母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。
第18回 人工ジュエリーの未来予測

アパレルでいうと、ラルフローレンも昔はアメリカで作られているもの以外は安く売られていたりした。でも今は、どこで作られていようが、ラルフローレンタグさえ付いていれば正規のラルフローレン価格で売られているわけです。

確かに、そういう変化もありますね。国民性もあると思いますけれど。アメリカはわりと合理的というか、「同じものであれば安い方がいい」という考え方が主流な気がするんです。それに比べて日本人はもう少し慎重というか。

もちろん人工ダイヤの需要も伸びていくと思います。それに併せて、人工ダイヤの中でも価値の差が生まれていくんじゃないかな。例えば前回も話した「ラボグロウンダイヤ」のような精巧な人工ダイヤと、あまり精巧でない人工ダイヤがあったら、当然前者の方が価格も高くなるわけで。

ははぁ、なるほど。「天然物か人工か」ではなく、「どれだけ精巧な人工ダイヤなのか」という価値基準ができてくるというわけですね。いやぁおもしろい。そういえば前回、天然物か人工かを見分けるには何千万円もする機械を使う必要があるって仰ってましたよね。

うーん、おもしろい話ですねぇ(笑)。業界の方にとっては死活問題なのでしょうけど。とはいえ一方で、やっぱり「ストーリー」って大事だと思うんですよ。ブランド物もストーリーを売りにしてますよね。エルメスのバーキンも、いきなりお店に行っても売ってもらえない。

そうなんですよね(笑)。ともあれ、そもそもなぜバーキンの人気が高いかというと、女優のジェーン・バーキンが愛用していたという物語があるからで。顧客はその物語を買っているともいえるわけじゃないですか。

そうそう。つまりバーキンのストーリーを誰かがマーケティング用のストーリーに仕立てたわけですよ。そう考えるとね、「天然ダイヤが何億年もかかって作られた」という話も、実は誰かが作り上げた物語なのかもしれない。

もっとも、すごくよくできた物語なんですよね。前回「天然のジュエリーには不純物が含まれている」というお話も出てましたが、見方を変えると、「完璧じゃないからこそ価値がある」とも言えるでしょう? 例えばバカラのグラスも今は大量生産ができるようになって、全く同じ形のものが作れるようになっていますけど、昔のほうがよかったと言う人もいる。

むしろ、そういう方のほうが高い感性をお持ちだとも言えますよね。ただ、そういう方はどんどん減っている印象です。実際、マーケットには既に大量の人工ジュエリーが流入していますが、全然問題にもなりませんので。

そうですね。しかも厄介なことに、1つの商品の中に天然物と人工物が混在していたりするんです。1~2ミリ程度の小さなダイヤをメレダイヤというんですが、それらを1つ1つすべて専門の機械で鑑定することはできません。つまり、目視で気付けない以上、確かめようがないんですよ。
対談している二人
望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表
25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。