【新連載】第1回 恩師は大手テレビ局のプロデューサー

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

【新連載】第1回 恩師は大手テレビ局のプロデューサー

安田

今回から美容室「maCoto hair mahaloco(マコトヘアーマハロコ)」の経営者で、株式会社OHANA代表の岩上さんとの対談がスタートします。岩上さんと言えば常にアロハシャツを着ている「アロハ美容師」として有名ですね。


岩上

ありがとうございます。昔からハワイが大好きで。

安田

まずは私たちの出会いから話していきましょうか。そもそも岩上さんはいつ私のことを知ったのですか?


岩上

もう10年以上前ですが、安田さんのトークセッションを聞いたんですよね。お相手は「わくわく系マーケティング」の小阪裕司さんで。

安田

ああ、ブルーノートで開催された対談ですね。私が「ぼくら社」という出版社の編集長をしていた頃です。


岩上

そうですそうです。それ以前から安田さんの書籍は読んでいたんですが、安田さんがプロデュースされた絵本『発動せよ! 変人(かぶきもの)感性』でグーっと惹きつけられまして(笑)。

安田

懐かしいなぁ。嬉しいです(笑)。ちなみに私のどこが岩上さんの琴線に触れたんでしょう。


岩上

そうですねぇ。こんな言い方をしていいかわからないんですが、「大きな失敗をしている」ということなんだと思います。『千円札は拾うな』や『自分を磨く働き方』の中で、安田さんがどんなチャレンジをしてどんな失敗をしてきたか、赤裸々に書かれているでしょう?

安田

確かに書いています。でもなぜ失敗した人間に興味を持つんです? 普通の人は「成功した人」に興味を持つ気がしますけど。


岩上

それはもう、自分の経験と重ねたからでしょうね。僕自身数え切れないくらい失敗をしてまして……。だから安田さんなら親身に話を聞いてくれるんじゃないかって。

安田

それで「こだわり相談ツアー」(安田佳生と食事をしながらビジネス相談する企画)にごお応募下さったんですね。失敗を重ねた者同士、膝を突き合わせて話したいと。


岩上

そういうことです。もちろん、単純に安田さんに会ってみたかったという想いも強かったですけどね。

安田

なるほど。でも、あらためて今の話を聞いて、ちょっと不思議なんですよ。だって岩上さん、地元の茨城で美容室を始めた頃からずっと成功しているじゃないですか。


岩上

いえいえ、そんなこともないんですけど。でも確かに、安田さんと知り合って以降はそこまで大きな失敗はないかな。むしろ大変だったのはそれ以前で。

安田

ああ、そうなんですね。つまり地元に戻って美容室を開く前、ということですよね。そう言われてみれば、私と出会う以前の岩上さんのことはほとんど知らないかもしれない。どんな人生を送ってきたんですか?(笑)


岩上

ええと、どこから話せばいいものか(笑)。高校を卒業のタイミングで上京して、まずは池袋の美容学校に入学しまして。

安田

ほう、つまり一度都内に出ているわけですね。最初から茨城だったわけじゃなく。


岩上

そういうことです。関東圏の人間なんで、やっぱり一度は東京に憧れますよね。

安田

美容学校と言うと、何年くらい通うんですか? 2年とか3年くらいのイメージですが。


岩上

今の美容学校は2年制ですが、当時は1年制でしたね。学校で1年学んで、どこかの現場で1年働いて、計2年で美容師資格を取るという感じでした。

安田

ははぁ、なるほど。じゃあ岩上さんも1年で卒業して、どこかの美容院で働き始めたわけですね。


岩上

いえ、それが僕は1年で卒業しなかったんですよね。そんなにすぐ現場に出るのがイヤで(笑)。で、通っていた学校にプラス1年かけて学ぶ「専攻科」っていうのがあったので、迷わずそこに入りまして。

安田

へぇ(笑)。ちなみに専攻科ではどんなことを学ぶんですか? さらにレベルの高いカット技術なんかを教えてもらえるわけですか。


岩上

僕もそんなイメージで進学したんですが、蓋を開けてみたら意外にも「接客」の講義がメインだったんですよね。

安田

へぇ! それは興味深いですね。美容師と言うと、どこまでも技術を追求するものというイメージがありましたけど。


岩上

ですよね。でも今思い返すと、そこが大きなターニングポイントになりましたね。接客のクラスを担当していた講師の方からは、非常に大きな影響を受けましたから。

安田

確かに岩上さんと言えば、技術はもちろんですけど、「コミュニケーションがものすごく上手」という印象です。そのあたりの技術は専攻科で学んだと。


岩上

まさに仰るとおりで。それを教えてくれた講師のことは、今でも恩師だと思ってます。

安田

ちなみにどんなことを教えてもらったんですか?


岩上

いろんなことを教えてもらいましたけど、端的に言うなら「技術向上だけじゃなく顧客満足度をしっかり考えろ」ということですかね。

安田

ははぁ、なるほど。つまり「美容師として技術を学ぶのは当然だけど、それがお客さんの満足度アップに繋がっていなければ意味がない」ということですよね。


岩上

まさにそういうことです。「技術さえ学んでいればいい」と思っていた19歳の僕には、価値観がガラッと変わるような話でした。今思えばそれって、どんな仕事にも言える重要な視点なんですけどね。

安田

確かに、マーケティングの基本と言ってもいいくらいの話ですね。ただ技術や知識を持っているだけでは意味がなくて、それをお客さんに付加価値として提供しなければビジネスにはならないと。美容学校にしてはシビアな話をしてますね(笑)。


岩上

僕もそう思いましたけどね(笑)。でもそれにはカラクリがあって、実はその講師さん、普段は大手テレビ局のプロデューサーをしていたんです。だからこそ、美容業界にはない視点のアドバイスができたんだろうなと。

安田

ははぁ、なるほど。納得感のある話です。特定の業界にずっといる人って、どうしても視野が狭くなったり固まっちゃったりしますからね。


岩上

そうなんですよ。ですから今考えても、あのタイミングでエンタメのプロから「接客」を学べたのは本当にラッキーでした。

安田

なるほどなぁ。で、接客を学んだ岩上青年は、そのスキルを携えいよいよ現場に出ていくと。最初の美容室はどこだったんですか?


岩上

初めて勤めたのは、その恩師に紹介してもらった小岩の美容室ですね。

安田

へぇ。私はあまり美容師さんには詳しくはないですが、やっぱり最初は「下積み」をやるわけですか。


岩上

もちろんそうです。特に当時は「カリスマ美容師ブーム」の全盛期ということもあって、お客さんの髪を切るまでに下積み5年10年当たり前で。

安田

10年!? それはいくらなんでも長すぎやしませんか(笑)。


岩上

そうですよねぇ(笑)。実を言えば、だからこそ美容師の少ない下町のお店を紹介してもらったんです。競争相手が少ないほうが、スタイリストデビューは早くなるだろうと。

安田

スタイリストというのが、いわゆる「お客さんの髪を切れる美容師さん」のことですね。でも、競争相手が少ないとは言え、やっぱり下積み時代はあるわけでしょう?


岩上

そうなんですけど、先ほど話したように、僕は「接客」を徹底的に学んできているわけです。だからシャンプーしながらお客さんの相談に乗ったりしていると、「私、あのスタイリストさんじゃなく岩上さんに切ってもらいたいんだけど」みたいな声がどんどん増えていくんです(笑)。

安田

ははぁ、早くも接客の技術が生きたと。じゃあそれですぐにスタイリストになれたんですか?


岩上

いやそれが、「お客さんのご要望なんで次回から僕切っていいですか?」と先輩に言ったら、「ダメに決まってんだろ!」とものすごく怒られまして(笑)。

安田

まぁ、学校を卒業したばかりの新人ですしね(笑)。


岩上

そうですよね(笑)。ともあれ、別に生意気だけでそう言っていたわけでもなくて。すごく忙しいお店だったから、スタイリストが増えた方が売上もあがるだろうと思ったんですよね。

安田

なるほど。確かに経営者の目線で考えたら、岩上さんの考えは理にかなってますね。


岩上

そうでしょう? で、怒鳴った先輩じゃない別の先輩がそれを理解してくれて、入社半年後にはお客さんの髪を切らせてもらってましたね。業界的に言えば、半年でスタイリストデビューなんて本当に珍しいことなんですけど。

安田

へぇ~。捨てる神あれば拾う神ありですね(笑)。


岩上

本当に当時から人に恵まれてたと思います。実践経験が足りないから髪切るのもまだ下手なんですけど、接客だけは板に付いてて、どんどん指名客が増えましたね。

安田

へぇ、すごいですね。技術はないのに指名客は増えるなんて(笑)。


岩上

はい、お恥ずかしい話ですが、当時は本当に下手でした(笑)。僕を目当てに来てくれた友達のカットをしたら、耳を切ってしまったり……。

安田

耳を切る!? そんな美容師さんいるんですか(笑)。それでも指名客が増えていくのは、やっぱりその「接客力」のおかげなんですかね。


岩上

人当たりだけは人一倍良かったから、かわいがってもらいましたね。それにチャレンジ精神も強かったので、やったことのない仕事にも積極的に挑戦してました。成人式の髪結いとか、経験ゼロなのに受けちゃったりして(笑)。

安田

なんと! でも成人式の髪結いなんて、かなり練習しないとできないんじゃないですか?


岩上

仰るとおりで、短い期間でグワーッと練習してなんとか間に合わせました(笑)。ただ、技術面以外の問題はほとんどなかったんですよね。お客さんがどんなスタイルにしたいのかは、コミュニケーションを取りながらばっちりイメージできていましたから。

安田

ああ、なるほど。そこでも「接客」の技術が生きている。そう考えると、社会人1年目には既に今の「岩上さんスタイル」が始まっていたわけですねぇ。興味深いです。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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