第101回 エビデンスに囚われすぎてはいけない

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第101回 エビデンスに囚われすぎてはいけない

安田
久保さんは甲野善紀(こうのよしのり)さんをご存知ですか? 古武術の研究をされている方なんですが。

久保
ええ、直接お会いしたことはありませんが、よく存じ上げております。実はその方のお弟子さんでもある方条遼雨(ほうじょうりょうう)さんと、以前、私の主催していたイベントによく来てくださった、飲み仲間なんですよ…(笑)。
安田

なんと、そうなんですか!


久保
はい。方条さんの教室にも参加したことがありますけれど、古武術ってすごいですよね。我々には簡単に理解できないようなことが目の前で実際に繰り広げられるというか…。
安田
わかります。甲野さんの有名なエピソードの1つに、当時ジャイアンツで活躍していた桑田真澄投手より速く牽制球を投げられた、という話もあるんですよ。

久保
は〜、それはすごい。桑田選手といえば、プロ野球界の中でも牽制が抜群に上手い選手でしたよね? その方より速く投げられたんですか?
安田
そうそう。桑田さんのフォームを見て「意外に遅いな」って思ったそうです(笑)。それで桑田さんに古武術の動き方を指導したことでさらに牽制が速くなり、素晴らしい成績を収められた。ちなみに不調から復活して最初の勝利ボールを甲野先生に差し上げた、なんて話も聞きました。

久保
すごいなぁ。やっぱり古武術というのは、そもそもの「体の使い方」が違うんでしょうね。
安田
そうなんでしょうね。実際甲野さんは、日本人が忘れてしまった「本来の体の使い方」を古い文献などから学び、どうやったら実践できるかというのを再現されているそうですから。

久保
ふ〜む、忘れてしまった体の使い方か…。確かに昔の日本人って、米俵を何個も担げたり、長い距離を走り続けられたりしていたって言いますもんね。現代人にはとても真似できませんよ。
安田
そうなんですよ。私も実際に真剣を使うところを見せていただいたんですが、ものすごい速さなのに、全然力を入れていない。体の使い方だけで、その速さで真剣を動かせるのか、と驚きました。

久保
へぇ〜すごいなぁ。
安田
他にも、体重をうまく移動させると疲れずに坂道が登れるとか、重い荷物も筋肉ではなく骨格を使えば簡単に持ち上がるとか。

久保
確か『ヒモトレ革命』っていう本も出されていませんでしたっけ? 紐を巻いただけですごく力が出やすくなったり、体が楽になるって。あれも紐を使うことで、古武術的な体の使い方ができるというわけなんですね。
安田
そうかもしれません。ちなみに甲野さんには過去にX(旧Twitter)で炎上した投稿がありまして。それが「火傷したら、すぐに熱いお湯につければいい」っていう内容だったんです。

久保
え? 熱いお湯?! 普通は「火傷したら冷水で冷やす」んじゃないですか?
安田
違うんですって。すぐに熱いお湯につける。そうするとやっぱり火傷した患部はすごく痛いらしいんですが、翌日にはもう火傷痕がほぼ消えかかっている。実際、それでキレイに完治した人がたくさんいるそうなので、私も「もっと早くこの方法を知りたかった」とXに投稿したんですよ。そしたらお医者さんから「こんなのは絶対信じちゃダメ。大変なことになる」って書き込まれちゃって(笑)。

久保
あぁ…お医者さんの気持ちもわからなくはないですね…(笑)。何を根拠にそんなことを言っているんだ、と思われたんでしょう。
安田
まさにそこなんです。医者に限らず多くの人が「エビデンスがないものは怪しい」って思うじゃないですか。でも実際にその方法で火傷が良くなっている人もたくさんいる。こういうケースって他にもいろいろあると思うんですが、久保さんはどう感じますか?

久保
そうですねぇ。基本的にエビデンスは大事だとは思います。ただ一方で、それは「まだ証明されていないだけ」なのかもしれない。そういう意味で、エビデンスがない=すべて非科学的だ、というのは乱暴な気がしますね。
安田
そうですよね。エビデンスがない=まだわかっていない・調べていないだけ、ということかもしれないわけで。

久保
ええ。科学的に証明されていないから有用性がない、とは言い切れない。エビデンスがないと言われていることの中にも、経験則上、実はとっても有効だったということはたくさんあると思うんですよ。それこそ東洋医学の考え方もどちらかというと経験とか伝統に根ざしたものだと思っていて。
安田
確かにそうですよね。統計学的というか。

久保
そうそう。そういった「先人たちの知恵」を否定して、「エビデンスがないと人間にとって有益ではない」と判断してしまうことは、逆に危険なんじゃないかなと。
安田
同感です。先ほどの火傷の話もそうですが、現段階で認められていないものを即「怪しい」とするのは、ちょっと頭が固すぎますよね。「そういう可能性もあるかもしれない」と捉えられるぐらいの頭の柔らかさがあっていいというか。

久保
本当ですね。頭だけで考えて経験せずに判断してしまうのは、片手落ちだと思います。そもそもエビデンスがあるから100%正しいというわけじゃないですし。
安田
実際に経験して、自分がどう感じるかを大切にしたいなと。まずは今度、火傷をした時に熱湯につけてみることを試してみようかと思います!

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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