2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第208回「優秀の定義を見直そう」
社内ニート?
今すごく多いんですよ。50代、仕事ができない、働かないおじさん。
それに若者がモヤモヤしていると。
だって働かないのに1,000万近い年収を取ってるわけですから。
それって大企業の話ですよね。
働かないおじさんの給料が高いのは中小企業も同じです。
中小企業にもいますか!?
います、います。1,000万はいかないけど若者に比べたら高い。しかも働かない。
それは「昔がんばったから」ってことですか。
年功序列給与だからでしょ。
中小企業がそれでやっていけるとは思えませんけど。
もうもたないですね。若い子も辞めちゃうし。
「自分もこのまま年功序列で」とはならないですか。
ならないでしょ。このままいたら「自分も将来こうなってしまうのか」って。だから「違う会社に行こう」となるわけで。
それでも働かないおじさんに給料を払い続けるわけですか。
それが日本の労働法制じゃないですか。上げたものは下げられないから。
会社に余裕があるわけじゃないけど、変えられないってことですか。
そのしわ寄せは当然、現場で仕事をしている若者にいくわけですよ。
制度自体を見直せばいいのに。
中小企業は難しいでしょう。人事の専任者って、だいたい社員100人に1人って感じなので。多くの中小企業って100人に満たないじゃないですか。
そうですね。
だから人事専任がいないんです。ぜんぶ兼任兼務で。
総務部長が経理も含めて全部見てるイメージですよね。
そうなんです。本当は、いまの時代に合わせた能力と賃金の設定とか、20代の採用と育成とか、やらなくちゃいけないんですけど。
難しいでしょうね。
だけど、そのリスクに気づいている中小経営者はほとんどいない。
今のままだったら「若い子はみんな辞めちゃうよ」ってことですか。
辞めるのもそうだし、育てられないし。そもそも入ってもこなくなりますよ。
これを解決するにはどうしたらいいんですか?
プロの人事を置くしかないです。ただ雇用契約で置いてしまうと、そこまでの仕事はなかったりするじゃないですか。
ですね。
だから週1回とか週2回来てくれる人を、業務委託で契約すべき。
それは社労士さんでもいいんでしょうか。
もちろん。社労士さんで、週1・週2でちゃんとやってくれる人って、実はいらっしゃって。僕も紹介してます。
制度づくりも頼めばやってくれますよね。
そうなんですよ。でも経営者ってそんなに知識がないから。「賃金下げたら訴えられる」ぐらいに思ってるんですよ。
思ってますね。
不利益変更は手厳しく罰せられるという認識があって。毎月25日に「本当はこんなヤツにこんなに払いたくないんだけど、しょうがないなあ」って思いながら払ってる。
すごいストレスでしょうね。
おっしゃる通り。今これがすごく経営者のストレスを生んでます。
なぜそうなるまで放置しておくのか。
もともと日本の給与って、定年まで上がる仕組みでつくってるんですよ。「これ、上げる評価じゃないよね」って人でも、みんな上がるわけです。
それが当たり前になっちゃてると。
周りもずっと同じ賃金制度で来てるので。
変えればいいじゃないですか。
給与評価制度を変えるって結構なパワーがかかるんです。
揉めそうですよね。
間違いなく揉めます。
まずは人事のプロを雇えと。
まずは賃金制度を変えるってことを決めないと。
そこからですか(笑)
そこからですね。ちゃんと決めて、プロに委託して。それでも1年ぐらいはかかりますよ。
若い子は待ってくれますかね。
待てないから「辞めよう」って思うんじゃないんですか。
今すぐ「ちゃんと評価される会社に行こう」ってことですか。
それもあるし、「このままだと自分もああなる」って思うじゃないですか。
今の20代・30代って、そんなに前向きな人ばかりなんですか。
もちろん全員がそうだとは言わないけど、優秀層は確実にそう。
そこが抜けると会社はもうもたないと。
前にも話しましたけど今の組織って「1・0・9」なんですよ。いわゆる中間層ってもういない。「優秀か、そうじゃないか」だけ。
「言われたとおりのことを、やってくれるだけでありがたい」って、前におっしゃってましたよね。そういう仕事なら「9」の人でも出来そうですけど。
仕組みがあればそれで回ります。ただし、その仕事で昇給させ続けていいのか?って話ですよ。
なるほど。
どんなにすごい仕組みでも、同じ能力の人間を昇給させ続けたら必ず破綻します。
そりゃそうですね。
もちろんリーダーは必要です。人をまとめたり、教えたり、現場を管理したり。
そこまでは昇進できると。
本人次第ですね。要は「あなたやりますか?やりませんか?」って話ですよ。
なるほど。「やります」となった人だけが昇進していく。
ただし頭打ちはありますよ。個人的には中小企業はゆるやかな年功序列がいいと思ってまして。40か45で昇給は止めたほうがいい。
リーダー的な存在でも上げ続けることは出来ないと。
無理ですね。仕組みを作り出すわけではないので。だけど下げる必要もない。
上げすぎるから下げざるを得なくなるんですね。
おっしゃる通り。400万なら400万でやり続けてもらう。エッセンシャルな仕事をやってもらう人は当然必要なわけで。
やり続けてくれますかね。
格別優秀じゃないけど、正直できちっと仕事をやる人は残ると思う。そういう人がその職種では優秀なわけですよ。「優秀」の定義って、仕事や職種によって変わるんです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。