第107回 これからの時代に求められる経営者像とは?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第107回 これからの時代に求められる経営者像とは?

安田

中辻さんも日々感じられているとは思いますが、「仕入れた商品に利益をのせて売るだけ」とか「雇った人を指示通りに動かしているだけ」で儲かる時代ではなくなってきましたよね。


中辻

そうですね。商品にはそれなりの付加価値がないと売れませんし、採用した人に対しても「その人にしかない価値」を身につけてもらうことが重要だなと感じます。

安田

そうなんですよね。昔のように「ただ管理するだけ」の経営ではもううまくいかない。となると、これからの時代において「経営者に向いている人・向いていない人」ってどういう人になりますかね。


中辻

えー…私にはわからないですよ(笑)。あ、でも「とにかく人件費を抑えたい」というような人は、これからの時代の経営者には向かないんじゃないかな。

安田

確かに。むしろ「社員にはしっかり給料を払うぞ」と思っている経営者じゃないと、そもそも人が確保できない。


中辻

そうでしょうね。もっとも、私は以前から不思議なんですよ。だいたいの経営者さんはサラリーマンも経験されているはずで、だったら「対価に見合った給与をもらいたい」って気持ちもわかるはずじゃないですか。なのにどうして経営者になった途端、人件費を絞ろうとするのかなって。

安田

まぁ、昔はわりと「社員」と「社長一族」ってキッパリ分かれていたので、サラリーマンをまともにやったことがない経営者も大勢いたんですよね。現場の苦労を知らない人たちが集まって、会社の金を使って毎晩飲み歩いていたりとか(笑)。


中辻

あ〜、そんなことを今の時代にやったら、従業員はすぐ辞めちゃうでしょうね(笑)。私もいろいろな会社さんを見てきて思いますが、やっぱり現場のことをちゃんと見てあげていない社長って、社員さんとの間に溝ができているような気がします。

安田

「現場を見る」というのは、現場仕事を自分もやるってことですか?


中辻

ああ、いえ、なんて言ったらいいのかな、現場の状況をちゃんと把握しておく、という方が適切かもしれません。社長の仕事は人の上に立って指示を出したり、会社の舵取りをしていくことですよね。そういう意味で「現場の仕事ばかりしている社長」もマズイと思うので。

安田

ああ、確かに。かといって、現場のことをまったく知らないまま舵取りをしていたらダメだよ、ってことですね。


中辻

そうそう。現場は既にパツパツなのに、社長が偉そうに椅子に座って指示だけ出していては、今の時代は誰もついてこないですよ。

安田

昔のように「社長の命令は絶対だ!」とはならないと。


中辻

ならないならない(笑)。「俺の時代はこうだった」とか「昔はこうだったんだ」とかはもう禁句です(笑)。従業員からすれば「今を見てから言ってくださいよ」ってなると思いますよ。

安田

なるほどなぁ。逆に言えば、今いる社員に信頼されるような社長なら、自然といい人が集まってきそうですね。そういう意味でも、社員との関係性は大事にしなきゃいけない。


中辻

仰るとおりです。やっぱり社長と社員の間に溝がある会社って、どんどん悪くなっていくんですよね。せっかく新しい人が入ってきても、今いる従業員が社長の悪口をポロッと言ってしまう。そうすると、新しく入ってきた方も会社に対する印象が悪くなっていくじゃないですか。

安田

あぁ…それはもう悪循環ですね。ちなみに人ではなく商品についてはどうでしょう? 自社商品に付加価値をつけるべきだと仰っていましたが、やっぱりそれは社長の仕事として欠かせないと思います?


中辻

そうですね。よっぽど優秀な部下がいるのであれば別かもしれないですが、社員に丸投げするのではなく、社長が一緒になって考えていかないといけないんやろうなぁとは思います。

安田
でもほとんどの中小企業の社長さんって、価値を生み出す発想力やアイディアが乏しくて。というかそもそも「そんなのは自分の仕事じゃない」って思っている人、多くないですか?
中辻

多いです! なんていうか…皆さん、自分のところの商品を過信してるんですよ。周りも同じようなことをやっているのに、自分なりにつけた付加価値が最強だと思っている社長さんが多すぎる。びっくりしますよ(笑)。

安田
まあ昔はそれでも売れていたので(笑)。そういう成功体験をもとに、「ウチはこれでいいんだ」って思っている人、確かに多そうですね。
中辻

「一度、自分がお客さんの立場になって考えてみてください」「本当にこの価格でこの商品を買いますか?」って、何百回言ったかわかりません(笑)。

安田
笑。これからの時代の経営者に求められるのは「社員目線」や「顧客目線」で物事を考えられる能力だということが、よくわかりました。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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