第84回 ストレスを感じない生活は、実現できるのか?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第84回 ストレスを感じない生活は、実現できるのか?

安田
私、ストレスがかかるような生活はできるだけしないようにしているんです。たぶん多くの人が一番ストレスを感じるであろう仕事においても、やりたくない仕事はやらないようにしていますし。

久保
以前の対談でも「ストレスはない」って豪語されていましたもんね(笑)。
安田
ええ(笑)。とはいえ、子育てをしていると小さなストレスは感じてしまうわけですよ。例えば夜中に子どもに蹴られて起こされたりとか(笑)。

久保
笑。確かに子育ては思い通りにならない場面も多そうです。
安田
そうなんですよ。多くの人はそうやってたくさんのストレスを抱えながら生きている。でも昔と比べたら、今の生活って遥かに便利になっているじゃないですか。それなのになぜ現代人には、これほどまでにもストレスが溜まっているんだと思いますか?

久保
そうだなぁ。変なことを言うようですが、便利になっているからこそストレスが増えたんじゃないでしょうか。
安田
ん? 便利になったこと自体が原因ってことですか?

久保
ええ。これは仏教を学ぶようになってから思うようになったんですが、例えばストレスを「苦」、便利になったことを「楽」としましょうか。安田さんにとって「苦」はどういう時に感じますか?
安田
そうだなぁ…「嫌なことを我慢する時」ですかね。

久保
ふむふむ。私は「思い通りにならない時」が「苦」だと思っているんです。「自分はこれをやりたいのに、できない」という状態。
安田
寝たいのに子どもに蹴られて寝られない、という状態ですね(笑)。

久保
そうそう(笑)。じゃあ「楽」はどういうことかというと「自分の思い通りになる時」だと思うんです。そういう状態であれば、楽しいし、楽ですよね?
安田
なるほど。自分の思い通りになるかどうかで、ストレスの感じ方が変わってくるというわけですね。それでいくと、昔と比べて今はかなり「思い通り」にいくことが増えているじゃないですか。例えば移動手段。昔は「自分は歩きたくないのに、歩くしかなかった」けど、今は「電車や車があるから歩かなくてもすむ」わけで。

久保
そうですね。東京大阪間も、昔だったら何日もかけてひたすら一歩ずつ歩いていくしかなかったですけど、今は新幹線に2時間座っているだけで到着しちゃいますもんね。
安田
そうそう。めちゃくちゃ便利になったし、座っているだけなんだから「苦しい=ストレス」も感じない気がするんですけど。

久保
でも今の世の中って、新幹線が10分遅れただけで、ものすごいクレームが起きたりするじゃないですか。
安田
あぁ、確かに。些細なことでイライラする人が増えた気がします。

久保
ええ。徒歩だった時代は、たかだか10分の遅れぐらいでストレスに感じる人はいなかったはずで。
安田
確かに確かに。待ち合わせも同じですよね。携帯電話ができて、いつでもどこでも連絡が取れるようになった反面、連絡なしで遅れてこられると、それがたった数分のことでもイライラしちゃう(笑)。

久保
ですよね(笑)。携帯電話がなかった頃には、10分15分の遅刻なんて許容範囲だったでしょう? そうやって昔なら我慢できたことに対して、現代人はどんどん耐性がなくなっているような気がしますね。
安田
なるほどなぁ。たしかにそう言われると、「便利になったことがストレスの原因」という話もわかる気がします。

久保
それに、1つのストレスがなくなったら、また次のストレスが出てくるんですよ。例えば昔はギューギューの満員電車で通勤していたのが、テレワークで仕事ができるようになれば「満員電車のストレス」はなくなりますよね?
安田
ええ。それ自体はいいことだと思うんですけど、違うんですか?

久保
でも今度は「家にずっといなきゃいけないのが苦痛」ってストレスが生まれたりするんです。他の社員と顔を合わせながら仕事する方が楽しいと感じる人もいるじゃないですか。そういう人たちにとってテレワークは新たな「ストレス」になると思いません?
安田
う〜む、確かに。「思い通り」にするためにいろんな技術を開発して便利にするんだけれど、そうするとまた新たな「思い通りにならないこと」が出てきて苦しくなる。堂々巡りじゃないですか。ここから抜け出すにはどうしたらいいんでしょうね…。

久保
お釈迦様が言うには「思い通りにならないことを諦めなさい」と。そうやって思い通りにしようとすることを諦めれば「苦」がなくなります。と、同時に「楽」もなくなるんです。
安田
…ん? 「楽」もなくなってしまったら困りませんか。

久保
でもこれが仏教の教えなんです。実践するのはなかなか難しい(笑)。一般的なストレス対策って、「苦しいことはなるべくなくして、楽しいことだけやる」ということですよね? でも「楽」を感じられるということは「苦」を知っているからこそだとも言えるのかなと思っていて。
安田
ああ〜、確かにそれはそうなんですよね。そうか、そう思うと「苦」もある程度は経験しないといけないのか。

久保
だからこそ人生は簡単じゃないわけで(笑)。ということで、「思い通りにならないことを諦める」と心に留めながら、いい塩梅で生きていければいいのかなと思います。
安田
わかりました。私もちょっと修行し直してみたいと思います(笑)。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

Twitter  Facebook

仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから