第111回 誰が決めた?この政策

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第111回「誰が決めた?この政策」


安田

以前、グローバルダイニングの社長が宣言しましたね。うちはもう自粛なんかしないって。

久野

サイゼリアの社長もおっしゃってました。気持ちは分かりますよ。

安田

「上場企業の社長が言った」という事実は大きいですね。

久野

ネットでは前から言われてたことなので。

安田

「コロナで亡くなる人なんて大した人数じゃない」的な書き込みとか。多いですよね。

久野

政策に筋が通ってないから。

安田

言う通りやってたら「どうにもならない」という判断でしょうね。政府を見限りだした感じ。

久野

社員をたくさん抱えてる企業は、夜8時、9時に閉めちゃうと絶対成り立たないから。

安田

絶対無理ですよね。だから罰則をつけるって話になるんでしょうね。

久野

そうなりつつあります。実際、改正特別措置法で罰則がつきましたね。

安田

最悪30万円罰金、だけど補償が手厚くなるわけじゃない。

久野

すごい違和感をみんな感じてる。満員電車はいいのかとか。飲食だけにやたら厳しい。満員電車の方がよほど危険を感じますけど。

安田

時間を短くするから余計に密になっちゃうと思うんですけど。人数制限したほうがいいってみんな言ってますよ。

久野

やってることがズレてますよね。

安田

うちの居住区でも大きな公園を閉じちゃって。近所の小さな公園がかえって密になってます。

久野

そうなんですよ。

安田

こういう政策って誰が決めてるんですかね。

久野

それが分からないのがいちばんの問題です。あとは両方取ろうとしてること。感染は止めたい。でも経済は止めちゃいけない。だから重要な部分は何も決められない。

安田

誰も責任を取りたくないっていう。

久野

飲食に関してはたぶん政治団体が弱いんだと思う。

安田

政治団体ですか。

久野

業界全体はすごく大きいんですけど。

安田

まとまりがないってことですね。

久野

そうなんです。まとまった票にならないから政治力を欠いてて。

安田

そのわりに飲食店のサポートで1日6万とか。どう考えても休んだ方が儲かるだろうって店も出てきてます。

久野

日商6万って大変ですからね。小さなところは。

安田

でも結局、グローバルダイニングは午後8時までの営業にしましたね。せざるを得なかったんでしょうけど。

久野

評判と社会的責任を考えると大きな企業が自由にやるのは難しいんでしょうね。

安田

飲食に限らず、そこに商品を卸してる会社はどうなんだとか。いろいろ言われてますよね。政府の方針はどっちに向かっていくんでしょう。

久野

今の政治家は強いメッセージを発しないし、やってる感を出してるだけなので。成り行きになっていくと思う。

安田

成り行きですか?恐ろしいですね。

久野

期限も決めず、ただ自粛しろって言われたら、普通に考えたら死ぬ。

安田

ですよね。

久野

そうすると人間って生存本能が生まれるので。もっと追い込まれたらみんなやるんじゃないですか。

安田

国としては弱者救済が基本なんですよね。

久野

その通りです。

安田

民意もなぜか大企業や水商売の人には厳しい。水商売なんだから、いい時は儲けてるんだから、しんどいのが当たり前なんだって。

久野

ですね。

安田

自分のことは棚に上げて。ビジネスなんて多かれ少なかれ水商売みたいなものなのに。

久野

どんなビジネスにもリスクはありますからね。

安田

そうなんですよ。お店がなくなっても「ホステス以外は困らない」とか。そんなこと言い出したらどの会社もそうですよ。

久野

そこの社員以外困らないですよね。取引先とか言い出したら水商売も同じだし。

安田

不公平極まりない気がしますけど。

久野

でもそれが民意というかマジョリティーの意見なので。

安田

的外れな民意に従ってたら、それこそみんな共倒れになります。

久野

生き残るのは「たまたま運が良かった」という業種ですね。僕らもそうですけど。

安田

運不運の世界ですよ。別に水商売が悪いわけじゃない。

久野

でも水商売に対してはめちゃくちゃシビアですから。

安田

もちろん、そういう意見があること自体はしょうがない。「いいバッグ持ってやがる」とか「大企業でいい思いしてる」っていう妬みが入るから。

久野

妬みでしょうね。

安田

それは人間だからしょうがない。だけど妬みを元にした民意に国が動かされてどうするんだと思う。

久野

日本人って特にそういう傾向が強いんですよ。データより感情で判断してるだけ。

安田

そういうところがありますよね。

久野

エビデンスよりも感情に政策がすごく左右される。

安田

コロナが収束してもマスク生活は終わらないんでしょうね。感情的に。

久野

終わってほしいですけどね。マスクしてないだけで白い目で見られますから。

安田

周りの目が怖いからっていう理由でほとんどの人は付けてます。戦争中の密告制度みたいな感じ。マスクの悪口が言えない。

久野

残念ながらどの会社も同じような状況ですね。みんなが右に行ったときに、左に行く勇気が生まれない。

安田

それは周りの目を気にして?

久野

予定調和みたいな感じですね。みんなと同じにしてれば安心だろうという。

安田

国も、会社も、国民も、みんな同じですね。文句は言うけど、結局みんな無難な解決策を求めてて。

久野

だから無難な政治家を選ぶし、選ばれた政治家も無難なことしか言えないんですよ。

安田

選挙やったら結局は自民党が勝つし。

久野

変わらないのが一番という国民性なんでしょうね。

安田

1億総安定志向ですか。

久野

どこかで変わっていかないといけないんですけど。

安田

変わりますかね。

久野

今回のコロナはチャンスだと思います。これで変われなかったら次はないかもしれませんけど。

 

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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