大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。
第21回 新規出店を続けるのは、新卒初任給30万円にするため
『電材買取センター埼玉蓮田店』を9月にオープンされて、ついに本格的な首都圏進出がスタートしましたね。藤村さんとしては 「目指せ、全国100店舗!」くらいに考えてるんですか?
ないない、そんなもん、全くないです(笑)。数年以内に黒字化しそうだなと思うエリアに粛々と出店していっているだけなので。正直なところ、店舗数には全くこだわってないですね。
へぇ、そうなんですか。そういう野望がないとすると、新店舗出店の目的はどこにあるんです? スタッフさんの働く場所を増やしたいとか?
僕ね、とにかく社員の給料をアップさせたいって考えていまして。そのための出店です。給与をアップするには会社として増収増益をしていかないといけませんから。
ふーむ…。でも藤村さんの会社って、今でも十分好調なんじゃないですか?
現状は確かにそうなんですが、実は来年に減収減益になっちゃいそうなシミュレーションが出てまして。
え、そうなんですか? それはまたどうして?
まず去年の12月から今年の2月頃、世界的に電線が手に入りにくい状況になったんですね。その結果倍の金額でも売れるようになって、ウチもその「特需」のおかげで売上で8億円、利益も1億円ほど伸びたんです。
ああ、その「特需」が来年には収まるから、減収減益になるということですね。でもそれって、プラスのものがゼロに戻るだけなんですから、不調による減収減益とはまた別な気がしますけど。
いやぁ、そうも言ってられません。やっぱり会社としては減収減益の中で社員の給与をアップはさせられませんから。だからどういう状況でも、やっぱり増収増益をしていく必要がある。新店舗をやるのもそういう理由です。
つまり出店そのものが目的というより、「社員の給料を上げるため」に店舗数を増やすんだと。
そうですそうです。銀行も「減収減益なのに給料上げるんですか? それ、本当に大丈夫ですか?」なんて言ってくるんでね。それに僕の中で、「新卒の初任給を早く30万円までもっていきたい」という思いもあるんですよ。
30万円ですか! それはなかなかの額ですね。ちなみに今はどれくらいなんですか?
今は25万円3000円~27万3000円なので、もう一声ですね。あと2年もあれば、プラス3万円くらいはいけるんやないかな〜と踏んでいるんですけど。
ははぁ…相変わらずすごいですね。でも、そこまでして給料アップさせたい理由ってなんなんですか?
それはやっぱり、給料が高ければ、ウチの会社で働きたいという人がたくさん集まってくれるからですね。それに既存の社員も、給料面に満足していれば長く残ってくれる。それは結果的に僕にとっても会社にとってもプラスになるだろうと。
なるほどなぁ。でも新卒初任給30万円をキッチリ回収するのって大変ですよ。それでもチャレンジするんですか?
ええ、もちろん。僕はずっと社員に「会社の利益は三等分にして未来投資、内部留保、社員の給料にする」って言っていて。そしてその中でもまず「給料」の部分を上げていくことにしました。
確かに今は社会保険料やら税金やらがどんどん上がり、物価もどんどん上がっていますからね。これで給料が上がらなかったら皆生活していけない。
仰るとおりです。かといって、会社は借金だらけで財務体質もよくないのに、給料だけバンバン上げるわけにはいかないじゃないですか。
そうですね。私も経験ありますが、それはやめた方がいいですね(笑)。
それだったら社員に還元したほうがいいだろう、と。
そういうことです。…まぁ、本音を言えば、新規出店って大きなリスクなので、できればやりたくないんですけど(笑)。まぁでも、そうしなければ社員の給与が上げられないなら、腹をくくってやるしかないな、と。
いやぁ素晴らしいなぁ。藤村さんって、どこまでも社員想いな社長さんですね!
対談している二人
藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役
1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。