第208回 聞き飽きた言葉の中にヒントあり?

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売に欠かせない「商品」と「集客」。
この2つのうち、商品の開発に力を入れるお店は多いと思います。

これはお客さんからいただくお金の対価として提供するものが商品であるため納得するところではあるものの、同時にこうも思うのです。

「どんなに良い商品でも、その良さを伝えられなければ売るのは難しいよな」と。


商売が順調なオーナーの取り組みを見ていて感じること。
それは「提供したい価値をお客さん視点で伝えるのが上手い」ということ。

商売をお客さん視点で考える重要性は、多くのオーナーが知っていることでしょう。
でも、知っているのと実践できているのかは全くの別問題であり、この「お客さん視点での実践度の違い」が少なからずお店の業績に影響を与えているように思うのです。

私たちは商売を続けていくほどに、その分野に関する知識が増えていき、ふと気を抜くと自分が知っていることを当たり前のように相手も知っている前提で話をしてしまいがちです。

業界の専門用語を使って相手に説明してしまう。
相手の状況を考えることなく同じ説明をしてしまう。

こうした事が起きてしまうのも、お客さんの視点を忘れてしまっているからこそ起きる現象であり、逆に商売が順調なオーナーは常にお客さんの視点で物事を捉えられているから相手の状況に応じて言葉を選べるのであり、お客さん視点で商品の価値を伝えられている結果として繁盛しているように感じるのです。

そう考えるのであれば、相手の状況を理解しようとせずに専門用語を使ったり、誰に対しても同じ説明をするという行為は、決してお客さんの視点に立って考えているとは言えず、伝えることの重要性に気づかないお店がどんなに商品開発に力を注いだとしても、そのお店がいま以上に売れるようになるのは難しいのではないでしょうか。

「相手の気持ちになって考えなさい」
こんな言葉を学校の先生から何度も言われた経験があるのは私だけではないはず。

私たちは商売というものを難しく考えてしまいがちですが、商売が順調なオーナーほどお客さん視点で商品の価値を伝えられているという事実からみれば、お店の業績を改善するヒントは意外と小さな頃から何度も言われ続け、自分としてはできた気になってしまっている聞き飽きた言葉の中にあるのかも知れません。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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