その44  街のドレスコード

ドレスコードというものがございます。

レストランやホテルでマナーに反した
格好をしてはならないというアレです。
たいていの場合、常識の範囲内での対応を求めたもので、
ルールに合ったものでないと本当に立ち入りを認めないほど
厳格な場所はあまりないと思いますし、
また、クラシックな、大人の場所でしか存在しないものです。

しかし、意外な場所にそれがあるということを
数年前に聞きおよびました。

それは「人気スニーカーを買うための行列」です。

スニーカー自体はコレクション性の強いグッズなので
中年のファンもそれなりにいるようですが、
若者カルチャーのど真ん中、ストリートファッションを支える
スニーカーブームを背景に成立したルールで、
当事者たちには軽くドレコなどと呼ばれているそうです。

そもそもスマホですべてが片付く今の時代、
大量生産品の物販にわざわざ行列するのか?
と思われる方もおられるかもしれませんが、
当然メーカー公式のアプリで抽選なども行なわれています。
それと並行して、
有力ショップの限られた店舗のみで限定販売が行なわれるため
抽選が行なわれ、その抽選券を得るための条件が
件のドレスコードだというのです。

ショップやその時々によって条件は異なるそうですが、
多いのは「抽選対象になるモデルと同モデルを履いていること」、
厳しいと「同モデルでも指定の十何種類のうちのどれかを履くこと」
などが決められているそうです。
スニーカーは同じモデルでも定番人気モデルは無限といっていい
バリエーションがあり、カラーがあります。

具体的に指定までされて、持ってなかったらどうするの?
という疑問こそ、ドレスコードの理由に行きつきます。

すなわち
「当然それくらいは持っている人にしか売らない」
ということです。

補足すると、人気モデルといってもそれはごく一部に過ぎず、
ほんの少しの違いで同じモデルがプレミアにもなればセールにもなります。
一方でプレミアはちょっとおかしいんじゃないの?という価格になっており、
定価1万円台のものに5万10万つくことも特別ではありません。

そうなると、おのずと発生するのが転売です。
メーカーや一次販売店は定価でしか売らない(売れない)ので、
転売者は入手してすぐ売るだけで数万円を手にできるわけです。
かつての行列には、当選確率を上げるため、
自分だけでなく人を雇って並ばせたりすることも行なわれたようです。

そうしたファン以外の流入を排除するためのアイデアが
ドレスコードというわけです。

スニーカーの人気というあやふやなモヤのようなものが
プレミアムを生み、人の行動を促し、二次流通を活気づけ、
ドレスコードがそういえるのかわかりませんが
ルールや文化らしきものまで形成していく。
また、どうやったら定価で買えるかという遊びも中々おもしろいものです。

…まー、必要かっていったらあきらかにそうじゃないですけどね。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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