第56回 賃上げのための値上げは正しいか

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第56回 賃上げのための値上げは正しいか

安田

やっぱり西崎さんは、社員の給与はどんどん上げていきたいタイプですか。


西崎

ええ、そう思ってます。

安田

かつて私もワイキューブで「日本で一番給与の高い会社」を作ろうとしたんです。結果的には失敗してしまったわけですけど。そういうレベルで興味がありますか。


西崎

日本一かはさておき、給与を含めた待遇はどんどんよくしていきたいと思ってますね。今も中小・ベンチャーの中では割と頑張ってはいる方だと思いますけど、大手と比べるとやっぱりまだまだなので。

安田

なるほどなるほど。そうなると必然的に収益の底上げをしていく必要がありますが、言われたことを言われたとおりにやっていれば儲かる大手と違って、中小・ベンチャーはもう少し戦略的な動きが必要になるじゃないですか。値上げするにも限界があるし。


西崎

まさに仰るとおりだと思いますね。ウチは比較的これまでもしっかり値上げしてきているんですけど、値上げって諸刃の剣なんですよね。上げれば上げるだけ受注難易度は上がりますし、ご依頼いただけたとしても、金額の分だけお客さんの期待値は上がるわけで。

安田

仕事のレベルが上がっちゃうってことですよね。入ってすぐの新人にはとても対応できないようなことを求められちゃうと。


西崎

まさに仰るとおりで。シンプルに若手が売上を上げづらくなってしまうわけですよ。そういう意味でも値上げだけで対応するのは限界があると思っていて、ウチの場合は別ビジネスを立ち上げることにしました。「B-SCORE」っていう、企業のブランド力をスコア化するっていうサービスなんですが、これをいわゆるエントリー商材として売っていこうと。

安田

ふーむ、なるほど。確かにそういう商材なら若手も売りやすそうです。そこで少しずつ経験を積んでもらって、だんだんと難易度の高いブランディング案件も担当できるようになっていくと。


西崎

そういうことです。というのもウチのブランディング商材は、ここ最近はかなりコンサルティングに寄ってきているんですよね。デザインだけすればいい、キャッチコピーだけすればいい、というものでは全然なくて、もっとコンサル視点の知識や動きが必要になっている。

安田

ははぁ、確かにそういう仕事をするなら、少なくとも3年くらいは下積みが必要でしょうね。そしてその下積み期間は「B-SCORE」をメインで提案していくと。


西崎

そういうことです。このサービスに関わることでブランディングの知識・経験は着実に積み上がるので。企業のブランドってどうできあがっていくのか、それをクライアントとのやり取りを通じてしっかり学んでもらいたいなと。

安田

ふーむ、なるほど。でも、水を差すようなことを言いますが、いまの若手ってすぐ転職しちゃうじゃないですか。今の20代って、例えば100名採用しても3年以内に50人辞めちゃうんですって。5年で見たらもうほとんど残らない。西崎さんがそうやって成長の機会を与えてあげても、あっさり辞められちゃうんじゃないですか?


西崎

もちろん退職者ゼロというのは難しいでしょうけど、でも僕はこの事業は定着率アップにも繋がると信じてるんです。コツコツと結果を出していくことで、本人にも成功体験が積まれていくので。

安田

ああ、なるほど。確かに「辞めたくなる理由」のかなり上位に「結果が出せないから」っていうのがありますからね。ただ、どうだろうなぁ、いわゆる「コンサル力」と「営業力」って似て非なるものという感じがしますけどね。「B-SCORE」をいっぱい売ったからと言って、お客さんのブランド力を上げる力はつきますかね。


西崎

それに関しては、つくと思ってます。「B-SCORE」って、確かにエントリー的なものではありますが、ただやみくもに電話やメールをしていれば売れるものではないので。企画力とかヒアリング力も必要だし、顧客フォローもすごく重要。つまりある種のコンサルではあるんですよ。

安田

なるほどなるほど。そのあたりの研修的な効果も考えられているわけですね。さすがだなぁ。でも逆に言えば、「B-SCORE」で結果が出せなければ、その上位にあるブランディング案件はまだ難しいってことになりますか。


西崎

端的に言えばそうなるかもしれませんが、ビジネスに必要なのは営業だけではないので。人それぞれの適性を見ながらカスタマーサポートに配置するとか、いろいろな働き方を提案していくつもりです。

安田

いいですね。新サービスを通じて、世の中だけでなく社内のアップデートも図っているわけだ。トゥモローゲートさんの今後がますます楽しみになりました!

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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