第165回 ビールかけ旅行から学んだこと

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私は過去に2回ほど、全社員でビールかけ旅行に行ったことがあります。
ビールかけ旅行をした理由は3つ。

1つ目は、創業前からの夢だったから。
2つ目は、前年度の予算達成を全社員で祝いたかったから。
3つ目は、社員との一体感を強めれば、もっと売れると思ったから。

2007年と2008年に実施したこのビールかけ旅行自体は参加した社員たちも楽しんでいるように見えましたし、創業前からの夢を一つ達成できたこともあって私自身も楽しむことができました。

でも、この旅行を最後に、私はこうした社内行事を減らしていくことに決めました。


嬉しいことがあった時に、みんなでお祝いをする。
私はこの行為自体を否定するつもりはありませんし、もっと言うなら個人的にはこうしたお祝い事が好きな方です。

それでも社内の集まりをできる限り減らしたのは、冒頭の3つ目に挙げた「一体感を強めれば売れる」という考え方自体に疑問を感じるようになったからです。

今から振り返って正直に書くならば、当時の私は「これだけお金と時間をかけているのだから、一体感も強まって売上も上げてくれるだろう」と勝手な期待をしていました。
つまり、私は「お金で一体感を買えば売上が伸ばせる」と考えていた訳です。

でも、結果的にはそうはならず、多くのお金と時間を使ってビールかけ旅行をしたところで、売上が伸びるなんてことはありませんでした。

「もっと会社やお店に一体感があれば、売れるはず」
「どうすればもっと一体感のある会社にできるのだろう」

こう考えてしまうのは、私だけではないような気がします。
でも、今から思えば一体感なんていう曖昧なものに依存しようとしていたからこそ売上が伸び悩んでいたのであり、私が考えるべきだったのは「一体感の上げ方」ではなく、「売れる仕組み」だったということ。

旅行をするだけのお金と時間があるならば、その資源を職場の環境改善に使った方が、社員からすればはるかに嬉しいことだったでしょうし、事実、社内行事を減らして売れる仕組み作りと環境改善に投資をしたことで、売上は再び伸びていくようになりました。

自分の商売に足りないのは、本当に一体感なのか。
売れる仕組みの不足を、一体感の不足にすり替えていないか。

こんな気づきを得られた経験こそが、ビールかけ旅行に行った一番の収穫だったのかも知れないと、今では思うのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから