第95回 長く続く会社は「善」か「悪」か?

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第95回 長く続く会社は「善」か「悪」か?

安田

日本は社歴の長い会社が多い国って言われてますよね。それこそ世界一長いとも聞きます。


倉橋

確かに、100年以上続く会社の数もすごく多いみたいですね。

安田

ええ。それ自体はすごいことだと思うんです。ただ一方で、トップ企業がずっと同じ顔ぶれになっていることで、全体的な成長を阻害しているんじゃないかとも思うんですよ。


倉橋

確かにそういう側面はあるでしょうね。実際、アメリカでは数十年でガラッと入れ替わりますし。

安田

そうそう。長く続く会社が多いのはいいことなのか、それとも問題なのか。どっちだと思います?


倉橋

いいか悪いかを一言で言うのは難しいですけど、長く続く会社って、それだけファンが多いってことだと思うんです。「100年続く=長い間支持し続けるお客様がいる」ということで、そこは素直に評価していいんじゃないかなと。

安田

確かに。京都で700年続いているお茶屋さんや和菓子屋さんなんて、聞いただけで素敵だなって思いますからね。でも一方で、日本の大手企業は代替わりせずにずっと同じ顔ぶれ、ということにはなんとなくネガティブな印象がある。それってまた別の問題なんでしょうかね。


倉橋

うーん、どうなんでしょう…ちなみに流通の世界では常に新しい勢力が出てきています。イトーヨーカ堂の例で言うと、30年前は日本で一番優秀な流通企業と言われていたのに、今や北海道や東北の店舗は全店閉鎖してしまった。

安田

ふむふむ。そしてそこにロピアのような新しい会社が入ってきていると。


倉橋

ええ。そう考えると、100年続けるって、ものすごく難しいことなんだと思います。だからそれができた会社は単純にすごいなぁと思いますよ。

安田

確かに。あとは会社規模もありますよね。千年企業や五百年企業って、実はそんなに大きな企業じゃないことも多い。逆に言えば、大きな会社になればなるほど継続が難しいのかもしれない。


倉橋

そうかもしれませんね。そういう意味では、「無理に規模を大きくしない」というのも生存戦略のひとつなのかもしれません。

安田

地域密着型の小さなスーパーとか、何百年も続いてる小売店があったりしますもんね。それ自体はすごく素敵なことだとは思うんですが、どちらかと言えば事業も人もどんどん新陳代謝されていく方が健全な気もして。

倉橋

気持ちはよくわかります。僕もどちらかというと、新しいベンチャーが次々に出てくる流れの方が社会にはいいと思ってますし。

安田

そうですよね。若い経営者が作るベンチャーにどんどんバトンを譲った方が、国全体として豊かになるんじゃないかと思うんです。

倉橋

その通りだと思いますね。実際僕らのような流通や小売業は入れ替わりが激しい業界で、ビデオレンタル業界が消えたり、百貨店業界が衰退したり、すごく目まぐるしい。でもその分どんどん進化していますから。

安田

そうそう。事業者としては大変でしょうが、そっちの方が健全ですよね。ブランド力があった会社でも衰退して、新しい会社が出てくる。

倉橋

流通のような参入障壁が低い業界は、常に競争がありますからね。それがあるべき姿なんでしょう。お客様が「ここは好きだから行く」「ここは古臭いからもう行かない」とか、ちゃんとジャッジしてくれる世界というか。

安田

確かに確かに。例えば家電業界だと、海外勢との競争に負けて消えていった企業も多いですよね。一方で、自動車業界や鉄鋼業界では、昔からの老舗企業が相変わらずトップの座にいる。そういう業界もいずれは入れ替わっていくんでしょうか。

倉橋

入れ替わっていくと思いますよ。時間はかかるかもしれませんが、いつかトップを明け渡す日が来ると思います。

安田

仮に会社自体は残っても、合併したり吸収されたりして、オーナーが変わっていったりしますもんね。シャープのように台湾の会社になったり、日産がルノーと組んだり。「日本企業は日本人が守るべき」みたいな感覚も根強いですけど、実際はもうグローバル化されている。

倉橋

プロ野球のオーナー企業もそうですよね。例えばダイエーがやってたのが、今はソフトバンクになっている。そういう改変は避けられないと思いますよ。僕の予想では、30年後、40年後にはかなり様変わりしてるでしょうね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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