第286回 不機嫌な上司の行く末

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第286回「不機嫌な上司の行く末」


安田

フキハラなるものを初めて知ったんですが。社労士さんにはもう常識なんですか?

久野

不機嫌ハラスメントですよね。知ってますけど、まあ最近じゃないですか。今は何でもかんでもハラスメントですから。

安田

ため息ついただけでハラスメントらしいですね。

久野

そこは判断が難しいところです。

安田

OKな不機嫌とNGな不機嫌というのがあるらしくて。ため息が相手に聞こえたらNGだそうです。聞こえなければオッケーっていう。

久野

不機嫌な人と働きたくないっていうのは昔からある話で。ただハラスメントの定義としては難しいですよ。判断するのが。

安田

私も不機嫌な人は苦手です。朝から機嫌が悪かったり、いつもピリピリしていたり。これ見よがしに大きなため息つく人も苦手です。

久野

そうですね。でもこういう人ってなかなか直らなくて。自分でビジネス書を読んで気づくしかないと思います。

安田

その人のせいで辞める人も出てきますよ。

久野

そういう人を管理職に置くのはもうアウトってことじゃないですか。

安田

でも実際にいますよね。不機嫌な人って。

久野

いますいます。でも直らないですね。

安田

直りませんか。

久野

直らない。だから管理職から外すしかない。

安田

つまり「いかにも不機嫌な人」はもう出世できなくなってるってことですか。

久野

一昔前は仕事ができればオッケーだったんですけど。部下が辞めなかったので。

安田

今はあっさり辞めていきますからね。

久野

はい。ため息ひとつで辞めちゃう。だって仕事なんていくらでもありますもん。今より快適に働けて今より給与が高いところに行っちゃいます。

安田

上司の人間性が問われる時代ですね。

久野

上司の態度と、給料と、社会性ですね。要は社会貢献してるかどうか。この3つじゃないですか。

安田

同僚との人間関係はどうですか?同僚でも不機嫌そうに働く人って嫌じゃないですか。

久野

実害があるのは上司ですね。同僚まで言ったらどこの会社にもいますから。

安田

なるほど。鉛筆でコンコン机を叩きながら嫌味を言う上司とか。もうダメだと。

久野

そんなの時代遅れも甚だしい。片手で書類を持ってパチンとやるとか。もうあり得ないですよ。

安田

だから管理職研修が盛んなんですかね。こういうのはダメですと教えて。それでも改善が見られない人は管理職から外していくっていう。

久野

そうしないともう無理だなってみんな思ってるんじゃないですか。ただ中小企業はなかなか代えが利かないから。

安田

そもそも人がいませんからね。ちなみに労働法的にはOKなんですか?不機嫌を理由に管理職から外すというのは。

久野

これは労働法と人事権の話になりまして。労働法に関しては就業規則上に「配置転換があります」と書いておけばいい話。

安田

配置転換はオッケーなんですね。でも管理職じゃなくなったら給料も下がるじゃないですか。これはOKなんですか。

久野

それは人事の話で。基本的には人事権の中で給料は別問題です。役職が変更になるというのは何の問題もないけど、給料が大きく下がることに関しては労働法上の問題がある。

安田

でも管理職じゃないのに管理職の給料は払えないですよね。

久野

ちゃんと合理性があって「仕事が変わりました。それだけの責任がなくなりました。減らします」というのは別に問題ない。

安田

これから上司はかなり部下に気を遣わないといけませんね。今までは管理職が強かったイメージですけど。逆転してるのかも。

久野

逆転してます。今はちょっと過剰ですね。だから管理職が割に合わなくなってきてる。

安田

「管理職になった」という理由で辞める人もいますもんね。

久野

20代、30代の転職はうまくいくので辞めちゃう人が多いですね。

安田

なるほど。

久野

だけど40代になると際どいラインで。どこに行っても通用する人って全体の1〜2割ぐらいしかいない。

安田

それ以外の人は我慢するしかないと。

久野

そうですね。若い人の価値観に向き合って管理職を全うしていかざるを得ない。そこにめちゃくちゃ悩んでる人は多いです。

安田

若い子の機嫌を損ねないようなマネージャーしか生き残っていけないんでしょうか。

久野

そうですね。だけど業績を上げる責任は負わされているので。めちゃくちゃ苦しい。会社のシステム自体を変えないともうマネジメントが成立しないと思います。

安田

AIで管理するとか。もう人間の上司はいなくなるかもしれませんね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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