選択的週休3日制?それを国が後押ししてると。
はい。そういう方向です。
みずほ銀行が、たしか週休3〜4日OKでしたよね。
そうです。本人が希望すれば休める。
みずほ銀行は「働いてる時間に応じて給料が減る」という制度で。国が推奨する「選択的週休3日制」も給料が減るんですか?
週5が週4になるので、普通に考えて労働契約上は5分の4になる。
ということは企業の負担が少なくなると。
その代わりに「雇い続けてください」ということですね。
なるほど。社員さんは「減った分は副業などやって稼いでね」っていう。
そういうメッセージですね。
ネットでは「週休3日では仕事が回らない」という意見が多かったです。
中小企業の経営者は概ねそういう意見だと思います。今でも人手が足りないので。
働く側も「給料が減るんだったら休みたくない」という意見が多かったです。
私の予想では「週休3日だけど給与は減らない」という会社が出てくる。
え!出てきますか。そんな会社。
過去に週休2日になったときも、経済成長しましたよね。
確かに。あの時は給料が減りませんでした。
そもそも給与を下げたら人がいなくなるじゃないですか。
だけど給料を下げないで「休みだけ増やす」なんて、可能ですか。
生産性が高い企業ならできる。「週休3日にします。給与は変わりません」って言った瞬間に、そこに人がぶわーっと集まってくる。
そりゃあ集まるでしょうけど。
そこまでやる会社が必ず出てくると思います。もともと競争力の高い会社もありますから。
週休3日でも利益が出る会社?
はい。そこにいい人材が集まって、さらに競争力が高くなる。
じゃあ生産性が低い会社は・・・
生産性の低い会社は振り落とされていく。
厳しいですね。週休2日でもしんどいのに。
「まだそんなことやってんの?」って言われる時代が必ず来ます。
「今どきまだ週休2日しかないよ」みたいな。
そうなると思います。
週休3日で回らない会社は淘汰されていくと。
はい。
給料が減らないんだったら、みんなそっちの方がいいですもんね。
国が「この方針でいく」と決めたら、やる企業は必ず出て来る。これは歴史が証明しています。
文句言ってる人は多いですけど。
文句を言っても必ずそうなります。最低賃金もそうですけど。
つまり「実質的な昇給」ってことですよね。
そうです。国は一人当たりの収入を増やしたい。
でも実際に支払う給料が増えるわけではない。
そこがポイントですね。
給料を増やすより「休みを増やすから、どこかで稼いでね」という方が楽だと。
大企業だったらすぐにでもできると思います。
大手はかなり無駄な仕事をやってそうですもんね。でも中小企業は難しいですよ。ものすごい労働集約型ですから。
労働集約型のビジネスは厳しいと思います。
ですよね。
だけど「労働時間を減らしていく」「休みを増やしていく」という流れは、もう決まっているので。
政治家の発言を見てるとそんな感じがしますね。「休日を生かして新たな能力を身に付ける」「それが持続的な経済成長をもたらす」って。
労働時間を減らし続けると、必然的に生産性の高い会社に人が集まるようになる。
それしか選択肢がないですもんね。
まず労働集約型のビジネスから人がいなくなっていきます。
人がいないと成り立たないですよ。
だから労働集約型の企業も報酬を上げざるを得なくなる。
できますかね。
それが国の意図するところなので。やるしかない。
いわゆるエッセンシャルワーカーの報酬を、上げていくってことですか。
そこはひとつの狙いだと思います。
そのための週休3日制だと。
今のままだと誰もやりたがらないですから。
無人化という方向もありますよ。
そんなに単純じゃないです。たとえば安田さんはどうですか?介護要員としてロボットがお風呂に入れに来るとか。
私は人間よりロボットの方がいいですけどね(笑)
機能がちょっと悪いやつですよ。
機能が悪いやつ?それは嫌です。
「もうちょっとちゃんとしろよ」みたいなロボットだと、嫌じゃないですか。
それはもちろん嫌ですけど。だけど「自分のことは自分でやりたい」ってみんな思ってるはず。ロボットのサポートで風呂に入れるのは理想だと思いますけど。
エッセンシャルワーカーの仕事って、そんなに単純じゃないんですよ。
確かにそうですね。人間にしかできない仕事もたくさんありますから。
すべてをロボットにするのは不可能ですね。
週休3日制になったら人は集まりますか。
人気職種にはならないかもしれませんが、単価が高い職場には人が集まります。
介護の給料を増やそうと思ったら、介護報酬も増やさないといけないですよ。国にそんな予算あるんですか。
ないですね。そこは増やせない。
給料だけ増やしたら会社がつぶれます。
だからお客さんからもらうしかない。
払ってくれない人は福祉のレベルを下げるんですか?
これまでのような条件では「福祉を受けられなくなる」ということです。
税金が上がるのか、福祉のレベルが下がるのか。どっちかだと。
両方って絶対無理ですから。
政党もそれで分ければいいのに。「うちの党は税金を高くするけど福祉レベルも上げる」「うちの党は税金を上げない代わりに福祉のレベルも下げる」って。
そしたら国民も選びやすいですね。でも絶対にそうならないですけど。
なりませんか。
どちらの票も取り込みたいので。マイナスなことは誰も言わないんですよ。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。