「コミュニケーション力が著しく低い」という理由で解雇した会社に、解雇無効という判決が出ました。
ゴルフ場の運営会社みたいですね。
はい。協調性に欠けていて、周りへの配慮にも欠けていて、突然すごく不機嫌になるとか大きな声を出すとか。その人がいることで周りの人が辞めてしまうそうです。
そうみたいですね。
辞めない人もモチベーションがめちゃくちゃ下がったり。会社としてはそんな人を置いておくわけにいかないと思うんですけど。
現場で一緒に働く社員はたまったものじゃないですよね。
そうなんです。だけど解雇は無効だという判決で。どうすりゃいいんですか、これ。
雇用契約は本当に辞めさせるのは簡単じゃなくて。遅刻と横領に関しては厳しいんですけど。
横領はもう犯罪ですからね。遅刻も厳しいんですね。
決まった時間に来ないのも解雇の理由になります。会社に来なければ労務も提供できないじゃないですか。
確かに。労働契約ですからね。会社に来ないということは労務提供する気がないってことですもんね。
そうです。だからこれに関しては認められるんです。ただ能力不足に関しては議論の余地もないぐらい厳しい。
能力がないと労務提供できないと思うんですけど。コミュニケーション力なんて必須スキルですよ。
コミュニケーション能力が低いって話は客観性がないんですよ。
客観性がない?周りがこんなに迷惑しているのに?
能力が測れないじゃないですか。コミュ力何%とか。
そんなこと言ったら測れない能力なんてたくさんありますよ。売上成績だって営業マンのセールス力だけで決まるわけじゃないし。
だからスキル不足という理由では解雇できないわけです。
なるほど。でも今回のケースは本人だけの問題じゃなく、一緒に働いている同僚にもかなり影響するわけですよ。
そうですよね。
売れない営業マンより悪影響は大きい。会社としては辞めさせたいと思って当然じゃないですか。
「絶対に辞めさせられない」というわけではないんです。ただ「辞めさせるに足るところの理由が不十分だった」というのが今回の判決でしょうね。
どこまでやれば十分なんですか。
主にはスキルアップのためのサポートですね。「あなたたちが雇ったんでしょ」ってことをまず言われるわけですよ。
国は会社に「どんどん雇え」って言うくせに矛盾していませんか。「あなたが雇ったんでしょ」ってひどい突き放しようです。
それが現実なんですよ。会社はちゃんとそこを学んで雇用しないと。
ちなみにどこまでやれば解雇が認められるんですか。
サーベイをやったり、教育も色々やってみたり、雇った以上はもう手を尽くさなきゃいけない。やりきったと認定されないといけない。
このケースはまだやり切ったとは言えないと。
たとえば部署を変えたり仕事内容を変えたりして、「できることはまだあったんじゃないか」「もうちょっと改善の余地があったんじゃないか」という判断ですね。そういうものだと思って雇用しないといけない。
本人だって、元の職場に戻されても大変だと思いますけど。
最終的にはお金で解決することが多いです。今回のケースがどうなったかは分かりませんけど。
やっぱり最終的にはお金ですか。
「金銭で和解する」パターンが多いです。相手が納得するお金を払って労働契約を解消するという方法ですね。
つまり辞めさせるんだったら「もっとお金を払え」ってことですか。
「もう1回ちゃんと話し合って交渉しなさい」ってことでしょうね。
元の職場に戻って、そのまま働き続けるケースもあるんですか?
なくはないですね。辞めていくケースの方が多いですけど。
そりゃそうですよ。周りからは白い目で見られるし。本人だって居づらい。なぜここまで厳しくする必要があるんですかね。雇用するのが怖くなっちゃいますよ。
なぜこんなに厳しいのかというと日本では終身雇用が前提だから。雇ったら60歳まで面倒を見るというのが前提なんです。それを解雇するってことは、途中ではしごを外すってことで、その人の人生をめちゃくちゃにすることになると。
結婚詐欺みたいなものだと。「どうしてくれるんだ。お嫁に行けなくなるじゃないか」みたいな感じですね。
そういうことです。もう時代に合ってないんですけど。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。