第101回 「電子カルテのcsv出力機能を活用する」
お医者さん
まったく、役所や学会に提出する資料づくりは毎度面倒だな。電子カルテのデータから必要な部分を検索して、件数を数えて、統計をとって……それを専用の用紙に手打ちして。
お医者さん
というか、せっかく高いお金を出して電子カルテを導入しているんだ、ボタン一つでパパッと作成してくれる機能があったってよいのに。
そういう機能がついたシステムもありますけど、あまりオススメはしませんね。
絹川
お医者さん
え? なんで? めちゃくちゃ便利だと思うけど。……って、あなた一体どなたです?
はじめまして。ドクターアバターの絹川といいます。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ドクターアバター?
はい。今でこそお医者さんの幅広いニーズに応える仕事をしていますが、もともとの専門は電子カルテの導入でして。
絹川
お医者さん
へえ! じゃあ電子カルテのシステムには詳しいんだね。でも、そういうあなたが「オススメしない」ってどういうこと?
そうですね。学会や役所用の書類作成機能をオプションで追加できるものはあります。ただ、端的に言えばこれがなかなか高い。けっこうなお金がかかるんですよ。
絹川
お医者さん
ふむ。でも、この面倒な時間から開放されるなら、ある程度の費用がかかっても導入したいけど。
そのお気持ちは理解できます。ただややこしいのが、そういったオプションを入れても、常に思ったように稼働させられるわけじゃないってことです。地方自治体ごとに書類のフォーマットが違ったりしますし、結局手作業で調整しなければならなかったりする。
絹川
お医者さん
うーん、なるほど。つまり、高いお金を出して導入しても、それに見合うメリットがないということか。
基本的に電子カルテは「コストの計算」と「診療経過の記録」を行うためのものですから、データを編集して別の書類にまとめる、といったことは得意じゃないんです。今後改善されていく可能性はもちろんありますが、現状では費用対効果がいいとは言えませんね。
絹川
お医者さん
なるほどね。……でも、じゃあ結局この面倒な作業からは解放されないってことか。
いや、そうでもないですよ。
絹川
お医者さん
ん? だって今、そんなオプションは入れない方がいいって言ったじゃない。つまり、結局今までみたいに手打ちでコツコツやるしかないってことだ。
確かに「ボタン一つで完了」というわけにはいきませんが、手間を減らすことはできると思いますよ。たとえば電子カルテのシステムには、csv形式でデータを出力する機能がついています。
絹川
お医者さん
ん? csvってあの、Excelとかで見る…
そうです。その機能を使って必要なデータを出力し、その後の書類作成の工程を外注する、というのはどうでしょう。
絹川
お医者さん
ああ! そういうことか。データを集めることさえできれば、作成自体は誰かに任せてもいいんだな。
そういうことです。csvデータと、どういう書類がほしいかをきちんと伝えれば、作ってくれる業者さんはたくさんあります。クラウドソーシングでフリーランスの方に頼むこともできますし。
絹川
どれくらいの頻度でそういった書類を作成するかにもよりますが、冒頭で話していたオプション機能の実装よりは、かなりお安く済むんじゃないかと思います。
絹川
お医者さん
なるほど。費用対効果的にはそちらの方がよさそう、ということか。
そういうことです。すべてを電子カルテで完結させる必要はありません。費用対効果を考えた上で、外部のリソースを積極的に使っていくのがいいと思いますよ。
絹川
お医者さん
そうだね。なんとなく視野が広がったよ!ありがとう!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。