vol.122『心の海』|現実にはどこにもない自分だけの心の海のイメージを求めたMさん

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

『「心の海」|現実にはどこにもない自分だけの心の海のイメージを求めたMさん』

 

心で見たイメージを絵にする。すると、自分が無意識に大切だと思っているものも、生き生きと浮かび上がります。

しかし、それがなかなか難しい。実は、現実を元にして考える場合、心の中のイメージで、何が大事なのか?一つ一つ紐解かないと、ピタとくるイメージに辿り着けません。

実は、日本の美術は心のイメージを表現するのを得意としてきました。絵巻物、浮世絵、屏風絵‥‥、長い歴史の中で、たくさんの作品が残っています。例えば、愛知・徳川美術館ならびに東京・五島(ごとう)美術館に所蔵される、国宝の源氏物語絵巻。現実だったらある屋根や天井を取り除き、ときには室の仕切りも省略して、斜め上から俯瞰(ふかん)的に屋内を描く手法で、室内を広く生き生きと描き出すことに成功しています。

心のイメージを形にするには、取り除いたり、省略したりするだけでなく、順番や大きさもバラバラにすることがあります。

西洋美術で言えば、美術の教科書に出てくる【キュビズム】のような描き方です。

私は2019年の神戸での学会の後、【キュビズム】で教科書では教わってこなかった彫刻を偶然知って、強い衝撃を受けました。「ピカソが始めたと言われるキュビズムが、あまりにもアフリカのマコンデ彫刻に似ている」のを発見したのです。「そのまま引き写したのでは?」という思えるほど似ていました。

マコンデ彫刻は、タンザニアのマコンデ高原に住んでいた東アフリカ・マコンデ族の想像力豊かな黒檀彫刻。最初の父親がアフリカ黒檀(アフリカンブラックウッド)を彫って最初の母親を創ったという伝説を持つ彼らにとって、アフリカ黒檀の木は聖なる意味を持ち、今日まで数世紀の歳月を費やして独自の木彫りの技術を発展させてきたと言います。

キュビズムは、あらゆる対象を幾何学的図形に還元して描く、立体派とも呼ばれる美術運動のひとつで、ポール・セザンヌの「形態」に対する主張に影響を受けたジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソが始めたと言いますが、その基盤の一部に、聖なるイメージを大切にするアフリカの心のイメージが息づいているのです。

Mさんに石垣の海を題材にするオーダー絵画を依頼された時、実物の写真がたくさんある有名な海なので、最初、描くのはそんなに難しいことではないと考えていました。まだオーダー絵画の経験は5年ほど。海のオーダー絵画は初めてでした。

しかし‥‥、描き進めるに従い、とても難しい依頼だと気がつくことになります。

まず、下絵を描いてMさんに見せたときに「石垣の海は絵のような波はない」と言われて、最初、解釈に困りました。資料でたくさんの写真を見ましたが、波があるものもあったからです。

ゆっくりと話を聞いていくうちに、「Mさんの心のイメージの海、毎日眺めたい海には、波が全くないんだ」と分かりました。

そして、時間をかけて絵の具を重ねて描いていく本画の制作では、波がない、石垣独特の遠浅の穏やかな海を描き出していきました。

ところが、今度は「私にとっての石垣の海は、手前ももう少し青くて透明感があります」と、絵を見てMさんが気づきました。

私は、どうしたらいいのだろう?と考えに考えて、
「海をキュビズムの彫刻のようにつぎはぎにつなぎ合わせよう。
しかし、日本の絵巻物のように、見ている人はごく自然に絵を楽しめるようにしよう」

と思いつきました。

そうやって出来上がった絵は、「まるで写真のよう」とよく言われます。

しかし、写真とは最もかけ離れたところから、この絵は生まれてきました。
心のイメージをとことん追いかけたMさんの心の海は、
見るひとの心に入り込んで、写真よりもリアルに迫ってくるのかもしれません。

あなたの目には、どう写るでしょうか?

今回完成した作品 ≫『心の海』

 

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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