人と仕事の丁寧なマッチング

空き家を減らすにはどのような方法があるだろう。人口減少に合わせて新築の販売件数を抑えること。住まなくなったら速やかに平地にするというルールを法制化すること。外国から移民を招いて空き家を安く提供すること。色々考えられるが、これらはすべて空き家全体に対するアプローチである。別の視点から見てみると、これらとは根源的に異なる解決策がある。

それは目の前にある1件の空き家のみを減らす方法である。たったひとりの「どうしてもこの家に住みたい」という人が現れれば、この世から1軒の空き家がなくなる。もちろんこの繰り返しだけで全国の空き家問題が解決するとは思えない。だが目の前の「両親が住んでいた大切な家」「思い出が詰まった家」を空き家でなくすことはできる。

中小企業の採用にはこの発想が必要である。日本全体が抱える若年労働人口の減少という課題。空前の人不足。これをトータルで解決するには「移民の受け入れ」「少子化対策」というマクロ対策が必要だ。だが目の前にある「自社の空きポスト」を埋めたいのなら、やるべきは人と仕事の丁寧なマッチングである。

すべての空き家が一軒一軒違う家であるように、すべての仕事はひとつひとつ違う。同じ地域、同じ業種、同じ職種であったとしても、違う仕事である。同じ会社の同じ職種であったとしても、上司が違う、同僚が違う、お客さまが違う、仕事のやり方が違う。つまりまったく別の仕事なのだという認識が必要だ。

空き家のどこが気にいるかはその人次第。古い納屋がお気に入りになるかもしれないし、窓に嵌ったステンドグラスがお気に入りになるかもしれない。仕事もまったく同じである。懇切丁寧な上司が気に入る人もいれば、ただ見守ってくれる上司が好きな人もいる。要は相性なのである。

この会社はどんな会社なのか。社長はどんな人なのか。職場はどんな雰囲気なのか。求められる資質は何なのか。求められない資質は何なのか。どんな人ならここを快適だと思うのか。どんな人はここを辞めたいと思うのか。給料や休みという誰にでも共通の指標ではなく人によって異なる好み。そこが重要だ。

空き家に残された古い家具や、手間のかかる大木や、使われていない屋根裏部屋のように、好き嫌いが分かれるもの。多くの人には好かれないかもしれないけれども、すごく好きな人が現れるかもしれない。そういう特徴と、それを好きになってくれる人とを、丁寧にマッチングしていく。解決すべきは全体の課題ではない。目の前にあるひとつのポストを埋めることである。

 

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