第244回「保育士を活かす方法」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第243回「仕事ができる高齢者とは」

 第244回「保育士を活かす方法」 


安田

保育士がぜんぜん足りないと言われてまして。

石塚

離職がすごいから。

安田

そうなんです。じつは資格登録者が100万人もいて。資格を持っているのに保育士として働いていない人が多いそうです。

石塚

そうなりますよ。

安田

看護師さんより圧倒的に有資格者が多いそうです。だけど「短時間で働けない」とか、いろんな規制があるらしくて。これは国の規制の問題ですか?雇い方の問題ですか?

石塚

単純に労働条件が悪すぎるんですよ、この業界。

安田

よく言われますよね。

石塚

極論「給料を今の倍にします」と言ったら、ぜんぜん話は変わると思う。「私やります!」「やります!」「やります!」って来ると思いますよ。

安田

へえ〜。

石塚

「育児休業は何回取ってもいい」とか。「出産一時金も保育士加算で100万円下りる」とか。みんな「保育士になりたい」って言いますよ。

安田

つまり国の予算を増やせってことですか。

石塚

出生率が上がれば、国の投資としては十分に割が合うし。ここは強化したほうがいいと思います。

安田

保育園独自の努力では限界がありますか。

石塚

学校教育とか保育事業って収益化が難しいので。

安田

子育て支援はすべきだと思います。ただそれが少子化の解決につながるかと言われると、ちょっと疑問ですけど。

石塚

そこだけでは無理でしょうね。

安田

どんなに子育てしやすくなっても、たくさんつくらない気がします。

石塚

子育て云々の前に結婚しないから。

安田

それもありますよね。

石塚

政治家が「結婚しろ」って言うと叩かれるけど、そこが本質でもあるんです。

安田

1人だと自由に生きていけるし。

石塚

そうなりますよね。

安田

結婚してる人もせいぜい2人ぐらいで。少ない子どもに資源を集中させたほうがいいし。

石塚

教育費が高いから。

安田

昔は畑仕事を手伝わせるのに子どもが多いほうがよかったみたいです。今は逆にお金がかかるので。自由に使える時間も減るし。

石塚

合理的に考えるとそうなります。

安田

支援があるなら「子どもは5人つくりたい」って人は、少ないと思うんです。

石塚

少ないでしょうね。「まあ、2人でいいかな」って。

安田

結婚しない人や産めない人もいるから、どうしても出生率は2以下になりますよね。

石塚

やっぱり統計を見ると「金持ち子だくさん」だそうです。

安田

そうなんですか。

石塚

年収が高い人ほど子どもが多い。

安田

それは教育費をかけられるから?

石塚

余裕があるからじゃないですか。生活の見通しがあるから結婚するし、それがあるから子どもをつくる。

安田

お手伝いさんを雇ったりもできますもんね。

石塚

共働きだったら保育所に預けることになるし。最近は保育所の事故も多いじゃないですか。バスに置き去りにしたり。

安田

あれも人件費が安いからですよ。人が集まらなくて。

石塚

そう。人が足りないから。そこまで手厚くできないわけです。

安田

条件さえ変われば「保育士をやりたい」って人はいるわけですよね。しかも資格を持っている人はたくさんいて。

石塚

おっしゃる通り。保育の仕事は看護師とちょっと似ていて。「やりたい」って人が一定数いるわけですよ。

安田

人気の職業ってことですか。

石塚

「子どもが好き」「医療現場が好き」って人は一定数いるわけです。

安田

たしかに。

石塚

子どもが好きだから保育科に行こう。保育科に行った。現場に出た。そしたら時間は長い、腰に負荷がくる、クレームは多い、給料は安いって、そんなの誰もやらないですよ。

安田

もっと給料を高くして充実させていくしかないと。

石塚

ここは国が予算を増やすべきでしょう。何社も試みてるけど企業努力だけでは難しいですよ。

安田

やっぱりそこですか。

石塚

そう思います。

安田

幼児教育に投資する親は増えていきそうな気がしますけど。藤井聡太くんが行ってたモンテソーリみたいな。

石塚

はいはい、英才幼児教育ね。

安田

そういう工夫をしていけばやっていけないですかね。国の予算なしで。

石塚

保育事業を完全に民営でやるのは難しいです。現実的に無理でしょうね。

安田

そうなんですね。

石塚

社会福祉法人って、大概は地元のお寺さんなんですよ。お寺が幼稚園や保育園をやっているのが多い。

安田

確かに多いですね。

石塚

本業がノータックスだからできるんですよ、あれ。

安田

なるほど。

石塚

やるとしたらクラウドファンディングですかね。

安田

お金を持ってる高齢者に寄付してもらうとか?

石塚

はい。節税とセットにしてあげて。「寄付してくれるんだったら年間150万まで節税します」とか。相続は何分の1までいいですよとか。

安田

仕組みをつくったら集まりそうな気もしますね。

石塚

ただ財務省にはそういう発想がないので。

安田

子ども好きな人がせっかく資格を取っているのに。こんなに辞めちゃうって。

石塚

今の環境では続かないですね。

安田

辞めた人はどんな仕事をやるんですか。

石塚

保育士さんって面倒見がいいから、営業事務みたいな仕事が上手いんですよ。みんなの前で話すのも上手だったりするし。僕はそれを狙って求人をつくってます。

安田

求人を出すとたくさん集まりますか。

石塚

普通にやったら集まらないです。ここが求人の妙で。

安田

どうやるんですか。

石塚

保育士さんって、ひとつだけウィークポイントがあるんです。これが求人側の狙いなんだけど。

安田

何ですか?それは。

石塚

あまり言いたくないけど(笑)実はパソコンができないんですよ。幼稚園・保育園にWindowsってあまりないんです。

安田

あ、なるほど。そこを狙って。

石塚

これ以上は企業秘密です(笑)

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから