。でも本人たちは気づいてないと。

泉

経営者は気づいてると思います。

安田

だからリストラしてるわけですか。

泉

そうです。

安田

でも日本にはすごい数のサラリーマンがいますよ。全部はリストラできません。

泉

だから大変なんですよ。

安田

ちなみに大企業の現場ってどんな仕事してるんですか?

泉

社内の資料づくりで一生懸命ですね。だから転職すると9割の人は給料が下がる。

安田

上がる人もいるんですか?

泉

もちろんグーンと上がる人もいます。でも1割いるかどうか。

安田

じゃあ9割はぶら下がっていきたい。

泉

はい。そういう人たちは自分の仕事をなくしたくないわけですよ。

安田

なるほど。だから効率化しないと。

泉

効率よくしていくと自分の仕事がなくなっちゃうので。

安田

でも要らない仕事を増やしたら生産性ってどんどん下がりますよ。そしたら1人あたりの取り分も減ってしまうじゃないですか。

泉

そこまで全体視野になれないですよ。得られた地位は守りたいし、ローンもあるし。

安田

自分の地位や仕事を守りたいのは、海外の人も同じじゃないんですか?

泉

日本の場合は法律の問題がありますから。解雇できないっていう。だから厳しさがない。

安田

1億総中流の時代は良かったんですけどね。

泉

それが長すぎたんですよ。もはや1億総下流社会ですから。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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