狙うべきマーケット

瓶の中に石を詰め込んで行く。
一杯になったら瓶を揺らし、
新たな隙間を作ってまた石を入れる。
それを繰り返していくうちに、
どこかで瓶は一杯になる。
もうそれ以上石は入らない。

これは今のマーケット状況に、
とても似た状態なのだと思う。
大きな石を新たに放り込むためには、
入っている石をどかすしかない。
大きなマーケットを手に入れるには、
その場所を前の所有者から奪い取る以外に
方法がないのである。

例えばアマゾンの売上げが伸びれば、
他の小売店の売上げは下がる。
ゾゾタウンのオリジナルデニムが爆発的に売れれば、
ユニクロや他のメーカーの売上げは下がる。
これは自動車業界でも、家電業界でも、
パソコン業界でも同じ。
瓶の中はもう既に大きな石で満たされているのだ。

企業は生き残っていかなくてはならない。
その場所を明け渡してしまったら
生きる糧を失ってしまう。
だから必死で場所取り合戦を続けていく。
もちろんそれは悪いことばかりではない。

企業同士が熾烈な競争をしてくれるおかげで、
消費者は安くて質の良い製品を手に入れることができる。
50インチのカラーテレビや
最新のパソコンやスマホが格安で手に入るのも、
この競争のおかげなのである。

だが私たちは全員、
消費者であると同時に販売者でもある。
販売者としての私たちは苦しくなるばかりだ。
ここらで一旦立ち止まり、
考え直すべきではないだろうか。
この競争を続けていくのかどうかを。
もしも競争に嫌気が差しているのなら、
今あるマーケットを離れることをお勧めしたい。

石で満たされた瓶の中には、無数の隙間が存在する。
小さな砂つぶならば、
石との競争を避けていくらでも入り込んでいける。
それが小さなブルー・オーシャン戦略なのである。
まだそこにない小さな市場。
それを作り上げるにはもちろん手間がかかる。
その上市場は大きくならない。

面倒で非効率的な仕事だ。
それゆえに力のある大きな企業は決して参入してこない。
個人であれば2000~3000万円くらいの
小さな市場でも十分食べていける。
中小企業ならば、
1~3億の小さな市場を複数立ち上げていけばいい。

売上も利益も頭打ちにはなる。
だが決して無くならない。
激しい価格競争にも晒されない。
大きな会社で働くことや、
大きな会社の下請けをすること。
それは一見安定した仕事に見える。
だがそれは過酷な競争の末端や最前線で
戦うことを意味するのである。

 


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