この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
安心安全を手に入れて、癒されて眠りにつく
「安心安全がほしい。変化も嫌いです。
同じ時間に起きてご飯食べ仕事して帰って終わる、という生活が、大好きです」
と、Aさんはきっぱり言いました。
「でも、夫で医院長の仕事は、毎日変化します。今日はこれをやろう、次の日はあれのやり方変えよう、というのが、もう10年以上続いてきました。本当、落ち着かなくって‥‥」
院長夫人らしい繊細で優しい微笑みを浮かべる中で、多くのスタッフを抱えて院長との間を取り持つ姿が浮かび上がってきました。
たくさん人に囲まれていても、立場が違う時、人は孤独を感じます。落ち着かない原因には、
孤独感もあるかもしれません。
そう思って、さりげなく水をむけると、
「みんなと仲はいいのです。でも、立場が違うだけで、どこか一線ができてしまいます。『上に立つとはこんなに孤独感なのだ』と身に染みました」とため息をつきました。
誰でも時に、孤独になります。それは、立場や状況で否応なしにやってくるものです。でも、その辛さの中で孤独に向き合って行動し続ける人は、信頼されます。実際、Aさんが看護婦時代に看護婦長になったことや、今のスタッフから悩み事を相談されることから、
「皆様に信頼されて頼られていることが伝わってきます」と伝えると、「ありがとうございます」とAさんに笑顔があふれました。そして、「頑張るから、帰ってきたら安心する場所が欲しいとずっと思っていました。安心する場所が描かれた絵をお願いします」と依頼しました。
さらに聞くと、「癒しと安定を感じながら、眠りにつきたい」のがわかりました。
しかし、Aさんに具体的なイメージはありません。でも、好きな色はありました。そこで、色からオーダーの内容を段々と紐といて、癒しや安定のイメージを見つけ出すことにしました。
アトリエに帰って、Aさんの好きな色を使って、構想の絵を数枚描きました。自由にイメージすることが好きな個性に合わせて、想像して楽しめるような抽象画でした。
そうやって描いた構想を、画像で送付して、自由に自分なりに楽しんでくださいと伝えました。何に癒しや安定を感じるのかは、人によって違います。他人と比べて感じるものではなく、自分自身で感じるものです。自分で「これがいい!」と心の底から感情が動くものこそ、本当の癒しや安定につながるのです。
そして、しばらくたったころ、Aさんからメールがきました。
「送ってくれた画像を携帯で広げたら、お花みたい綺麗」
好きな色で描かれた抽象イメージから浮かび上がった花々。それは、Aさんが、自分だけの癒しと安定を見つけた瞬間でした。花々のイメージを受けて、心の花園のような深い世界が下絵になりました。
その世界観を、最初は色の重なりから描き出していきました。ゆったりとした眠りに誘う、深い画面を描き出すためです。途中経過を見て、「どうして絵の具がこう濁らないで重なってのっかるの?と。不思議!」とよく言われますが、日本画の画材や、水性の洋画材を組み合わせることで、油絵のように絵の具が上にのっていくので濁らないのです。
今までの構想から下絵までの何十枚ものプロセス。それを、一枚の中の絵の具の無数の重なりに凝縮していきました。<安定と癒し>を味わえるように、温かさや優しさ、柔らかさなどを感じられる空気感を大事に進めていきました。
その中でふと、ビジョンクリエイターのスイッチが入り、絵のストーリーが浮かんできました。
美大での講義で教わった、人が絵を無意識に左から右に見る視線の動きを利用するのです。
絵の左側は、帰宅した時、中央はその後寝室で過ごす時間、右は朝起きて出るまでという物語です。
この物語を、色彩心理に置きかえて、左は心の安静や落ち着きの効果的な紫がかったピンク、中央は愛や安心感の効果がある優しいピンク、右は元気や希望の効果があるオレンジがかったピンク、と、使い分けました。
そして、完成した絵の使い方を解説すると、
「癒しと安定に加えて、さらに、ストーリーと色の効果で、心の習慣づくりができるのですね!」Aさんは目を輝かせて、新しい習慣を身につけ始めました。
「左側で帰ってきたら一息ついています。そして、中央のお花はふわふわで上に乗ったりもぐったり想像して遊びます。朝は、右側を見て元気に羽ばたいていくのをイメージします」
そしてさらに、年月が流れた後に、メールが届きました。
「飾って、やる気満々(笑) 毎日、絵に癒されてきました。 そして、気がつかないうちに、いつの間にか、癒しを卒業していました。 でも、ばらはいつまでも理想の花。今は特別の温かな気持ちになります」
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。