「近所にできた整体に患者を取られています」〜お医者さんは、なやんでる。 第53回 〜

第53回 「近所にできた整体に患者を取られています」

お医者さん
お医者さん
近所にできたあの整体、すごく流行ってるみたいだな。それに引き換えうちの整形クリニックはどんどん患者が減っている。
お医者さん
お医者さん
うちに長年通っていた患者が、あの整体に入っていくところを見たという話も聞く。まったく、最初からうちの患者を取るつもりであそこにオープンしたんじゃないだろうな。
お医者さん
お医者さん
ああ、腹が立ってきた。今に患者を取り戻してやるから見てろ。
随分ご立腹ですね、先生。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、腸が煮えくり返るようだ。私は開院以来、20年もかけて患者を増やしてきたんだ。それなのに、オープン間もない整体にそれを掠め取られたら、気分が悪いのは当然だ!……って、あなたは確かーー
ご無沙汰しております、ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、そうだったね。それにしても見てきたかい、あの整体。最近じゃ完全予約制で、しかも随分先まで埋まってしまってるらしい。まったく、あんなチャラチャラした整体のどこがいいんだ!
実際、どこがいいんだと思います?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……なに?
いや、なぜそんなに人気なのか、先生はどうお考えなのかと思って。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
それは……。ま、まあ、聞いた話だと、カウンセリングに随分と時間をかけるみたいだな。初診の場合は1時間以上話を聞くんだと言っていた。
へえ、それはすごいですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
いや、しかし、それは整体だからだよ。あなたも知っての通り我々整形クリニックと違って整体は薬を処方できないからね。施術のみで対応しなければならないから、長いカウンセリングが必要になっているというだけだろう。
先生のクリニックは、どれくらいカウンセリングをされるんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
私くらいになると少し話せば対処法がわかるからね。どういう薬が効くか、ぜんぶ頭に入ってるんだよ。だから1時間どころか10分もかからないだろうな。
なるほど。たしかにそれは、スピード感を重視する患者さんには合っているかもしれませんね。でも、自分とじっくり向き合ってほしい患者さんにとってはどうでしょう。まして、近所に「じっくり向き合ってくれる」と話題の整体ができたと知れば……
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
む……ま、まあ、ちょっと覗いてみようとは思うかもしれんな。だがね、何度も言うようだがあっちは薬を出すことはできない。こっちに戻ってこざるを得ない患者も少なくないはずだ。
仰るとおり、整形クリニックの方が優れている点もあるのでしょう。でも先生、別にそれは整体がダメってことじゃない。整体には整体のよさがあるのではないでしょうか。実際、こうして患者さんの移動が起きているわけですから。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……それはそうかもしれないが。しかし絹川さん、一体何が言いたいのかね?
そうですね、端的に言えば、「敵と見るより、仲間と見た方が得ですよ」ってことですかね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
は? 仲間だって? 何を言ってるんだ。業態は似ていても、私たちは明らかに競合なんだぞ。
普通ならそう感じるかもしれません。でも、細かく見ると100%同じビジネスをしているわけじゃない。先生もさっきカウンセリングにかける時間の違いを話してらっしゃいましたよね。それならば、互いに潰し合うのではなく、協力してよりよいサービスを作り上げていく方がいいと思うんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
協力して……よりよいサービスを? それは一体どういうことだ。
まずは先生の意識を変えることですよ。あの整体を、自分のところの患者を取っていく敵ではなく、地域の患者さんたちの満足度を上げていくための仲間だと考えることです。
絹川
絹川
そして一度、向こうの先生とじっくり話をしてみたらいかがでしょう。意気投合するところもあるはずです。その上で、例えば「こういう患者さんが来たら相手側に紹介する」というような協定を結ぶ。そうすれば、お互いの強みを活かし、あるいは弱みを補いながら、共にメリットを享受できると思うんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……なるほどな。そんなこと、考えてもみなかった。そうか、患者が減ってしまったのは、相手ではなく私の方に原因があったのかもしれないな。少し自分を見直してみるよ。
意識が変われば、現実も変わっていくものです。先生のクリニックとあの整体とのコラボビジネス、期待しています!
絹川
絹川

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医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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