第62回「いちばん怖いのは何?」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第62回「いちばん怖いのは何?」

安田

香港の人がコロナの影響で家から出れなくなって。国は1人14万円ずつ配ったそうです。

久野

そうみたいですね。

安田

これってベーシックインカムに近いものですか?

久野

日本でも昔やりましたよね、1回。

安田

やりましたっけ?

久野

民主党政権のときに、意味もなく配ったじゃないですか。

安田

ああ!商品券を配ったやつ?

久野

正確にはベーシックインカムではないですけど。

安田

今回も配るみたいですね。

久野

やらざるを得ないでしょう。

安田

このままいくと、経済への打撃が計り知れないものになりそうですし。

久野

SARSの時は8カ月かかりましたから。

安田

SARSって、こんなに影響ありましたっけ?

久野

SARSは日本に上陸してないので。中国の影響を受けただけ。

安田

今回は日本も感染地になっちゃいましたから。

久野

はい。ダブルパンチです。

安田

イベントや研修は中止になって。外食店もお客さんが激減して大変みたいです。

久野

名古屋もいつも混んでる道がガラガラです。

安田

新幹線も空いてましたか?

久野

ガラガラでした。新橋も人がいないですもんね。

安田

このままでは足元から崩れていくので、国として何とか止めないといけない。助成金だけじゃ無理ですよ。

久野

こういう時は年金がすごく安定してます。

安田

年金ですか?

久野

年金は必ず振り込まれるので。

安田

確かに。

久野

でも給与は、当たり前のように振り込まれる時代じゃなくなった。

安田

そうですね。

久野

コロナが来て一気にそれが加速した感じ。給与受給者は家賃も払えなくなる。

安田

企業の借り入れはかなり緩和されたみたいですけど。

久野

借り入れ金は返さなきゃいけないから。でも休業手当は払わなきゃいけないし、売上は増えないし。

安田

あんまり企業に対して「払え、払え」って言ったら、倒産する可能性もありますよ。

久野

リーマンの時は「仕事のシェア」というイメージがあったじゃないですか。

安田

ありましたね。「みんなでちょっとずつ休んで仕事をシェアしよう」みたいな。

久野

なんとか給与シェアしようって。日本もあの頃はまだそういう文化だったんです。

安田

今は違う?

久野

やっぱり個人主義に向かってるので。

安田

確かにそうですよね。トイレットパーパーも取合いになったし。

久野

日本は暴動が起きない国なんですけど。さすがに今回は起こるかもしれない。

安田

え!誰が起こすんですか?

久野

会社に雇われてる人たち。

安田

そんなことしますか?

久野

給料が出てればしないです。

安田

まあ払えない会社も出てきますよね。今回は。倒産したら当然払えなくなるし。

久野

倒産しなくても現実的にお金がないと払えない。

安田

ですよね。じゃあ国がベーシックインカムを配るか、銀行がどんどん貸付するか。

久野

リスケしてる会社には貸せないでしょうし。借りても返せないので会社も借りない。

安田

じゃあどうなるんですか?

久野

だから個人に配るしかない。

安田

リーマンの金融緩和も一時しのぎでしたからね。結局は返せなくなってるし。

久野

そういう教訓も踏まえてクーポンみたいなのを配ると思います。

安田

それで消費に火がつきますか?

久野

どうでしょう。一気に人余りのフェーズになっちゃったので。

安田

ついこの間まで「人がいなくて困る」って言ってたのに。それが今は「人を採ってる場合じゃない」って。

久野

長期的に見たら、こういう時に逆張りできる会社がめちゃめちゃ伸びるんですけど。

安田

リーマンの時もそうでしたね。あの時に雇用守ったり、給料を払い続けた会社が、その後一気に伸びていった。

久野

ピンチになると社長のスタンスが見えます。

安田

確かに。こういう時って経営者の性格が出ますよね。

久野

出ますね。

安田

でもやっぱり中国は早いですよ。香港なんてついこの前までデモやってたのに。

久野

だから中国人って、いろいろ不満も多いんだけど我慢してる。

安田

国を信じてるってことですか?

久野

国というよりも未来ですね。「今日よりも明日のほうが絶対に良くなる」って信じてる。

安田

実際に経済は良くなってますからね。

久野

はい。中国政府は民意にすごく気使ってますよ。

安田

でしょうね。国民が暴動起こしたら終わりだし。

久野

はい。だから公共料金とか生活するためのお金は絶対に提供する。その代わり、多少の不合理は許容してくれっていう。

安田

一見、国民を締め付けてるようで、じつは中国のほうが国民にすごく気を使ってる。日本はその逆。

久野

だと思います。

安田

社会保険料を上げられても、消費税を上げられても、日本人は我慢しちゃいますもんね。

久野

普通だったら暴動が起きますよ。フランスや中国だったら絶対デモになる。でも日本では許される。

安田

これだけ経済も良くならず、あれだけ首相がムチャクチャやっても、結局また選挙をやれば自民党が勝つし。すごい国民性ですよね。

久野

いつの間にか社会保険を勝手に上げて、年金は勝手に減らして、企業の定年は延長して。

安田

日本国民って政治家にかなりナメられてるんでしょうね。

久野

怖くて「はい」とは言えないですけど(笑)

安田

言わなくったって、みんなもう気づいてますよ。

久野

ですね。

安田

でも気がついていても、また自民党に投票する。

久野

選択肢がないから。

安田

完全に行き詰まってるのに、他に選択肢がないって恐ろしいことですね。

久野

恐ろしいって感情すら、先送りにしてます。

安田

それがいちばん恐ろしい。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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