第178回「新橋の行列が絶えない弁当屋『かわの』の小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「新橋の行列が絶えない弁当屋『かわの』の小さなブルーオーシャン」


最近、さまざまなところでお店に行列ができているシーンを見かけます。私は並ぶのが好きではないのですが、唯一、並ぶお店が、この「小さなブルーオーシャンに出会う旅」の第一回目で書いた「おにぎり ぼんご」さん。最近は電話で注文しておいて持ち帰りにしてしまうのですが…。

そんな私が、「ここは並んでもゲットしたい!」と思うお弁当屋さんが新橋にあります。お弁当屋の「かわの」さん。なぜ、私が並んででもゲットしたいと思うのか?美味しさ?値段?それなら他の弁当屋さんにも当てはまります。そうです、他に理由があるから並んでも買いたいと思ってしまうのです。

非効率を良しとするお弁当屋さん

こんなことを書くと、いまの時代に逆行していると思われるかもしれませんが、店主である井上康一氏は、10:30オープンのお店において、深夜0:30からたった独りで仕込みを始めます。

なぜならば、人件費を削り、お客さんにできる限り安くお弁当を提供するためです。使う食材も、無駄を最小限に抑え、B級品の野菜を利用しています。さらに、この店のメニューは、通常のお弁当店とは一線を画しています。容器からはみ出すほどの大きな竜田揚げや脂ののったシマホッケ、日替わりの創意工夫が施されたメニューは、お客様に独自の食体験を提供しています。

さらに、さらに、食材の産地、調理方法などの情報を公開し、注文を聞いてから、ご飯の種類や量を尋ね、ご飯を詰める。お弁当というと、すべて詰めて、山積みになっていることが多いわけですが、「温かい食事をして欲しい」という店主の想いから非効率でもこの方法を止めないそうです。

こんな非効率のお弁当屋さん。前述したように容器から飛び出る焼き魚にフタが閉まらないほど大きな竜田揚げが入って、なんと600円!連日行列、1日800食以上売れるそうです。

10年ぶりの値上げ。お客さんの反応は?

深夜0:30から仕込みをする井上氏。深夜2時過ぎ、厨房に鳴り響いた“弁当注文”の合図。井上氏はネットで予約を受け付け、真夜中でも注文が入ります。このサービスのおかげで、常連客からの支持を維持し、新たな顧客を獲得しているそうです。

常連客と言えば、週3~4回買いにくるほど熱狂的なファンがいるほどですが、お店を守るため、10年ぶりに50円の値上げをしたそう。井上氏はかなり悩んだそうです。値上げした悔しさやお客さんが来るかという怖さもあったそうです。

むかえた値上げ初日。この日は秋の味覚「北海道産のサンマの開き」を丸々1尾入れた「魚弁当」と、「日替わり」には、鶏肉でベーコンとチーズを巻いたカツ。いつものように行列ができていた。そしてお客さんは特に50円で買わなくなるとかにはならないと、笑顔で帰っていったそうです。

行列ができるお店というのは、美味しい、安いという理由もあると思いますがそれ以上に店主の強い想いが行動ににじみ出ているのかなと思うようになりました。井上氏は「人生でこんなにたくさん弁当つくるとは思ってなかった。やめられない」んだそうです。

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お弁当屋 かわの
東京都港区東新橋2丁目12番5号
URL https://www.genkigohan.com/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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