庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第46回 中国で日本庭園を作る理由
前回に続いて、中国での庭づくりについてお聞きしたいと思います。日本から6人で行って、さらに現地で20~30人の人に手伝ってもらったということでしたけど、現地で雇うのも「庭師さん」なんですか?
うーん、それでいうとバラバラでしたね。石を扱える人や植物を扱えるベテランの庭師さんもいれば、ただ掃除するだけのお爺さんもいたり(笑)。
なるほど(笑)。そういう人たちを日本人チームがまとめて進めていたというわけですか。
そうですね。僕や京都でお世話になっていた社長が彼らに指示を出して、滝や池を作ったり、植栽したりしていきました。主要なところは僕が石を吊り上げたりもしましたね。8トンくらいある石もありましたから。
8トンですか! イメージが湧かないくらいの重さですけど、大きさとしてはどのくらいなんですか?
1石でだいたい4メートル×2メートルくらいですね。
ラフターという重機があるんですが、それの800トンまで持ち上げられるタイプのものが現地にありまして。
800トン! じゃあ8トンの石を持ち上げるのは余裕なんですね。とはいえ、石は一つじゃないんでしょう?
へえ〜、ベテランならではの経験が活かされているわけですね。現地スタッフを交えての作業はスムーズに進んだんですか?
ええ。思ったよりスムーズでしたね。中国庭園を作っていた人や石の彫刻ができる人もいてくれましたし。
ふーむ、なるほど。でも彼らは中国人なわけですよね? 日本語は通じないと思うんですけど、作業の指示はどうやって伝えるんですか?
そうでしょうね。というのも、中国の富裕層に日本庭園が人気があるらしいんです。彼らを納得させる本格的なものを作るには、どうしても日本の職人が必要だ、となったらしく。
なるほどなぁ。一方で、最近は「中国は不動産バブルがはじけて家が売れない」なんてニュースも聞きますけど。お話聞いているとそんなこともないんですかね。
確かに景気が一番よかった頃ほどの勢いはないみたいです。作りかけで放置されているマンション群も見かけましたし。でも、僕らが入った現場はまだ順調でしたね。
ふーむ、なるほど。ちなみに、日本庭園を作るということは、マンションの建物も和テイストなんですか?
うーん、いや、既に完成している建物に関しては、現代的というか、よくあるマンションという感じでしたね。
へぇ。でも、普通のマンションと日本庭園ってマッチするんですかね?
外壁にもよると思うんですけど、無機質な感じのようなので、そこまで違和感はなさそうでしたね。というよりも、壮大すぎて全体的なイメージがしにくいと言った方がいいかもしれません(笑)。
そんなに大きいんですね(笑)。まぁでも確かに大型マンションの場合は、「建物のテイストとマッチするか」というよりも、「敷地内の一部が日本庭園になっている」くらいの感覚なのかもしれませんね。
ああ、そういう感じだと思います。そもそも何千坪という広さなので、「全体を眺める」ことがないというか。僕らが作った400~500坪の敷地だけでも、間に山を作ったのもあって、片方で作業していると向こう側で何をやってるかは全然見えない状態で。
ははぁ、そうなんですね。じゃあマンション敷地内の別の場所では、日本庭園とは全く違う、例えばベルサイユ庭園みたいなお庭を作ってる人がいるのかもしれない(笑)。
そうかもしれませんね(笑)。実際、まだ周りが全然できていない中で日本庭園だけ先に作ったような状態なので、ここからどうやってできあがるのか、まったくわからないです(笑)。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。