本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
「自分の商売を成功させたい」
商売を始める人であれば、誰もがこう願うものではないでしょうか。
私自身もそう願っていたからこそ、起業してから長い間、自分のお店のことだけを考え続けてきた訳です。
でもここ数年、つくづく思うのです。
「自分の成功ばかりを考えていたから、逆に苦労したんじゃないか」と。
5年前、私は自分のお店だけでなく、個人店オーナーさんの開業と集客を手伝う仕事を始めました。そんな仕事を続けてきて分かったことがあります。
それが「他人の商売を手伝うほど、自分の商売にも新しい気付きがある」ということ。
他店舗オーナーさんのお店の集客を真剣に考えるほど、自分のお店が客観的に見えるようになり、客観的に見られるようになった結果、それまでは気づけなかった自分の商売に対する新しい発見があるのです。
これは逆に考えるのであれば、冒頭に書いた当時の私のように、自分の成功を願うあまり、自分の商売のことばかりを考えるほど、主観でしか自分の商売が見えなくなり、主観でしか見えなくなってしまうから、結果的に新しい気づきも得られなくなってしまうと言えるのではないでしょうか。
今は繁盛店となったある店舗のオーナーさんが、お店が繁盛する前にこんな事を言っていたのを覚えています。
「この街にもっと活気が出れば、結果的に自分のお店も売れるようになる。だから自分のお店だけでなく、他のお店の紹介もどんどんやっているんです」と。
もちろん、このオーナーさんのお店が繁盛したのは、こうした考え方だけが理由だと言うつもりはありません。でも、他人の商売を紹介しながら自分も商売をすることで、オーナーさん自身が常に自分のお店を客観的に見ることができていたというのは、少なからず繁盛する要因の一つになっているように感じます。
「自分の商売を成功させようと思うなら、他人の商売を手伝ってみたら良い」
こんな言葉を開業当時の自分に伝えたとしても「それじゃあ自分が損するだけだ」と、聞く耳を持たなかったでしょう。確かに「目先のお金」という報酬だけで考えるのであれば、自分の商売の事だけを考えた方が得なのかも知れません。
ただ、他人の商売を手伝うことで得られる本当の報酬とは、お金よりも「客観視点」や、自分の商売に対する「新しい気付き」であり、開業当初の私がこの価値に気づいていれば、結果的に商売が軌道に乗るのも、もっと早かったのではないか、と今は思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/