// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第60回》顧客を絞り込むのは怖い
商売をする上で大事なのは「顧客を絞り込むこと」である。
私はこの言葉を開業する前から知っていました。
ただ、いざ自分で開業する時が来てみると、この「顧客を絞り込むこと」が私には出来ませんでした。なぜなら、知識としては分かっていても、実際にやってしまったら自らお店に来てくれるお客さんを減らすことになってしまいそうで怖かったから。
「顧客を絞り込むこと」
分かってはいるけど、お客さんが減りそうで怖い。
店舗オーナーの中には、開業時の私と同じ心境の方は少なくないような気がするのです。
《試行錯誤の結果》
お客さんを絞り込むなんて、怖くてできない。
こう考えた結果、開業時に私がやったこと。
それが出来るだけ多くの商品を取り揃えること。
絞り込むことで集客することは怖くてできないから、逆にどのジャンルのお酒もまんべんなく、小さな店内に所狭しと並べられるだけ並べて、より多くのお客さんに来てもらおうと期待したのです。
その結果は、これを読んでいただいている皆さんの予想通り。
結果、私が開業前に考えていた計画の半分程度しか集客できなかったのです。
集客には様々な要因が絡んでいるため、一概に商品構成だけが悪かったと言うことは出来ません。ただ、当時できる限りの商品を用意したにも関わらず、集客ができないという事実を目の当たりにして、強い失望を感じたのをよく覚えています。
それから試行錯誤を続けて18年経ってみて思うこと。
それは、やはりお客さんは絞り込まないと来てくれない、ということ。
そして、多くの人に来てもらおうと考えるお店ほど集客できない、ということです。
《行くべき理由のないお店》
開業時、私は「絞り込みをしたらお客さんが減りそうで怖い」という理由で商品を増やしました。
ただ、当時は気づきませんでしたが、今から振り返って考えてみれば、「色んな商品を売ってます」とは、お客さん側の視点から考えてみれば「何のこだわりもないお店です」と言っているに等しく、何のこだわりもないお店には行くべき理由もないのです。
事実、いまの私のお店は開業当時の商品構成に比べ、強い部分と捨てる部分が明確になっています。そして捨てる部分があるからこそ、強い部分に力を注げるのであり、その強い部分こそがお客さんにとっての行くべき理由になっていると感じるのです。
つまり、自分が何屋なのかを絞り込むからこそ、お店に行くべき理由ができるのであり、絞り込みとはお客さんを減らすことではなく、お客さんを増やすことになる訳です。
開業時の私同様、「顧客を絞り込むのは怖い」と感じる方は多いでしょう。
でも自分がお客さんだったら、強みの明確なお店と何のこだわりも感じられないお店だったら、どっちに行きたくなるのか?
その答えは明らかではないでしょうか。
私たちがお客さんを絞り込むのは怖いと考えるほどお店はこだわりを失っていき、逆にお客さんからしてみれば、そんなこだわりのないお店に行くことこそ怖いんじゃないか、と今では思うのです。
2006年にオープンしたカウンター席を楽しみたいお客さんに絞り込んだレイアウトのお店。
絞り込むからこそ、お店に行くべき理由ができるのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/