その214 コーヒーとタバコ

コーヒー豆の値段がすごいことになっています。

コロナ後を底値として、そこから現在までに原価が数倍に高騰しています。
予想ではもう、以前のような水準に戻ることはないそうです。値上げは食品の中でも群を抜き、小売価格にも反映されています。スーパーの標準品一袋の値段はかつての1.5倍、中身は半分です。ただ、寡聞にして「じゃあもうコーヒーは飲まない」という声はほとんど聞きません。

昭和の昔であれば、レギュラーのコーヒーは喫茶店以外で飲む機会などまずなかったと思います。
みんな、いつからこんなにコーヒーが好きになったんでしょう。

数十年前、私は屋外で現場作業に従事していました。
ある日、私は下っ端として関わった作業全体の進みの悪さについてひどくイライラしていました。撤収に入ったときも、誰にぶつけられるでもない怒りが収まらず、ひと息入れようとするグループの人たちに混じらず、一人で荒っぽく片づけをしていました。
それを見ていたグループ長の人が、私に声をかけてくれました。

「ちょっとタバコでも吸えよ。一服しようや」

しかし、私はもうその日十分すぎる量のニコチンを摂取していました。もういらねえわ、と内心毒づいたりしていました。
たしかに、当時の自分たちが仕事中のちょっとした愉しみとして頼れるのはタバコだけでした。愉しみもタバコ、休憩もタバコ。むしゃくしゃした気持ちをまぎらわせるときも、タバコに火をつける以外のことはできなかったのです。

それからずいぶん経ちました。

タバコは社会から半ば隔離され、現場仕事をくわえタバコで行うなど考えられなくなりました。職場に5分休憩制があるオフィスワーカーがそそくさと喫煙室に向かう姿は、「たいへんだねえ…」と皮肉っぽい目で見られます。

私も15年以上前にタバコから離れました。

そして今日も、自宅からボトルに詰めて持ってきた、数杯分のコーヒーを静かな愉しみに平日を生きるのです。

 

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

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