この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
稼いでいる高齢者は年金が減るっていう話。
はい。これまでも制度はありましたけど。
そうなんですか?
はい。これまでは収入の上限が47万円だったんです。
47万円以上月収がある人は年金が減額されてたと。
はい。その基準が今回51万円に上がるという話ですね。
そもそも、なぜ引き上げるという話になったんですか?
年金カットになるんだったら「47万円以上は働かない」って、高齢者の労働意欲をそぐことになるから。
だから引き上げようと。もっと働いてもらうために。
建前上はそうですね。
じゃあ本音は選挙対策でしょうか?
はい。高齢者の票は大きいですから。
ネット世論は大反対でしたね。
若い人には今でも高齢者を優遇しすぎに見えるので。
そうみたいです。「払ったものを増やせとは言わないけど、払った分ぐらいは戻してくれ」って。なんでマイナスになるの?って。
自分で貯金してるほうがいいじゃんみたいな。
まさにそんな感じです。51万どころか47万でも払いすぎだって。年寄りはそんなに金いらないだろうって。
ちょっと分かりづらいんですけど。在職老齢年金って、年金と今の給与と賞与の平均額を合わせて、47万円を超えると減額が始まってくんです。
年金と収入を合わせて47万なんですか?
そうです。合わせて47万円。
なるほど。じゃあ47万の月給があるわけじゃないと。
そうです。年収360万円なら1カ月30万で、年金を10万もらってたら40万だから減額はされない。
合計だったらあっという間に超えてしまいそうですけど。
でもそれって65歳以降の話じゃないですか。65歳以降で47万円を超えてくる人って、まぁまぁな年収だと思うんですよ。
確かにそうですね。時給仕事してる人のイメージじゃないです。
65歳超えると大手でもめちゃくちゃ給与下げられますから。たぶん役員クラスしか対象にならないです。
あとは自営でやってる人とか。
そうですね。中小でいうと役員か社長。だからすごい大騒ぎになってるんですけど、そんなに対象者がいない気がします。
じゃあ47万円が51万円になっても、あまり結果は変わりませんか?
そう思います。だって4万円の差でしょ?稼いでる人ってもうそれを振り切ってるので。
じゃあ何のために4万円上げるんですか?
もともとこれって廃止する予定だったんですよ。
え?減額自体を廃止するってことですか?
はい。でも廃止したら「金持ちのお金をさらに増やす」って話になるじゃないですか。
年収2000万でも年金もらえるってことですもんね。
だから4万円という、すごく中途半端なところに落としたんだと思います。
4万円増やしても対象者があまり増えないから?
はい。
なぜ廃止にならなかったんですか?お年寄りは喜びそうですけど。
若い人から、ものすごい批判を浴びまして。
そりゃあそうですよね。
ふざけるなって話になって。
それで廃止するのをやめたと。
やめたんですけど、その代わりに4万円アップしたと。
選挙対策で?
はい。お年寄りに「頑張れば年金も、お給料ももらえますよ」「4万円引き上げましたよ」って言えるので。
ということは、若者の反発が強いので廃止にはできないけど、お年寄りの票を得るために4万円だけアップしたと。
そうです。ただ私の個人な意見としては、やっぱり若い人にお金残してあげるのが大事だと思います。
じゃあもっと上限を引き下げるべきだと?
はい。現役世代ぐらいお金もらってるんだったら、年金は一切払う必要ないと私は思います。
じゃあ久野さんが決めるとしたら上限はいくらにしますか?
35万円。
年金合わせて35万ですか?
いえ、35万円以上給料もらってたら年金払わないみたいな。
年金って大体いくらぐらいなんですか?
年収400万円で35年間ぐらい働きますと、年間147万円ぐらいですね。
じゃあ月10万ちょっと。
そうですね。12万円ぐらい。
月12万円だとしたら35万と合わせて47万じゃないですか。じゃあ前ぐらいの基準がちょうどよかったってことですか?
そうですね。
35万以下だったらさすがに払ってやれよと。
正直、国の予算を考えたらそれもしんどいですけど。
でも自分で払ったお金ですから。
全部が積立という訳じゃないので。
みんな積立だと思ってますよ。
年金ってかなり複雑なんですよ。国民年金と厚生年金があるんですけど。
厚生年金は企業が払うやつですね。
企業は厚生年金しか払ってないんですけど、国民年金も納めたことになってるんです。
そうなんですか?
はい。で、65歳を超えると国民年金と厚生年金を両方もらえる。年金が止まるっていうのは厚生年金だけが止まるんです。
なるほど。国民年金は止まらないと。
はい。満額で78万円は止まらない。40年間ちゃんと年金納めてれば全てのお年寄りが5~6万はもらえます。
もうそれ以上はほしがるなと。
それなりの所得がある方は、若者に回してあげようよと。
いや、僕もそう思いますけどね。
若い子がお年寄りを支えてる図を見たことあります?
年寄り3人ぐらいを若者が1人を支えてる図ですよね。
あれを逆にしないといけないです。厚生年金を放棄して、年寄り3人で1人の若い人を支える構図に。
確かに。
それが本当の意味での未来投資ですよ。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。