第159回 その日報は役に立っているのか?

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、久しぶりに懐かしいものを見つけたので、その画像をSNSにアップしました。
その画像というのがこちら。

これは2002年に私が開業した当初、毎日の売上と支出、来店数を記録していたノートで、今の私のお店で言うところの日報になります。

「うわぁ〜、懐かしいなぁ」
「初めての月末は売上3,840円だったのか〜」

と、苦戦続きだった当時を思い出しながらノートを見返していた訳ですが、その途中である事に気がつきました。
それが「この日報には重要な情報が書かれていない」という事実なのです。


今から見れば足りない情報だらけのこの日報。
そのため、当時の自分に言いたいことはたくさんあります、笑。

ただ、そんな足りない情報だらけの日報の中でも特に問題だと感じるのが、画像の上段部分にある、日付の横に書かれた「正の字」。

これはその日の来店数を正の字を書いて数えたものであり、画像の10月31日は5名の来店だったということが分かります。

じゃあ、この来店数の記載の何が問題だったのか?

それは、私自身が開業時にリピーター中心のお店づくりを目指していたにも関わらず、この日報では新規来店とリピーター来店の比率が分からない、ということ。

つまり「理想のお店を作るために必要な情報」と「日報から読み取れる情報」が一致していないのです。

正確には覚えていませんが、私がこの不一致に気づいたのは開業してから数年も経ってしまった頃だったと思います。もし、私が開業する前からこの問題に気づき、お客さんの来店内訳が分かる日報を作っていれば、もう少し早く自分のお店の改善点に気づけていたのではないかという気がしてなりません。

商売を始める時、私と同様に取り急ぎで作った日報の形式をそのままズルズル使ってしまったり、前職で使用していた日報の形式に疑問を持たず、そのまま流用して使ってしまう方は意外と多いのではないでしょうか?

ただ、このノートを見て改めて思うのは、たとえ同じ業種の商売であっても、目指す方向が異なるのであれば、日報に記載しておくべき情報も変わるのが当然であり、当時の私のように何の疑問も持たずに惰性で日報を記録しているお店は、自分のお店の問題点に気づくのが遅くなってしまうということ。

自分のお店の日報は、お店の目指す方向性に必要な情報が記載されているのか?

今回の私のノートの発見が、皆さんの商売の日報を見直すきっかけになれば嬉しいのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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