第277回「ムードで払う2兆円?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第276回「大企業社員の転職事情」

 第277回「ムードで払う2兆円?」 


安田

東芝がついに上場廃止になって、74年の歴史に幕を下ろすみたいです。

石塚

遡るとウエスチングハウス買収が原因なんです。2008年に原発製造会社を6000億で買ったわけですよ、東芝が。

安田

そうでしたね。

石塚

ところが東日本震災で世界中の原発の建設がストップして。ウエスチングハウスの買収で債務超過になってしまった。なぜあそこで政府が手を差し伸べなかったのか。

安田

手を差し伸べるべきでしたか?

石塚

僕はそう思います。東芝問題って日本の打ち手の悪さをすごく象徴してると思う。

安田

打ち手の悪さですか。

石塚

あそこで支援しなかったからハゲタカファンドが入ってしまった。それを2兆円で買い戻すわけですよ。

安田

結局、高くついてしまったと。

石塚

おっしゃる通り。東芝が6000億円で買ったウエスチングハウスをいくらでファンドに売ったかご存知ですか。

安田

いえ知りません。

石塚

1ドルです。

安田

え!たったの1ドル?

石塚

1ドルで投資ファンドに売ったんですよ。投資ファンドは1ドルで仕入れたものをいくらで売ったと思います?

安田

1000億円ぐらいでしょうか。

石塚

1兆6000億円です。

安田

なんと。なぜ1ドルで売っちゃったのか。

石塚

当時は「全く見込みがない事業」と思われていて。世界中で原子力発電所の運転が止まって建設の需要がなかったので。

安田

1ドルだったら売らずに持っときゃいいだけの話じゃないか。

石塚

債務超過に陥ってるから。持っているだけで余計なコストがかかるわけですよ。

安田

原発事業の赤字まで補填しきれないってことですか。

石塚

その通りです。赤字事業なんざ持ってる意味ないっていう。

安田

タダでもいいから引き取ってくれと。

石塚

そう。とにかく「赤字を減らせ」「出血を止めろ」と。

安田

東芝は他にも有望な事業を売っちゃいましたよね。

石塚

おっしゃる通り。東芝メディカルをはじめ、虎の子の事業はぜんぶ売りました。

安田

もし売っていなければ、今頃は十分再生できていたってことですか。

石塚

そうなんですよ。そもそも国策で原発推進に協力してきたはずなのに。ダイエーを支援したように東芝も支援して然るべきだった。

安田

天下の東芝ですもんね。

石塚

そう。日本で最初に扇風機も冷蔵庫も洗濯機も作った会社ですよ。あの時に政府が6000億を出資して「ウエスチングハウスも少し待とう」と判断すれば良かった。

安田

なぜ支援しなかったんですか?

石塚

世間がそういうムードじゃなかったから。

安田

え!ムード?

石塚

「また大きな会社ばかり優遇するのか」というムードで。助けるべき時に助けなかった。

安田

なんと。それをなぜ今になって助けるんですか?

石塚

これもムードです。「東芝を助けなくてどうするんだ!」ってムードになってるから。

安田

そんなことで決めちゃうんですね。

石塚

だから日本の政府はダメなんですよ。いつもムードに流されて。

安田

これって今から助けられるんですか?

石塚

極めて難しいと思います。すでに有望な事業をみんな売ってしまった後なので。

安田

「何やってんだ」って感じですね。

石塚

ほんと「何やってんだ」ですよ。どうしようもなくなってから2兆円なんかで買い戻して。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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