第184回 順調なお店が羨ましいと感じたら…

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「あのお店は順調そうで良いなぁ」
1号店を開業したばかりの頃、同じ地域にあった人気の個人店の前を通るたびに、私はこんな事を感じていました。

通りからは、そのお店の中で常連さんらしきお客さんたちがいつも楽しそうに笑っているのが見えて羨ましく思っていたことをよく覚えています。

でも、そんな経験から20年商売を続けてきて分かったことがあります。
それは「当時の私のような物事の捉え方こそが、繁盛しなかった原因の一つだ」ということ。


全てのオーナーに当てはまるかどうかは分かりませんが、商売を始めれば同じ街に同業と呼ばれるお店が存在している場合は多いのではないでしょうか。少なくともこれまで私が出店してきた街で同業がいなかった経験は一度もありません。

そんな状況で自分の商売が思い通りにならない時、私と同じように地域の繁盛店を羨ましく感じてしまう方もいらっしゃると思います。

でも、今はこう思えるのです。
「繁盛しているという事は、その裏で他店より多くの失敗もしているのだろう」と。

自分のお店よりも順調そうなお店を見た時、私たちはそのお店の良い面ばかりに意識が向いてしまいがちです。実際、お店の試行錯誤というものはお客さんの目に触れない所で行われている場合がほとんどですので、これは自然なことなのかも知れません。

一方、商売において何かを試したとしても上手くいかない事の方が多いという経験を踏まえて考えるのであれば、自分のお店より繁盛しているお店というのは、少なからず自分のお店よりも多くの失敗をしている可能性が高いと考えられるのではないでしょうか。

そう考えるのであれば、冒頭に挙げた「あのお店は順調そうで良いなぁ」という、良い面ばかりしか見ていない偏った視点こそが、目に見えない部分の試行錯誤の重要性に気づけていない証であり、その重要性に気づけていないから自分のお店は繁盛していなかったということ。

もし、自分のお店よりも順調そうなお店を見たのであれば、そのお店の上手くいっている面よりも、上手くいかない事も自分より経験しているのだろうと捉えること。

そのような視点で順調なお店を捉えることができれば、自分のお店もよりチャレンジする意欲が湧いてくるでしょうし、チャレンジする回数が増えた結果として繁盛店に近づくことができるようになる、と私は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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