第66回 マネジメントの最適解

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第66回 マネジメントの最適解

安田

前回は、現場で活躍した人のご褒美を「出世」ではなく「働き方」にするのがベストじゃないかというお話でしたけど、そうなると「誰がマネージャーをやるか」という問題が出てくるんですよね。


渡邉

確かにそうですよね。誰もが出世したがった時代と違って、「役職はいらないから収入だけ増やしてください」とか「在宅リモートできるようにしてください」という人が増えて、マネージャーをやりたい人がいない。

安田

そうそう。それに「現場で仕事ができる人」と「マネージャーができる人」って別ですからね。現場で実績を上げたからといって、考えなしにその人をマネージャーにしてはいけない。


渡邉

そうなんですよね。スポーツの世界では、選手とコーチが別物だというのは当たり前ですし。

安田

そうそう。特にメジャーリーグなんて完全に分かれてますからね。選手としては花開かなかったけど、その分コーチングとかマネジメントを勉強して、マイナーリーグで経験を積んで、1億2億稼ぐようになった監督もいますし。


渡邉

監督としてのスペシャリストですよね。そもそも必要な能力がそれぞれ違うわけで。

安田

そうなんですよ。「マネジメント」というスペシャリティを持ってる人がマネージャーをやるべきなんです。「その人がマネージャーをやると部下のパフォーマンスが1.5倍になる」とか。


渡邉

そうですね。部下のやる気が出て会社へのロイヤリティも上がって、ストレスも減る。結果として定着率も上がる。それこそがマネジメントですもんね。

安田

マネージャーの仕事って、自分が過去にどうやってきたかを教えることじゃないんですよね。1人1人に合わせて「この人はどういう働き方が一番心地いいのか」「どういう目標設定をするとやる気が出るのか」を考えなくてはいけない。


渡邉

確かに。そう考えると、そもそも「部下」という発想自体がもう古いのかもしれませんね。チーム全体のパフォーマンスを上げるためのメンバーというか。

安田

うんうん。「チームメンバー」という感覚で対等に考えられるかどうかが大事ですね。


渡邉

とはいえ、日本ではなかなか馴染みのない感覚ですよね。特に古い年代の人は理解できるかなぁ…。

安田

まぁ、昔は「上司の言うことが絶対」でしたからね。上司に言われたら「ハイ」か「イエス」しか答えちゃいけないみたいな(笑)。

渡邉

そんな空気ありましたね(笑)。その代わり、「自分もあそこまで行けば好き勝手生きていけるぞ!」という希望もありましたけど。

安田

皆がそこを目指して振り落とされないように頑張ってましたね。今ではそんな組織形態は崩壊してますけど。


渡邉

とはいえ、まだその感覚が残っているんでしょうね。そういう意味でも、日本は遅れているのかもしれない。

安田

そうですね。海外では現場はあくまで現場であって、そこでのスペシャリストになることを求められるわけです。だからマネージャーはマネジメントのスペシャリストを外部から連れてくる。


渡邉

ちゃんとマネジメントの勉強をした人がマネージャーになるわけですよね。その結果、チームのパフォーマンスが上がれば、マネージャーとしての評価が上がる。それに見合う給料じゃなかったら別の会社に行くだけで。

安田

そうそう。だからもうマネージャーは自社で育てるものではないと思った方がいい気がします。外部からスペシャリストを連れてきた方が圧倒的に効率がいいので。


渡邉

確かに。とはいえ、いくらマネジメントのスペシャリストでも、業務のことがわからなかったら誰も言うことを聞いてくれません。そういう意味では専門的な知識も必要でしょうけどね。

安田

それはもちろんそうですね。でも1から10まで自分でできる必要はないというか。


渡邉

ああ、確かに。野球のコーチが野球理論を知らなかったらダメだけど、自分が打てたり守れたりする必要はないと。

安田

ええ、そういうことです。現場でやってきた人って、現場での実績はあるけど、そのやり方しか知らないわけです。10人メンバーがいて10通りの成果の出し方を考えないといけないとなると、できない人の方が多い。

渡邉

10通りの成果の出し方を考えられる人がマネジメントのスペシャリストですもんね。現場を経験した人にしか教えられないこともあるでしょうから、それはそれで分けて考えて。

安田

「仕事を教える」のと「マネジメントをする」のを分けるような感覚ですよね。監督とコーチのような位置づけで。

渡邉

ああ、まさにそうですね。プロには走塁だけの専門のコーチがいたりしますもんね。そして全体のパフォーマンスを上げるのは監督の仕事だと。

安田

そうそう。例えば鍼灸院で働く人って、「患者さんを治療して元気にしたい!」というところにやりがいを持っている人が多いんです。でもある程度大きなところに就職すると、出世して店長にさせられてしまって、治療から離されてしまったりする。そうするとモチベーションが下がって、ストレスを抱えてしまうわけです。

渡邉

うーん、確かに。出世することで、やりたかった仕事からむしろ離れてしまうわけですもんね。

安田

ええ。実際に話を聞くと、鍼灸の技術を教えることは一切ストレスじゃないらしいんです。でもメンバーのモチベーションが下がった時のケアとか、会社への不満や仕事の悩みを解決しなきゃいけないことが相当なストレスだと。

渡邉

ああ、ただ鍼灸をやりたくてこの仕事をやってるのに、なぜ部下の面倒ばかりみないといけないんだと。

安田

そうそう。そこを分けないといけないんです。マネジメントのスペシャリストが別にいて、鍼灸は鍼灸のスペシャリストが教える。人不足で悲鳴をあげている会社こそ、まずはマネジメントから変えていった方がいいと思います。

渡邉

確かにそうですね。大企業が組織を変えようとすると大事ですけど、中小企業なら社長の一声で変えていけるわけですもんね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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