第375回 企業はトイレ時間まで管理すべきか

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第375回「企業はトイレ時間まで管理すべきか」


安田

トイレの記録を提出させられた人がパワハラで会社を訴えています。大か小かの報告までしなくちゃいけなかったらしくて。これはさすがにやり過ぎですよね?

久野

ちょっとやり過ぎだとは思います。ただ会社って従業員の時間を買っている立場なので。管理したい気持ちも分かります。トイレから30分ぐらい帰ってこない人もいますから。

安田

確かにいますね。トイレでずっとスマホを見てる人とか。どの程度の管理までなら許されるんでしょうか?

久野

基本的には社会通念みたいなのがあって。たとえば製造業のラインだと間に5分〜10分の休憩があるんです。それ以外の時間はトイレに行っちゃいけないとか。

安田

突然お腹が痛くなったらどうするんですか。

久野

もちろん「やむを得ない事情」がある時は仕方がないんですけど。原理原則はダメってことですね。

安田

なるほど。トイレは休み時間のうちに行きなさいと。小学生みたいですね。

久野

「そのルールに耐えうる体の状態でないといけない」というのが原理原則です。

安田

労使関係がどんどんシビアになっていきますね、お互いに。ちょっとでも残業したら「残業手当を払え」という従業員と「契約時間は100%仕事しろ」という会社側と。

久野

そうなりますよ。仕事中にスマホでLINEしてる人もいますし。経営者からしたら「おいおいおい」って思いますよね。

安田

そりゃあ思いますね。時間外手当をここまでシビアに払うのなら。

久野

そうそう。

安田

お互いに信頼関係が崩れているというか。信頼より契約を重視するようになってる。

久野

そうですね。ただここまでやるのは会社もやり過ぎだとは思います。

安田

トイレが毎回長い人とか、どうしたらいいんですか?

久野

頻繁にトイレに行くような人は産業医の先生に相談してもらうとか。本当に病気なのかもしれないし。ただサボってるだけかもしれない。個別対応するしかない。

安田

普通にトイレに行くだけなのに上司に報告までさせるのはやり過ぎだと。

久野

常識的な範囲においてはそうでしょうね。ただ企業には雇用者を使用する権利があるので。トイレに行きすぎて収益性が悪いってことになれば、そこに介入する余地はあります。

安田

そりゃそうですね。会社側としたら出来るだけサボらず仕事の時間を増やしてほしいわけで。ただやりすぎると刑務所みたいになってしまいますよ。

久野

結果で追いかけるスタイルにしないとそうなります。

安田

でも雇用って「結果じゃなく時間に対して」報酬を払う契約じゃないですか。結果が出ようが出まいが働いた時間に対して100%報酬を支払う仕組みですよね。

久野

基本的にはそうですね。

安田

だったら成果を出してもらうために管理するのは当たり前という気がします。ただ管理しすぎると人が来なくなっちゃう。「トイレの時間まで管理される」とか書き込まれて。

久野

だから結果で評価して上げていく仕組みにしないと。全員がサボらない、全員がきっちりやる前提で組まれたビジネスモデルでは、もう太刀打ち出来ないです。

安田

確かにそうですね。

久野

もう労働集約では無理ってことです。

安田

どういう管理のやり方がおすすめですか。

久野

基本は結果管理だと思います。結果を出せる人はどんどん上げて、結果を伴わない人は評価制度で下げていく。賞与を出さないとか、時間給を最低限にするとか。

安田

長期的に見ると結果連動型の報酬になっていくと。

久野

そうですね。

安田

労働者はどう感じるんでしょう。真面目に働いた方が「サボって時給を稼ぐより得だ」って思うんでしょうか。

久野

日本人は基本的に真面目なので。そもそもサボる前提で働く人は少ないです。

安田

確かに。そもそも真面目ですもんね、日本人は。

久野

ただ問題なのは「真面目だけど成果が出ない人」がいるってこと。

安田

サボらず一生懸命やってるけど成果が出ない人。そういう人は給料も増やせないですよね。

久野

増やせません。

安田

そういう人は真面目にやってるのがバカバカしくなって、サボり出すかもしれませんね。

久野

そしたら給料はさらに下がっていくってことです。

安田

ただ仕事が出来ない人って、どうしても労働時間が長くなるじゃないですか。長くなると残業代も増えるわけで。

久野

「結果を出す人」との明らかな差をつけることが重要です。2年間で年収150万ぐらい差が出るとか。

安田

できない人を下げるには限界がありますもんね。その分、できる人をどんどん上げていくと。

久野

ウチもそこは積極的にやってます。とにかく良い人材にはたくさん払う。減らすことを考えなくても増やさないだけで、インフレ効果で減っていきます。

安田

なるほど。下げなくても実質的に減っていくと。そしたら勝手に辞めていってくれる。

久野

そうなっていくと思います。

安田

昔から言われる2:6:2の法則はもう通用しないんですね。2割の黒字社員が赤字社員の分まで利益を出すっていう。

久野

もう無理ですね。それをやってしまうと優秀な人から抜けていきますから。結果を出す人と出せない人と、二極化していくのは避けられないと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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