大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。
第27回 「お金だけ」で解決してはいけないこと
以前、ご家族で行った遊園地での出来事をお話してくださいましたよね。
ああ、ありましたね。僕は財力で家族の気を引いていたんだけど、お金を持ってなさそうな別の家族の方がずっと幸せそうに見えた、という話ですね。
そうですそうです。藤村さんはその家族に「負けた」って思ったんですよね。そのエピソードがすごく印象的で。普通お金を持ったらそういう感覚ってだんだん薄れちゃうと思うんですが、藤村さんは違ったんだなぁと。
うーん、自分ではよくわからないです。ただ本当に「負けた」と思っただけで(笑)。
「お金は大事だ」と言いつつ、「お金で解決できないこともある」ということをちゃんと理解されているんだろうと。そういう自覚はないですか?
そうですねぇ。「お金で解決しちゃいけないこと」っていうのはあると思いますけどね。
ああ、なるほど面白い。じゃあ例えば、お客さんに何か迷惑をかけてしまったとして、「お金を持って謝罪に行く」というのはどうです? 藤村さんとして、これはアリですか?
うーん…難しいなぁ。「迷惑料」という意味を込めたお金なんでしょうけど、人によっては「金で解決しようとするんか!」と怒ってしまう場合もありそうですし。もちろんお詫びの気持ちは何らかで示す必要はあると思いますが、必ずしも「お金」である必要はないのかなと。気持ちが伝わるなら、洗剤でも商品券でも別にいいと思いますね。
なるほどなるほど。でもやっぱり何らかの「物」はお渡しした方がいいんですかね。
そうですねぇ。例えばね、喫茶店で店員さんに水をかけられちゃったとしますよね。もちろん相手はわざとではないし、ちゃんと謝ってくれたと。で、帰ろうと思ったらレジで「コーヒー500円です」と普通に言われた。…どうです? 別に間違っているわけじゃないんですが、ちょっとモヤモヤするじゃないですか。
ああ、確かに確かに(笑)。
でしょ? でも会計時に「今日は申し訳ありませんでした。よかったらこちら、次回使えるコーヒー無料券です」なんて言われたら、スーッとするじゃないですか。「よっしゃ、また来たろ」と思っちゃう。
ああ〜なるほど。確かに誠意が伝わりますもんね。でもなぜ「コーヒー無料券」なんですか? 汚してしまった洋服のための「クリーニング代」を渡すのではダメなんでしょうか?
それでもいいのかもしれませんが、クリーニング代だと次回に繋がらないでしょう?
ああ! 確かに。なるほどなぁ。
そういう意味でも、お詫びの気持ちや言葉だけではなくて、何かしらの「形」をお渡しするのがいいように思いますね。どういう形をお渡しするのがベストか考えて、できればまた来店いただけるような着地にしたい。…ちなみにこれは、僕がヤマダデンキさんのお仕事をしている中で考えたことなんですけどね。
ほう。と言いますと?
エアコンや冷蔵庫の搬入をする時、やっぱり1番大きなクレームに繋がるのが、床や壁を傷をつけちゃうことで。お客さんによっては尋常じゃないくらいに怒り狂って「慰謝料出せ!」「家、全部建て直せ!」くらいのことまで言うんですよ。
あぁ…新築だったりすると、お客さんの怒りもさらに倍増しそうです…。想像するだけでも怖いですね(笑)。
でしょ?(笑) そこでひたすら「申し訳ございませんでした」と謝罪していても、相手の気持ちが収まることはないと気付いた。じゃあどうすればいいかと試行錯誤して気付いたのが、今話していた「形」をお渡しするというもので。
具体的にはどうするんです?
まずはもちろん修理ですよね。傷つけたところはキッチリ直す。そのうえで、「これでご家族でお食事でもしていただけませんか」と商品券3万円をお渡しするんですよ。するとそれ以上のクレームはパタッとなくなります。
え〜、そんなにうまくいきますか? 「もっと金をよこせ!」って言う人、いるんじゃないですか?(笑)
これが驚くことに、いないんですよ。これまで30年ほどヤマダデンキさんのお仕事してますけど、これでダメだった人は1人もいません。
ははぁ〜すごいなぁ。そうやって実体験を通じて生み出したやり方なんですね(笑)。
仰るとおりです(笑)。もっとも、「とにかく物を渡しておけばいいんだ」ということではまったくなくて。謝罪の気持ちをしっかり持って対応するのが大前提で、「言葉だけで終わらせるわけではないですよ」ということを「形」で表現するのが重要なんです。
う〜む、なるほど。さすが現場を長く経験してきただけはありますね。勉強になりました!
対談している二人
藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役
1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。