お医者さんは、なやんでる。 第33回 「変化”しない”病院の方がビジネス的にはうまくいく?」

第33回 「変化”しない”病院の方がビジネス的にはうまくいく?」

お医者さん
お医者さん
ああ、やっと電カル業者との打ち合わせが終わった…。最近はシステムもどんどん進化しているし、ついていくのが大変だよ。
お医者さん
お医者さん
今日はまだキャッシュレス導入に関する打ち合わせもあるし、オンライン診療サービスの営業マンも来ることになっている…。あ、ホームページのチャットボットの件も進めないと…。
お医者さん
お医者さん
大変だが、まあ仕方がない。時代に乗り遅れたらビジネスは失敗してしまうからな。
「変化できるものだけが生き残る」。ダーウィンの進化論ですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうそう。新しいサービスや技術にもアンテナを張って、必要なものはどんどん取り入れていかないとね。…って、君はどなた? コンサルの人?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
先生の病院は確かに、新しいものも積極的に導入してますもんね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだね。聞こえていただろうが、今日も業者との打ち合わせが3件も4件も入ってるよ。
でも先生、ここのところ患者数や売上が落ち込んでいるのではないですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
う…それは……新型コロナの影響だよ!他の病院だって苦しんでいるに違いない。
いえ、そうとも言い切れませんよ。新型コロナ以降でも、患者が増えたり売上があがったりしている病院はたくさんあります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え……そうなの? し、しかし、私ほど時代についていくことに時間と金を割いている病院は多くないだろう。
それは確かにその通りです。むしろ、新技術や新サービスの導入に消極的な病院の方が多いでしょう。しかし私の見たところ、好調不調の分かれ目は、必ずしもそこにあるわけではないようです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え……じゃあ、何が分かれ目だというんだ?
シンプルに、患者のニーズに応えられているか、ということだと思いますよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
いやいや、それは話がおかしいじゃない。キャッシュレスだってリモート診療だって、患者が望んだものだよ。ニュースでも業界誌でもそういうデータが出てるんだ。
本当にそうでしょうか? 先生の病院に来られている患者さんは、本当にそれらを望んでいますか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え…
確かにキャッシュレスやリモート診察を望む患者さんはいらっしゃるでしょう。今後の流れとして、そういう患者さんの方が多くなっていくとも思います。しかし、先生の病院のメイン患者層は、ご近所に住む高齢者さんたちですよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ…そうだ。
スマホも持っていない、インターネットもほとんど使わない、というお爺ちゃんお婆ちゃんたちに、キャッシュレスは必要でしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そ、それは…。いや、しかし、リモート診療は歓迎されるだろう。家にいながら診察が受けれるんだから。
そうでしょうか。先生と直に会って診察してもらった方が安心する方もいらっしゃるように思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
う…まあ、そう言われるとそういう人もいるかもしれないな。でもそうやって考えると、ウチはむしろ「変化しないほうがよかった」ってことか?
いえいえ、そんなことはないと思いますよ。ただ、変化の方向性を、「自分の患者」からの視点で考える必要はあるでしょう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどな。確かに私は、ニュースや業界誌の情報にばかり目を向けていたのかもしれない。
どんな技術もサービスも、ご自身の患者さんたちによりよい医療を提供するためのものです。もしプラスがないのなら、無理に導入する必要はないんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
「変わらないこと」が価値になる場合もあるということか。
はい。お金と時間は有限なので、「価値のある投資」を見極める必要がありますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そう言われればその通りだな。…君、そのあたり詳しそうだからちょっと相談に乗ってくれないか。
はい、喜んで!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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