「影響力が大きな論文の数」という分野で。

中国のやつですね。

はい。ついに中国が1位になったそうです。

かつては日本もずっと上位にいたんですけど。

そうみたいですね。アメリカに次いで2位だったとか。

今は見る影もないです。

過去最低の10位にまで下がったそうです。で、首位は中国。

論文の数自体はかなり前から中国が首位だったんです。

はい。それがついに質の面でも首位になって。

やっぱり数が違いますから。

ですよね。アメリカと中国の覇権争いも、いずれ中国に敵わなくなる気がします。

そういう雰囲気になってきましたね。

いずれにしても日本は蚊帳の外で。もう日本の時代は終わりですか。

厳しいでしょうね。

久野さんはよく中国にいかれてましたけど、何が違うんですか？

やっぱり社会システムが違いすぎますよ。どの産業に、どれぐらい資本投下するかって、トップダウンで決めてくじゃないですか。

民意とか関係ないですもんね。

大学とか教育機関にもガンガンお金を突っ込んで。「論文で世界一になる」ってトップが決めたら必ず実行してしまう。

アメリカでも対抗できませんか。

アメリカはどちらかというと、世界から優秀な人材を連れてくるスタイル。たとえばコロナのワクチンもアメリカ人が開発したわけじゃないんです。

そうなんですか。

はい。原爆を開発したのもドイツ人です。実用化したのはアメリカですけど。

へえ〜。

だけどアインシュタインみたいに優秀な人が、どんどん集まってくる。そういうグローバルな国。

なるほど。

中国は超トップダウンで、13億人の中から優秀な人間を競争させまくって、どんどん上に上げていくというスタイル。しかも、お金も惜しまない。

それもすごいですよね。

はい。その両国に挟まれて日本はどうやって生き残っていくか。

オリンピックで高飛び込みを見たんですけど。

最年少のすごい日本人選手がいますよね。

はい。玉井陸斗（りくと）くん。15歳なのにすごいんですよ。日本人の中ではダントツ。

ですよね。

それでも中国のトップ選手と桁が違うぐらい点数が離れてて。合計得点で100点以上の差があるわけです。

もう水が一切はねないっていうか。神業レベルですよね。

まるで中国雑技団ですよ。物心ついたときから、国家規模で超運動神経のいい人材を鍛えまくってるイメージ。

中国は各分野に適した人材を国家レベルで育ててます。

しかも優秀なコーチを海外から引っ張ってきたり。シンクロのコーチも日本から連れていきましたし。

そうでしたね。

この先ビジネスでも日本企業が対抗できるとは思えません。あのアメリカでさえ勝てないのかって感じ。久野さんはどう思いますか？アメリカ対中国の未来は。

やっぱり中国のほうがロスは少ない。アメリカ人は自由を尊重してるのでズレが生じるじゃないですか。私はこういう考えだから嫌だとか。

民主主義国家ですからね。

中国ってそこすら許してないので。右と言った瞬間に13億人が右向くような組織をつくってきてる。そりゃ勝てないですよね、アメリカといえども。

やっぱそうですよね。でも一方で、中国の卓球は一時に比べると弱くなってませんか。人気のあるスポーツに運動神経のいい人材が流れていってるみたいですよ。

そういう傾向ですね。

国家レベルで「お前は卓球だ」みたいにやってそうですけど。選ぶ権利はあるんでしょうか？

恐らく、はじめは自由だと思うんです。ただ優秀な人材がいれば、そこにどんどんお金もベットしていくようなスタイル。卓球の英才教育とかすごいですもん。

なぜ卓球なんでしょうね。ゴルフとかテニスとかではなく。

単純に人気があるんでしょう。卓球というスポーツが。

へえ〜。

卓球ってヨーロッパでは超人気スポーツですから。

そうなんですか。

ベースボールみたいなもんですよ、ヨーロッパの。

ヨーロッパはテニスかと思ってました。

卓球もプロリーグがありまして。それなりに稼げるんです。日本も卓球人気が出てきたのでTリーグっていうプロリーグができてます。

ルールがシンプルなので見ていて分かりやすいですもんね。

中国だと、日本における相撲みたいな側面があるのかなと思います。国技なんですよ、卓球が。

卓球の話になっちゃいましたけど（笑）

論文の話でしたよね（笑）

この先、基礎研究みたいなところでも、きっと中国が世界をリードしていくんでしょうね。

そう思います。お金もあるし、人材もいるし、世界中から研究者も引っ張っていくでしょうし。

もう民主主義は負けたってことでしょうか。

中国自体がもう共産主義じゃないですから。社会民主主義みたいな感じで。

民主主義ではないですけど、資本主義ではありますよね。

そうですね。社会資本主義っていう感じのカテゴリーでしょうか。

共産党が一党支配している資本主義って感じですね。

会社も同じですけど、「みんなで決めよう」という組織は誰も責任を負わなくなる。

いずれアメリカは勝てなくなりますか？

個人に重きを置いてるアメリカと、国家の成長に重きを置いてる中国と。目的が全然違うので比べちゃいけないとは思うんですけど。勝てないよねって気がします。

経済に関しては市場原理主義でよかったんでしょうけど。国家に関していうと、やっぱりトップダウンの方が早くて強いんでしょうね。

そう思います。

アポロ以来45年も人間が月に行っていないのは、お金がかかり過ぎるからだそうです。国民の同意が得られない。

中国なら行けますね。天文学的な予算でもトップダウンで決めてしまうので。

次に月に行くのは絶対中国しかないだろうと思います。「経済は資本主義で、政治はトップダウン」っていうのが、主流になっていくかもしれません。

国家の成長をベースに考えたら、そうじゃないですか。

儲かったらよその国に行くとか、自由国家だと平気でやりますもん。

中国は絶対にそんなの許さないです。金も権力も「全部置いていけ」って話になる。

そりゃ勝てないですよね。