vol.97【『航:心のmemory』|学生時代の友達とは全く違うオーダー絵画になったOさんの場合】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

『航:心のmemory|学生時代の友達とは全く違うオーダー絵画になったOさんの場合

「あらゆる絵の敵は、灰色である」ある画家が言いました。

それは、ルーブル美術館にある『民衆を導く自由の女神』を描いたドラクロアです。

灰色が敵?!水墨画が身近な日本人にとっては、ちょっと違和感がある言葉です。

日本を含む、東洋では
「墨(黒)は五彩を兼ねるが如し」と唐の絵画史家の張彦遠(ちょうげんえん)が言ったように墨の美学が発達しました。
黒い色を表す玄(げん)は、紀元前7世紀から「奥深い」という意味があり、本質を象徴する色でした。

では、なぜドラクロアにとって灰色は絵の敵だったのか?そこには、彼の個人的な体験があります。モロッコ旅行にて、アフリカの太陽に照らされた、多彩な色に魅せられたのです。輝く豊かな色彩はなんて素晴らしいのだろう!感動した彼は、自分の絵に表現しようと研究を重ねます。色彩を追い求めるから、灰色は<敵>になったのです。

ドラクロアの生きた19世紀は、インターネットなどなかったので、今のように世界中が瞬時につながりませんでした。しかし、今は世界を瞬時に見られる時代です。

ドラクロアの絵も、水墨画も、美しい。今は、多様な美を楽しめるようになりました。

多様な美の中でも、私が依頼されて描く絵は、【絵画を超えている】のが特徴と言われます。どう超えているのか?は、見る人によって様々な解釈がありますが、「門間さんに描いてもらう絵は、心のmemoryになるからいい」と依頼したのがOさんでした。

Oさんは、学生時代の友人Iさんがオーダー絵画を頼んだのがきっかけで、私の主宰イベントに足を運ぶようになりました。初めて来たとき「個展にうかがえて良かったです。感想をなかなかうまく言葉にできないのがもどかしいですが、結構な衝撃を(もちろん良い意味で)受けました」そして、時折フラリと来るようになりました。

時々の絵の感想から、Oさんはやさしくてきれいな色、かつ、芯の強さのある作品に惹かれるのだなと感じました。

一方、Oさんの友人であるIさんは、はっきりした色合いを好みます。
オレンジが映えるように、青系の色が部分的にはいる作品が、Iさんのオーダー絵画でした。

社会人になっても友情を育み続けている2人ですが、色の美学は全く違う。性格も違う。補い合うような関係性なのかもしれないと思いました。Oさんに伝えると「確かに彼と僕が同じ美学とは考えられないよね」ニコニコと笑いました。

その後、「絵が創られていく過程を知ることができて、門間さんに描いてもらうのは想いのつまった絵なのだと再認識ました。やっぱイイなーと思っています。今の僕が何をどう想っていたかを振り返れるような‥‥、10年経ったときに、「今までの自分はこれを大事に歩いてきたんだなぁ」足跡を懐かしめるような、心のmemoryになる絵を描いてほしい」と依頼しました。

Oさんは、いろんな絵を見るたびに優しいピンク色に心惹かれていました。色は、人の想いを反映することが多いので、包み込むような優しい想いがあるのではないか?とさりげなく話を聞いていくと「仕事以外で【子供を救いたい】想いがあるのだ」と打ち明けてくれました。優しいピンクは、愛を象徴する色と色彩心理で言われています。

Oさんの個人的で純粋な想いを聴いて、ああ、これは絵のベースになる色だと感じました。

さらに、セッションでじっくり聴き、構想の絵を描いてセッションを重ねていく中で、希望や光を表す黄色、海洋研究者としての知識と心を表す緑、波の研究に没頭する時の象徴として青が加わることになっていきました。

完成した絵を見たOさんは、「ワクワクが止まらなくて、テンションが上がりっぱなしです!門間さんのイベントで、人のために描かれた絵を何度も見てきたけど、自分の絵はこんなに嬉しいのですね」何度も絵を見てはニコニコしていました。

その後、「会社のデスク周りに飾りました。絵を見てはニンマリしています」

OさんとIさんでは、求めた作品の色が全く違いました。たとえ、人生の一時期を一緒に過ごし、友情を育む友人でも「美しい!」と心の奥底まで揺さぶられるものは、人によって違うのです。

一人ひとりの授かった命に、毎日の時間が積み重なって、唯一無二になっていくのだから、違って当たり前。

多様さが混在する今だから、多様な色の美学があって当たり前。

だから、それぞれのテーマに応じて違った色彩処理で絵を描き出します。

私が一番好きな色合いは青が基調のものですが、さらに、「好きな色調を増やそう!」としてきました。ドラクロアが豊かな色彩に感動したように、画家は、感動して心が動いたものを表現するのが大切だからです。

筆にのった感動は、単なる色としてではなく、感動自体も伝えます。人の心を動かします。単なる絵でなく【作品】になる。オーダー絵画を描くにあたり、それそれの想いを聴いて、その人の心をのせるのです。

同時に、感動だけでなく、ドラクロアが色を研究し続けたような論理力も使います。色は、【色彩構成】という言葉があるように、構成することで言葉では伝えられないメッセージも伝えることができるからです。

感性と知性が複雑に絡み合う【作品】創りを、それぞれのクライアントに耳を傾けて寄り添ってスケッチから起こし、数ヶ月かけて生み出していく‥‥。それは、異なるチャレンジの連続ですが、それは、異なるチャレンジの連続ですが、クライアントの「自分の言葉にできない様々な想いも表現されている」という笑顔は、かけがえのない宝です。

 

今回完成した作品 ≫『航』

 

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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