第53回 お庭の使い勝手が暮らしに与える影響

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第53回 お庭の使い勝手が暮らしに与える影響

安田

direct nagomiさんのお庭づくりでは、「家の雰囲気と合っていること」「住んでる人がリラックスできること」の他に、「使い勝手がいいこと」も重視されていますよね。


中島

そうですね。快適に過ごしていただくためには、使い勝手は重要なポイントだと思いますので。

安田

確かにそうですよね。ちなみに家の場合、動線がスムーズだったり収納量が多かったりするのを「使い勝手がいい」と言うイメージです。これが庭になると、どういう部分が挙げられますか?


中島

例えば「駐車場からの出し入れにストレスがないか」というように、庭も動線はすごく大事ですね。庭との間の壁が高すぎると、道路に出にくくなってしまう。そういう不便さがないように心がけますね。

安田

なるほど。お庭から車が丸見えにならないよう壁を作るんだけど、それがあまりに高すぎると、車で出るときの見通しが悪くなってしまうわけですね。


中島

そういうことです。あるいはリビングから続くテラスがある場合に、人や車の通りが多い道路に面していないかどうか、なども考えます。せっかくテラスを作ったのに、あまりに車通りが激しいと、騒音でリラックスできないんです。だから庭を作る際に壁を作って、音や振動を遮るようにすることもありますね。

安田

ははぁ、なるほど。家を建てる前なら位置を調整することもできるでしょうけど、既に建物がある場合は動かしようがないから、庭づくりの工程で調整してあげるんですね。


中島

そういうことです。あとは目の前の通りからの視線をきちんと遮断できているか、ですよね。これが考えられていないと、常に外からの視線を気にしながら生活しないといけなくなります。

安田

ああ、確かに。庭でのんびり過ごしてる時に、その辺を歩いている人と目が合ったら気が休まらないですもんね(笑)。


中島

そうなんです(笑)。意外と見落としがちなのが車からの視線で。歩く人に比べて低い位置にあるので、それはそれで別の遮蔽物を置く必要があったりして。

安田

ははぁ、なるほど。住人の方も気づかないところまで、しっかり考えてもらえるんですね。


中島

今までたくさんのお庭づくりをしてきて、そういうノウハウは溜まっているので。特に外からどれくらい見えるかというのは、プライバシーの保護だけじゃなく、防犯上の問題にもなり得ますからね。

安田

確かに確かに。ちなみに外からの視線を隠すにはどうするんですか? 壁を作ってしまう感じですか。


中島

そういう場合もありますが、できるだけ木を植えて目隠しをしますね。ただ、大きく育ちすぎる木を植えてしまうと、成長した時に今度は邪魔になってしまうんです。ですから、どのくらいの大きさまで育つかも考えて樹種を選びます。

安田

なるほどなぁ。むしろ成長しすぎたら、葉が茂っている位置が上に上がってしまって、目隠しにもならないかもしれない(笑)。とはいえ、すごく大きな窓のある家だと、それ以上に大きな木じゃないと隠れませんよね。そういう場合はどうするんです?


中島

その場合は成長の遅い木で、すでに大きくなっているものを植えますね。これからどんどん成長する木は使いません。植えた後の手入れも含めて選びますので、興味がある方はぜひ聞いてもらえればと。

安田

ははぁ、なるほど。ちなみに私自身が考える「お庭の使い勝手」というと、家の中からお庭につながる動線とか、水はけのよさなどのイメージだったんです。でもそれだけじゃなく、外からの視線を適度に遮られているか、騒音の問題はないかなど、いろいろな観点があるんですね。


中島

そうですね。そこには時代の変化も関係してきます。たとえば土地がたくさんあった昔は、庭に出て散歩しながらゆったりくつろぐ、みたいな楽しみ方をする人も多かった。でも今は、そんなに大きな庭はなかなか持てません。つまり現実的に、庭は「家の中から眺めて楽しむもの」になってきているんですよね。

安田

そうか。それに最近は駐車場側、つまり家の表面に庭を作ることも増えてますもんね。昔は建物があって、その裏に庭がある家も多かったですけど。

中島

そうそう。そういう意味でもなかなか「庭に出て楽しむ」という機会が減ってきているんです。完全なプライベートな空間ではなくなってきているというか。

安田

確かに家や庭の様子は大きく変わりましたね。昔は庭でバーベキューを楽しむ人も多かったですけど、最近はあまり聞かないし。

中島

そうですねぇ。散歩やバーベキューを楽しむとなると最低でも30〜50坪くらいの庭が必要になってきますから、なかなか大変です。余談ながら、そういう広いお庭を手掛ける場合、お庭全体が見渡せるデザインではなく、少し見えない部分を作ったりします。その方が奥行き感を出せるので。

安田

へぇ、そうなんですね。でも確かに、テラスなんかでお茶を飲みながらお庭を眺める時も、見えない部分があった方が広さを感じられそうです。

中島

仰るとおりです。そこまでの広さがない場合も、周りの目や音を考慮することで使い勝手はよくなると思います。

安田

なるほど。「使い勝手のいい庭」があると、家の中にいる時の快適さも増すわけですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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