第166回 「お医者さんのためのランチェスター戦略」
お医者さん
医療費の削減やらオンライン化などが重なって、クリニックの経営環境は厳しくなるばかりだ。そして今後もその流れは変わらないだろう。
お医者さん
仕方がないとはいえ、経営者として何もしないわけにはいかない。なにかいい戦略はないものだろうか……
そういうことであれば、おすすめの戦略がありますよ、先生。
絹川
お医者さん
えっ? そうなの? って、あなたは確か……
お久しぶりです。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ああ、そうだそうだ。ドクターアバターの絹川さんだ。……で、そのいい戦略というのは?
多くの企業が導入して成功している戦略、その名も「ランチェスター戦略」です。有名なので先生も聞いたことがあるかもしれません。
絹川
お医者さん
ああ、なんとなく聞いたことがある。でも内容はわからないな。それはどういう戦略なの?
マーケティングを多角的に分析して、経営戦略や販売方針を立案するための手法です。もともとは自動車工学・航空工学のエンジニアが「戦闘の法則」として提唱したものですが、これが転じて会社経営のバイブル的なものになっているんです。
絹川
お医者さん
へぇ、なんだかすごそうだね。簡単にその内容を教えてくれないかな。
わかりました。まず1つ目は「局地戦」です。つまりビジネスの領域を局地化=範囲を限定するということですね。クリニックで言えば、診療範囲を絞って専門性を打ち出す、などがこれにあたります。
絹川
お医者さん
なるほど……確かにそういう戦略を取っているクリニックは増えているよね。専門領域を限定することで、むしろ全国から患者が来るようになったって話も聞く。
仰るとおりです。そして2つ目は「一騎打ち」。要するに敵を1人に絞るということです。敵というのは「競合」というより「ターゲット」のことです。つまり特定のターゲットに絞った事業展開をするということ。
絹川
お医者さん
なるほどね。たとえば、ターゲットを会社帰りのサラリーマンに絞って、夕方から夜遅くまでの診療時間にする、とかかな。
まさにそういうことです!そして3つ目は「接近戦」。お客さん、つまり患者さんと接近してPRを行うということです。メールマガジン、広報誌、ブログ、SNS、Youtubeなどで、患者さんと直接やり取りする方法です。
絹川
お医者さん
ふむふむ。最近はYouTubeをやってる医師も増えたものね。確かに折込チラシや看板広告より、ずっとダイレクトな訴求ができそうだね。人間性も伝えやすいし。
ええ、今の時代だからこそできる手法ですね。そして4つ目は「一点集中」。重点を置くところを明確にし、そこにすべての力を注ぐ手法です。例えば「受付のクオリティ」に一点集中するとか、「待ち時間の短さ」に一点集中するとか。
絹川
お医者さん
つまり、ある意味ではそれ以外を捨てる戦略ってことだね。でも確かに「何が一番の売りなのか」を明確にすることはすごく大事な気がする。
そうなんです。これだけ医療機関が増えると、患者側も「選ぶ理由」が欲しくなるものなので。そして最後の5つ目は「陽動作戦」です。相手の思いもよらない作戦を遂行し、裏をかくということですね。
絹川
お医者さん
ほう、陽動作戦。例えばどんなものがあるかな。
例えば、待ち時間中に高級ホテル並みのコーヒーでおもてなしするとか、病状に応じたオリジナルのアロマを作成してプレゼントするとか、公園や運動場で青空クリニックを開くとか。
絹川
お医者さん
ははぁ、なるほどね。確かに思いもよらない作戦だ。口コミで話題にもなりそうだし、意外と効果あるかもね。
以上が「ランチェスター戦略」の簡単な内容です。詳しくは本などを参考にしてもらえればと思いますが、いずれにせよ自分で一から戦略を練るより、実績のある雛形を利用した方が成功確率は高くなると思います。
絹川
お医者さん
それは間違いないよね。うん、少し視界がクリアになったよ。ありがとう!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。