人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第23回 社員の平均年収が1000万超えの会社
藤原さんが経営されている会社(従業員満足度研究所株式会社とは別法人)で、社員さんの平均年収が1000万を超えているとお聞きしたんですが、本当でしょうか?
本当です(笑)。今うちの会社はフルタイムの社員が8名とパートさんが5名いるんですが、パートさんを除く社員の平均年収は1000万を超えてます。
すごいですね。パートさんの報酬も普通の会社より高いんでしょうね。
パートさんの時給は少し高めかなという感じですが、働き方も自由が効くので、募集するとすぐ応募いただけますね。
この人不足の時代に素晴らしいですね。ちなみに1000万超えの報酬を社員に払って、会社の利益は残るんでしょうか?
そうですね。宣伝広告費などをあまりかけなくても成立するビジネスモデルなので、結果としてそれなりの利益が残るんです。
へぇ、すごいなぁ。でもそれって単純に、社員さんの給料を抑えたら、もっと利益が出るってことですよね。それをしないっていうことは、「長期的に見たら社員に給料を多く払った方が利益につながる」と考えているわけですか。
うーん、正直に言うと、そこまで綿密に考えているわけでもなくて(笑)。ただ、以前会社が崩壊した時から、「一緒に働く仲間の幸せを追及できない事業は意味がない」と思っているだけで。
ああ、なるほど。その「幸せ」というものの中には、当然外的報酬も含まれていると。
仰るとおりです。内的報酬だけでは「やりがい搾取」になってしまいますから。そもそも私たちにとって、事業目的は「利益を出すこと」だけじゃない。「従業員満足度(ES)向上」も重要な目的の1つなわけで、そのためにはやはり「利益をきちんと分配するシステム」が必要なんです。
ふーむ。私もかつて社員の平均年収を450万から800万に上げたことがあるんですが、結果として会社は潰れてしまった。社員数の違いはあれど、本来その報酬に見合わない人に払ったことが失敗の原因だと思うんです。そのあたりはどうお考えですか?
それでいうと、今うちの会社で払っている給料というのは、もちろん実力に見合った金額だと私は思っています。とはいえ、他社に移った時に同じ給料がもらえるかというと、難しい気はしますね。
そうなんですか。つまり相場より高い金額を払っている認識はあると。
あ、いえいえ、そういう意味ではありません。能力的なことではなく、今と同じように活躍できるフィールドがあるかというと難しいんじゃないか、という視点ですね。今の会社のビジネスモデルの中だからこそ能力が最大限発揮できていると思っているので。
ああ、なるほど。単に「会社に利益が出たから分配している」ということじゃないわけですね。ちゃんと貢献してくれている、能力があるからこそ分配していると。
そういうことです。そもそも「どういう働き方をしたら会社に貢献できるのか」を社員たちと何度も話し合って、その上で現場のシステムに落とし込んでいるので。
ははぁ、そうやってビジネスモデルを構築されてきたわけですね。でも一方で、そういうシステムってどうしても属人性が高くなっちゃいませんか。つまり今の社員さんが抜けて別の方が入った場合、全然機能しなくなっちゃったり。
うーん、短期的には売上は落ちるかもしれません。でもある程度の時間があれば、前の水準に戻すことは可能かなと思います。
なるほど、そうなんですね。それにしても藤原さん、「最終的には内的報酬が重要だ」と仰るわりに、外的報酬への意識も非常に高いですよね。そのあたりはどうお感じですか?
そうかもしれませんね(笑)。というのも、社員さんにとって給与ってやっぱりものすごく大事じゃないですか。そこは経営者としてはコミットしていかなければいけない部分だと。
まさに仰るとおりだと思います。私自身、社長の通信簿は「会社の利益をいくら残したか」じゃなくて、「社員の給料をどこまで上げられたか」だと思っているんです。まぁ、それもあって社員の給料を上げたわけですが……
ワイキューブさんが社員の給料を上げられた時は、すごく衝撃的でしたからね。
あの時は銀行から借りたお金で給料を上げたので、ある意味ドーピングしたのがよくなかった(笑)。
いやぁ、そこも含めてすごいです(笑)。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。