第70回 境目研究家がトゥモローゲートの社長になったら

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第70回 境目研究家がトゥモローゲートの社長になったら


西崎

今日はちょっと私の聞きたいテーマで話せればと思うんですが、もしも安田さんが今、トゥモローゲートの社長になったら、まずやることって何かなっていうのが気になって(笑)。

安田

おもしろいですね(笑)。うーん、もし西崎さんが「1カ月だけ交代してくれ」って言ってきたら、まずはやっぱり社員さんの話を聞くでしょうね。


西崎

最初に? まず社員の話を聞くんですか。

安田

はい。できるだけ全員の話を聞いて、「どういう会社で、みんながどこに向かいたいのか」を把握するかな。で、それが昨日まで西崎さんがやっていたこととズレていないんだったら、何も変えないんじゃないですかね。


西崎

は~なるほど。ちなみに具体的には何を聞きます? 仕事内容とか、事業の内容とか、顧客に対してどういう成果を出してるか、みたいなことなのか、はたまた本人の思いの部分なのか。

安田

仕事内容も聞くと思いますよ、もちろん。それプラス、その仕事を通じて「本人がどうなりたいのか」。その会社が目指しているところと一致しているかどうか。そこは確かめますよね。でないと、何かを変えた瞬間に誰もいなくなっちゃう可能性がある(笑)。


西崎

確かに(笑)。でも実際そこがズレちゃうのは大きな問題ですもんね。

安田

ええ。ちなみに西崎さんだったらどうなんですか? 別の会社の社長になった場合、何から始めます?


西崎

ああ、そう言われてみると、安田さん同様まずは社員の話を聞くかもしれないですね。

安田

そうですよね。社員の声を聞いて、会社の目指す方向とフィットしているかをまず確かめる。じゃあ、その次に取り組むことって何ですか?


西崎

そうですねぇ、「いい人材が抜けていっていないか」を確認するかもしれない。もしそういう事実があるなら、もうこれ以上辞められちゃわないようあれこれ工夫をするでしょうね。先日の話でも出ましたけど、雇用契約か業務委託化を選べるようにするとか。

安田

なるほどなるほど。ただそういった改変って、伝え方次第でものすごく拒絶反応が出そうですよね。「もっと自由な働き方を実現するため、皆さんを業務委託にします」なんて言ったら、ショックを受ける社員がほとんどじゃないかな。


西崎

間違いないですね。会社に捨てられたように感じる人もいると思います。

安田

でしょうねぇ。私もよく「雇わない経営に切り替えたい」と相談を受けるんですが、「会社の経営方針として雇わない経営にする」は絶対やめたほうがいいとお伝えしています。


西崎

ああ、なるほどなるほど。「今日から雇わない経営にします」はダメだよと。

安田

ええ。そもそも業務委託化を一人も望んでいないのであれば、わざわざ選択肢を増やす必要もないわけで。だからこそ「11人にヒアリングして、調査してから方針を考えましょう」って口酸っぱく言ってるんですけど……先に発表しちゃって、大事件になっちゃった会社もありました。


西崎

は~、それは大変だ。社員がいい人もいて、業務委託がいい人もいて、それなら選択肢を増やしましょうかって順番ですもんね。

安田

まさにそれが「雇わない経営」なんです。社員には社員としての付き合い方があり、業務委託には業務委託なりの付き合い方がある。そこを区別せずどっちつかずでやっていると、どんどん不満が出てくる。


西崎

なるほど。働き方をフルフレックスにしたり、定時勤務を選べるようにしていても不満って出てくるもんですか。

安田

ええ。社員同士だとどうしても「どうしてあいつだけ」みたいなことが出てきちゃうんです。「じゃああなたもフルフレックスにすれば?」という話なんですが、「だってそれだと給与下がっちゃうじゃないですか」みたいなね。


西崎

あ~、なるほど。

安田

文句は言いたいけど、自分でそうなる覚悟はない。人間はそういう複雑な生き物なんですよ。だから私は契約で線引きしちゃったほうがスッキリするんじゃないかと思ってます。


西崎

は~、なんとも興味深い話です。一回うちの社員にも取材してもらいましょうかね(笑)


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

Twitter

1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから