第104回 超高額なご葬儀は、需要がある?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第104回 超高額なご葬儀は、需要がある?

安田
ご葬儀の単価が下がっていると言われています。大きな理由の1つは、葬儀にお金をかける人が少なくなっていること。そしてもう1つは、葬儀に参加する人数が減っているからじゃないかと思っていまして。

鈴木
確かに、家族葬のようにこじんまりと執り行われることが増えてきましたね。昔のように大勢呼んで大規模なご葬儀をすることは少なくなりました。
安田
そうでしょうね。でも私は、だからこそ今後は「少人数×豪華な葬儀」も人気になるんじゃないかと思っているんですよ。

鈴木
ははぁ、なるほど。飲食店とかでもそういうビジネスモデル、増えましたもんね。
安田
まさにそうなんです。寿司屋とか割烹料理屋にも「1日1組限定」で、ものすごく単価が高いお店ってあるじゃないですか。ああいう感じで、参列者は家族と数人の友人だけなんだけど、ものすごくクオリティの高い葬儀、みたいなことが出てくるんじゃないかなと。実際どうですか?

鈴木
いやぁ〜どうだろう。今のところそういう形態でやっている会社は聞いたことがないですね。
安田
そうなんですね。需要もなさそうですか?

鈴木
絶対ないとは言い切れませんけど…。ウチとしてもなかなかそこに振り切る勇気はないかもしれない(笑)。
安田
でも鈴木さんは以前、お客さんの状況に合わせられるようにいろんな商品を取り揃えるって仰っていましたよね。それだったらなおのこと、単価がめちゃくちゃ高いご葬儀だって、一定数のニーズがあると思いますけど。

鈴木
うーん…結婚式はそういう感じですよね。僕の知り合いの娘さんが今度結婚されるんですが、参列者40人くらいなのにものすご〜くお金がかかるんですって(笑)。でも「一生に一度のことだから奮発する」と。
安田
そうでしょう? 結婚式では当たり前なのに、葬儀ではそうじゃないのが私は不思議で。自分の身内を素敵に送り出すためなら金に糸目をつけない、みたいな人もいると思うんですが。

鈴木
うーん。結婚式とご葬儀、決定的に違うのが「準備期間の長さ」なんですね。結婚式はプランナーさんのカウンセリングを受けながらじっくり考えを巡らせる時間があるけど、ご葬儀の場合せいぜい2〜3日。その中で「普通の葬儀」じゃない葬儀を考えるのは難しいんやないかなぁ。
安田
ああ〜、なるほど。そう言われてみたら、確かに突然身内が亡くなった時に、「こだわりの葬儀ができる場所」なんてゆっくり探す時間も心の余裕もあるわけないですね。

鈴木

でしょ?(笑) だから本当は1年くらい前からカウンセリングを始めて、納得のいくご葬儀ができるようにご相談に乗れればいいんですけど…。よっぽどのことがない限り、身内が亡くなる前提でそういう話をする方はいませんから。

安田
確かに私も、母が亡くなってから慌てて葬儀会社を探しました。死ぬ前に「そろそろ葬儀屋さんを探そうか」なんて気持ちにはなれなかったな。

鈴木
そういうものですよ。人は誰しも亡くなることは決まっているんですけど、やっぱり心情的にはなかなか難しいと思います。本人が企画するならまた話は別だと思いますけど。
安田
ああ、なるほど。でも本人側としては「葬儀にはお金をかけなくていいよ」という感覚が強いでしょうしね。そうか〜、超高額なご葬儀の需要も絶対あると思ったんですが、そうでもないんですね。結婚式とは違う、と。

鈴木
お葬式って「やりたくないけどやらなければならない」商品なんですよね。だからそこを膨らませていく作業は難しいんです。
安田
そうか。逆に結婚式は「やりたくてやる」商品だから、相手のWANTSをいくらでも膨らませていくことができるわけですね。

鈴木
そうそう。「やりたくないけどやらなければいけない=NEEDS」商品については、売る側がイニシアチブを持てる。だからこそやりやすい部分も多いマーケットだとも言えるんですけどね。
安田
なるほどな〜。いやぁ今日も面白いお話をありがとうございました!

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから