第32回 今更ですが、「ブランド」って何なんですか?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第32回 今更ですが、「ブランド」って何なんですか?

安田

ブランディングが本業のトゥモローゲートさんですが、「そもそもブランドとはなんぞや」と聞かれた時、どんな風に答えているんですか?


西崎

僕らは「ブランド=約束」と定義してますね。

安田

ほう、ブランドは約束だと。それはどういう意味ですか?


西崎

クライアントに対して、あるいは求職者や社員に対して、何を「約束」するのかということです。「私達は◯◯を約束しますよ」と表明し、それを実践していくことで信頼を得る。この積み重ねが「ブランディング」だと思っていて。

安田

ははぁ、なるほど。つまりロゴやホームページを新しくするだけでは、ブランディングにならないと。確かにそれはそうだなと思うんですけど、一方で、ブランディング会社がいくら頑張っても、その核となる中身がなければ、「約束」もしようがない気がするんですが。


西崎

それを一緒に作っていく、作っていく過程も含めてお手伝いしていく、というのが僕たちの考える「ブランディング事業」なんですよね。だからこそ、ご依頼いただく時点で「中身」があるかどうかは問わないんです。

安田

ああ、そうか。それを見つけるのも自分たちの仕事だと考えているわけですね。うーん、でも私からすると、それって「ブランディング」というより「経営コンサル」なんじゃないの? とも思いますけど。


西崎

ええ、仰る通りで、僕らの仕事の半分は「コンサルティング」です。売上の構成も、半分は「コンサルティングフィー」ですから。

安田

なるほどなるほど。残りの半分がいわゆる制作費になるわけですね。


西崎

そういうことです。実際僕ら、社内制度や人事制度の再設計からガッツリ関わりますからね。いわゆるクリエイティブ、Webサイトとかパンフレットとかっていうのはその後の話で。

安田

ははぁ、なるほど。いきなり外見から作ることはしないと。


西崎

もちろん、既に中身がある、「約束」が明確という会社さんの場合は、クリエイティブ先行で関わる場合もないわけじゃないですけどね。67割のお客さんは、完全に中身からのパターンですね。

安田

なるほどなぁ。ちなみに御社は個人事業主さんとかフリーランスさんの依頼も受けてくれるんですか?


西崎

現状で言うと、個人からの案件はまだないかな。でも、規模が違うだけでやること自体はあまり変わらないかなとも思いますね。

安田

ふむふむ。じゃあ、会社全体じゃなくて商品・サービスのブランディング案件は?


西崎

あ、それはあります。今までは企業ブランディングばかりでしたけど、商品・サービスのブランディングも徐々に増えてきてますね。割合でいうとまだ1015%くらいですが。

安田

付き合う会社さんの規模が大きくなっているからじゃないですかね。会社って大きくなればなるほど全体を変えるのが大変になっていきますから。


西崎

それはありますね。最近もかなり大きな会社さんからご依頼を受けたんですが、それは企業自体のブランディングではなく、Webメディアの企画でした。

安田

へぇ~、そうなんですね。あらためて「ブランド=約束」って話に戻りたいんですが、ぶっちゃけチグハグな会社、多いじゃないですか。採用会社なのにめちゃくちゃ離職率が高い、とか。


西崎

そうですね。採用会社さんに限らず、そういうことで苦しんでらっしゃる会社さんは多いですよね。

安田

例えばそういう会社さんからトゥモローゲートさんが依頼を受けたら、どんな対応をされるんです? 「もっと定着率をアップさせたいんだけど手伝ってくれないか」と言われたら。


西崎

もちろんちゃんとヒアリングをした上でご提案しますけど、おそらく「社内に向けてのブランディングをちゃんとしましょう」って話になると思いますね。

安田

ほう。クライアントさんではなく、社員に向けての「約束」を考えると。


西崎

そうですね。もっとも、インナーブランディングとアウターブランディングって別個に存在しているわけじゃなく、線や面で繋がっているもので。たとえば求職者さんも、アウター向けのWebサイトを見た上で応募したりするわけじゃないですか。

安田

ああ、確かに。Webサイトではすごくいいこと言っているのに、入ってみたら全然違ったとなれば、それは定着率の低下にもつながりますよね。


西崎

そうそう。そういう意味で僕はブランドって「体験からしか生まれない」と思っていて。で、体験っていうのは点ではなく線や面で形成されていくんですよ。一つの点さえよければいいってことじゃない。

安田

なるほど、説得力あります。どういうオフィスで出迎えるのか、どんな接客をしてくれるのか、というのもすべて関係してくると。


西崎

仰るとおりです。ウチの事業が多くの会社さんに評価いただけているのは、そういう側面でブランディングに向き合っているからかな、と思っています。そこの方針はかなり明確なので。

安田

そうでしょうね。今日のお話を聞いて、確かにそこまでやってくれる会社さんはそうないだろうなと思いました。いや、さすがです。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

Twitter

1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから