第28回 「人生の意味」と「ジュエリーの大切価値」の共通点

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第28回 「人生の意味」と「ジュエリーの大切価値」の共通点

安田

最近TikTokで、お坊さんが「人生の意味とは何か」を語る動画が流れてきたんです。その内容が望月さんの仰る「ジュエリーの大切価値」のお話に似ていて。


望月

へぇ、それはちょっと気になりますね。

安田

そのお坊さんは「人は何のために生きてるんですか」と聞かれたときに、「娘が買ってくれた万年筆」の話をするそうなんです。赤の他人からすると、ただの万年筆。でも親にとっては、自分のことを想って一生懸命選んでくれた特別な万年筆なんだと。


望月

それは確かにそうですね。関係性によって感じ方は変わりますからね。

安田

誰の物でもない万年筆はただの物体です。それを仏教用語で「空(くう)」という。で、その「空」の状態のものに意味を付けていくのは自分自身だ、という話で。


望月

ふーむ、なるほど。つまり、そのものに込める意味は自分で作っていくしかないと。

安田

仰るとおりです。万年筆を「大事なものだ」と思えるような意味が付けられれば大事なものになる。人生も同じで、「素敵なものだ」と思えるような意味付けができるかどうかだと。


望月

素晴らしいお話だなぁ。自分の身の回りの物にも意味を見出すことで、さらに価値が高まるわけですね。

安田

ええ、まさに。以前、1,000円くらいのアクセサリーを3,000円かけて修理したお話がありましたよね。私あのお話が大好きで。


望月

ああ、はい。私の中でも印象深いエピソードです。

安田

お客さんにしても望月さんにしても、損得だけで考えていない感じがすごく素敵だなと。お客さんがアクセサリーに付けていた意味=大切価値を望月さんも汲み取ったからこそ、なし得たことなんだろうなと。


望月

損得だけで考えれば、「やらない方がいい」ってケースも実際あります。でもお客様は助けを求めてお店に来られているわけで、できる限りの対応をしたいという想いが根本にあるんです。

安田

お客さんとしては、Refineさんに一縷の望みをかけて来ているわけですもんね。


望月

ええ。だから僕らとしては、なんとか期待に答えたいと思いますし、仮に専門外のご依頼であっても、単に他の修理店を紹介するのではなく、できるところまでやらせていただくようにしているんです。困った時に頼ってもらえる存在でありたいと思うので。

安田

いや素晴らしい。そういうスタンスだからこそ、多くのお客さんに喜んでもらえるんでしょうね。


望月

ありがとうございます。僕らとしてはそれが当たり前になっているんですが、ふと「こんな提案、他の店じゃ絶対やらないだろうな」と思うこともありますよ(笑)。

安田

笑。そういう積み重ねがリピートにもつながっているんでしょうね。きっとRefineさんなら「娘にもらった万年筆」も修理してくれる気がします(笑)。


望月

どこまでできるかわかりませんが、そういうお話を聞いてしまったら、できる限りのことはさせていただくでしょうね(笑)。

安田

ですよね。ただそれが万年筆だと、修理しながら大切に使ったとしても親子3代4代とは使えないと思うんです。でもジュエリーなら、リフォームして代々受け継いでいくことができる。そう考えるとジュエリーってやっぱり特別な存在だと感じますよね。

望月

ええ、本当に。先日もご自分の婚約指輪を持ってきて「息子が自分のお嫁さんに送る指輪にしてあげたい」というお客様がいらっしゃって。

安田

ほう、それは素敵ですねぇ。

望月

そうでしょう? そのお母様の気持ちはもちろん、それを快く受け入れる息子さんやその奥様も素敵だなぁと。

安田

そういうストーリーは大切にしたいですよねぇ。そういえばアンティークの世界でも「誰が所有していたか」によって価値が変わるらしいんです。例えば200年前のティーカップも、「何年から何年までの間は誰々が所有してました」というエピソード込みで価値になる。

望月

へぇ、そうなんですか。そういう意味では、宝石にもそういうストーリーをつけておく方がいいのかもしれませんね。そのストーリーも一緒に受け継がれていったら素敵だなぁ。

安田

おお〜それはいいですね。それが100年続けば本物のアンティークですよ。

望月

確かに。今も納品時にビフォーアフターのお写真を添えていて、すごく喜ばれているんですが、さらにストーリーもお付けするといいかもしれません。

安田

ご家族にとってより一層特別なものになるでしょうね。お店としても記録が残っていれば、100年200年と続いた時にすごく価値を持ってくる気がします。

望月

仰るとおりですね。誰が作って誰が所有して、どういう経緯でこうなったのか、そういう情報があればあるほど「大切価値」は高まりますから。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

Facebook

25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから