システム屋の責任分界点とは?〜お医者さんは、なやんでる。 第131回〜

第131回 「システム屋の責任分界点とは?」

お医者さん
お医者さん
(電話をしながら)え? いや、だっておたくシステム屋さんでしょ? 予約システムの不具合が起きて……え? それはまた別の業者の担当だって?
お医者さん
お医者さん
(電話を切って)まったく、なんなんだ。システムの専門家なんだからサクサクっと直してくれればいいじゃないか。担当がどうとか責任問題がとか面倒くさい……
お困りのようですね、先生。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうなんだよ。予約システムがうまく動かなくなって、それで最近やり取りしたシステム会社があったから聞いてみたんだけど、それはウチの担当じゃないとか言われてね。……って、あなたは確か……
ご無沙汰しております。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ! そうそう。ドクターアバターの絹川さんだ。いいところに来てくれた。あなたも確かシステムが専門なんだよね?
そうですね。確かに私は電子カルテが専門なのでシステム屋ではあるのですが、システム屋といってもけっこう守備範囲が違っているもので。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え? そうなの?
はい。インターネット系、ネットワーク工事系、電子カルテ、検査機器、そして先生がいま困っている予約システムなど、いろいろな分野があるんです。それぞれ「ここからここまでが専門」という守備範囲があって、それを外れたものには対処できません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ええ〜。そんなこと言われても、素人のこちらにはよくわからないよ。
そうなんです。業務の守備範囲のことを責任分界点と言ったりしますが、業者側ではわかっていても、それがお客さんに伝わっていないケースが多いんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだよ。「ここ以外は担当できない」ってキチンと言っておいてもらわないと、こういういざという時に困ってしまう。
仰る通りです。ただまあ、業者側の事情もわかるんですよね。彼らもビジネスなので、できるだけ案件をもらいたい。営業する時にあんまり「ここ以外は相談しないでください!」とも言えないから、守備範囲を敢えて明確にしない場合もあるでしょう。
絹川
絹川
それに、そもそも複数のシステム会社が絡んでいる場合、クリニック側にシステムの全体像を把握できている人が必要なのですが、現実的にはなかなかいない。結果、システムにはあまり詳しくない人の言う通りに実装するしかなく、結果トラブルになったりするわけです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ちょっと待ってよ、それじゃまるでこっちが悪いみたいじゃない。
必ずしもそう言いたい訳ではないんですが、これだけシステム化が進んできた今、発注側にもある程度の知識が求められるようになってきているのは事実です。
絹川
絹川
先生自身がシステムの専門家になる必要はありませんが、何かが起こった時に誰に相談すればいいかは分かっていた方がいいでしょうね。例えるなら税理士、社労士、司法書士みたいなもので、素人目には似ていても彼らの業務範囲は違っている。そこをなんとなくでも理解できている事が重要なのかなと。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーむ、まあ、そう言われればその通りだけど。でも、それこそいま絹川さんがしてくれてるみたいに、素人にもわかるように噛み砕いて説明してくれたら嬉しいんだけどね。
まあ、私はこれ自体を仕事にしてますから、全然大丈夫なんですけど。ただ、システム屋さんにシステムとは関係ない相談をした場合、その対応はあくまで「サービス」の範疇だという事は理解しておく必要があるでしょう。それこそそれは、業者とクリニックの責任分界点ということです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどねえ。我々だって、医療に関係ないことを相談されることは多いが、それはあくまでサービスで答えているだけだものなあ。……うん、よくわかった。あらためて予約システムの会社に連絡してみることにするよ。
それがいいと思います。もしその中でよくわからないことがあれば、私に相談いただければと。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ!確かにそうだ。これからはわからないことがあったら絹川さんに連絡するようにするよ。ありがとう!

 

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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