住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。
第87回 未来のビジネスは「掛け算」からしか生まれない
「人工(にんく)商売」というか、人件費に利益を乗せて売るようなビジネスって、ITや建築の業界でよく見られましたけど、もう崩壊しつつあると思うんです。
確かに。IT業界なんて優秀な技術者が高年収で引っ張りだこですし、昔ながらの「一人工いくら」的な発想はもう終わっていくと思いますね。
私はそれを「足し算ビジネス」って呼んでいるんですけどね。これからは、足し算じゃなく掛け算で価値が膨らむ「掛け算ビジネス」でしか人を雇えないんじゃないかと。
なるほど、わかりやすい。ただそうなると、組織の作り方自体を根底から変えないといけないですよね。昔の増産前提の発想じゃ、もう通用しない。
そうですね。どんどん人口が増えていた頃は、逆に物の方が不足してましたからね。それこそ「人口増加ボーナス」とでも言えるような時期は、物を作れば作るだけ売れていたので、単純に足し算すればよかった。
確かに。今もまだ「足し算ビジネス」をやっている人は、その頃の感覚が抜け切ってないんでしょうね。とはいえ急に「掛け算で価値を増やせ」と言われても、なかなか難しいと言うか。
まずは仕組みを作ることでしょうね。例えばディズニーのパレードだって、一人ひとりのダンサーが高い付加価値を生み出してますけど、それぞれが仕組みを考えているわけじゃないですよね。
なるほど。仕組みを作れるような優秀な人材が大勢必要なわけじゃないんですね。つまり仕組みをつくる人は少数でも構わない。でもそれって、アメリカの格差社会のように格差が生まれてしまいませんか?
格差は生まれるでしょうね。でも格差って必ずしも悪いものではないんですよ。例えば飛行機はファーストクラスの乗客が高いお金を払ってくれているおかげで、大勢の人がエコノミークラスの料金で乗れるわけです。そういういい側面もある。
ああ、そうか。ファーストクラスがなくて、すべて同じ料金だったら、今の5倍くらいになるって言われてますもんね。ということは、格差があるからこそ得られるものもあると。
ええ。それと同じように、いい仕組みを作ってめちゃくちゃ稼ぐ人がいるから、年収400万円くらいの人が、1000万円を目指せるようになるんです。
なるほど、確かになぁ。仮にそういう方法を使うとして、安田さんは日本の平均的な労働者に年収1000万円を目指せるポテンシャルがあると考えていますか?
全然あると思いますよ。それが実現していないのは、よく政治の問題と捉えられがちですけど、私はそれよりも経営者に問題がある気がしますね。
ほう、というと?
とにもかくにも真面目すぎるんですよ。日本の経営者って、コツコツと努力して、少しでも今よりクオリティを上げようとする。もちろんそれ自体が悪いわけじゃないんですけどね。
ああ、なるほど。それだけだと限界があるってことですよね。
そうなんです。本当は「どうやったら簡単に、効率よく今の10倍、100倍儲けられるか」を考えるべきなんです。効率化を目指して仕組みを変えるのがポイントですね。
つまり、努力の方向性を見直して、もっと効率的に価値を出す仕組みを作るべきだと。
そういうことです。「手を抜く」というのは、単にサボるんじゃなくて、ムダを省いて少ない努力で最大の成果を上げるということです。掛け算ビジネスはその発想が不可欠ですね。
ああ~、なるほど。 それでいうと、気づかないうちに「足し算のビジネス」をやってしまっている経営者、多いかもしれませんね。
そうそう。朝8時に出勤して利益が出ないなら、さらに早めて7時に出勤しよう、とかね(笑)。
ああ、そりゃ日本でiPhoneのような革命的なヒット商品が生まれないわけだ(笑)。
それでいうと、生み出せる人自体はいると思いますよ。ただそういう人が活かされない構造が問題なのであって。優秀な人が新しいアイデアを持っていても、古い体制や慣習が邪魔をして、そのアイデアが形になる前に潰されてしまうんです。
確かに。でも最近は少しずつ風向きが変わってきた感じもしますよね。兵庫県知事選の時の立花さんなんて、業界のタブーなんて全く気にしないという感じで、すごかったですもんね(笑)。
確かに確かに。人から嫌われたり、社会的な評価が下がることを100%受け入れられたら、人ってあそこまでできるんだ…と感動すら覚えました(笑)。堀江さんもどちらかというとそんな感じですよね。これからもっとそういう人が増えていくといいんでしょうけど。
本当ですね。とはいえ、まだまだ「労働が美徳」というような感覚が根強いですよね。見積もり一つとってもそう感じます。
「原価がこれだけかかっておりますので、これだけの利益はお許しください」という(笑)。
そうそう(笑)。「お許しくださいビジネス」というか。それじゃ大きな儲けにはつながらないだろうなと。本当に儲けている経営者ってもっと、「お金儲けはちょろい」ってどこかで思ってる気がしますね。
そうですよ。経営なんて、所詮「お金儲けのゲーム」ですから。それくらい不真面目でいいんです。
本当にそうなんでしょうね。ただ僕自身は、どちらかというと真面目なタイプなので、不真面目にやる方が難しく感じてしまいます(笑)。
対談している二人
渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役
1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。