この5年、10年くらいのうちに
動画や音声を使って個人がいろいろ発信する時代になりまして、
そういうことをやられている方々の
プレゼンのレベルというものはめちゃくちゃ上がったと思います。
ビジネスパーソンのスキルとして
なにかができる、生み出せるといったことの他に
「伝える」能力というのは一ジャンルを築いていますし、
その価値というのは上がり続けています。
古くは、弁が立つことなどよりも本質があればよい、
というような考えも一定の説得力を認められたかもしれませんが、
いまそんなことを言っていたら
コミュ障の逆ギレかな?と煽られてしまうでしょう。
とはいえ、皆が皆トークを武器にしているわけではありません。
たとえば、メディアでなにかのテーマについて特集した際、
登場するそのテーマの専門家という人が
人を惹きこむ喋り方に長けていることはほとんどなく、
ホストやレギュラーといった「向こう側」の人よりは
どちらかというとわたくしのような「ふつうの人の側」に近いことが多いものです。
特に、その特徴は「歯切れの悪さ」にあります。
ある事柄について「AはBです」と言い切ることはまれで、
「傾向としては…」「その解釈が主流で…」「あくまで現時点では…」
などのエクスキューズがついて回ります。
喋りのプロにはそんなことはありません。
映画やアニメなどのサブカルチャーの解説を中心に
大量のフォロワーを持っているある評論家は、
飛行機のパイロットについて語る際
次のように述べていました。
「永久歯になってから一度でも歯医者に行った人は
ジェット戦闘機のパイロットにはなれません。
なぜかというと、高度0から1万メートルの間を数十秒で上下するので
気圧変化がすごいんです。
一度でも治療をすると歯の中に残るほんのごく小さな隙間が
気圧が低いところに行くと爆発して、歯が砕けてしまいます。
だから今でもそういう人たちは
生まれてこの方一回も虫歯になったことがない人だけなんです」
と、ほぼこのまま、寸分の淀みなく言っていました。
ここで、どこの国の場合とか、いつのころとか、例外としては、などと
モタついた話を一切挟まない切れの良さでした。
むしろ、ノイズになるようなものは積極的に排除するからこそ
高品質のトークとして評価されるものになるのでしょう。
実際、こんなことだけを聞かされると
ただ面白かったと思うだけでは済まずに
ほんまかいなと調べたくなりますが、
自衛隊の場合、虫歯は完全に治療されていなければいけないと記載されていました。
つまり一度でも虫歯になったらアウトと気持ちよく断言した
上のエピソードは事実ではないみたいなんですよね。
いいのかな……?